会社売却(M&A)にかかる期間は、一般に、仲介会社への相談から成約(クロージング)まで半年〜1年程度が目安とされています。ただしこれはあくまで慣行的な目安であり、会社の規模や資料の準備状況、業種、相手探しの難易度によって大きく変わります。準備が整った小規模案件が数ヶ月で決着することもあれば、許認可業種や株式が分散した会社では1年以上を要することも珍しくありません。

つまり「何ヶ月かかるか」への正確な答えは、「貴社の状態によって決まる部分が大きい」ということになります。本稿では、M&Aのプロセスをフェーズごとに分解して、それぞれどこで時間がかかるのか、期間が長引く典型的な原因は何か、そして売り手側の準備でどこまで短縮できるのかを、順を追って解説します。引退時期や資金需要から逆算してスケジュールを考えたい経営者様は、ぜひ参考にしてください。

結論:一般に半年〜1年程度が目安。ただし幅が大きい

冒頭で述べたとおり、中小企業のM&Aでは、相談開始から成約まで半年〜1年程度を一つの目安として考えるのが実務的です。ただし、この数字を「保証された納期」のように受け取るのは危険です。期間を左右する主な変数には、次のようなものがあります。

  • 会社の規模・事業の複雑さ:拠点数や事業部門が多いほど、検討・調査に時間がかかります
  • 資料の準備状況:決算書・契約書・株主名簿などがすぐ出せる状態かどうか
  • 業種:許認可の承継手続や行政対応が必要な業種は、その分の時間が上乗せされます
  • 希望条件:価格・雇用・引継ぎ条件などの希望が厳しいほど、合致する相手探しは長引きます
  • 株式・資産の権利関係:株式の分散や名義株、事業用資産が経営者個人名義になっているケースでは、整理に時間を要します

大切なのは、期間そのものよりも「いつまでに何を終えたいのか」という自分側の期限を明確にすることです。引退希望時期・健康上の事情・資金需要などの期限から逆算すれば、いつ動き始めるべきかが見えてきます。売却タイミングの考え方は「会社売却のタイミング」でも解説しています。

フェーズ別に見る、M&Aの流れと時間のかかりどころ

M&Aのプロセスは、大きく4つのフェーズに分けられます。それぞれの概要と、時間がかかる主な理由を整理します。なお、以下の期間はいずれも一般的な傾向を示すもので、案件により大きく前後します。

フェーズ主な内容時間がかかる主な要因
1. 準備・検討相談、資料収集、企業価値の把握、方針決定、仲介契約決算書・契約書等の資料整理、株式や資産の権利関係の確認
2. 相手探し・交渉候補先の選定・打診、トップ面談、条件交渉、基本合意条件に合う相手が見つかるまでの探索、面談・条件のすり合わせ
3. デューデリジェンス(DD)買い手による財務・法務等の詳細調査資料依頼への対応、調査で発見された論点の協議
4. 最終契約・クロージング最終条件の交渉、株式譲渡契約の締結、決済、引継ぎ開始契約条件の詰め、許認可・取引先対応、買い手側の資金手当や社内決裁

実務の感覚としては、フェーズ1と2、すなわち「準備」と「相手探し」で全体の期間の半分以上を占めることが多いといえます。逆にいえば、この2つのフェーズは売り手側の準備や条件設定によって左右できる余地が大きい部分でもあります。全体の流れの詳細は「M&Aの流れ|相談から成約までの全ステップ」をご覧ください。

期間が長引く4つの主な原因

予定より期間が長引く案件には、共通するパターンがあります。代表的な4つを見ていきます。

原因1:資料の準備に時間がかかる

決算書、勘定科目内訳書、株主名簿、定款、主要な契約書、許認可の書類——M&Aでは多くの資料が必要になります。これらが整理されておらず、探すところから始めるケースでは、着手前の段階で数ヶ月を要することがあります。また、株主名簿と実際の株主が食い違っている(名義株がある)、事業用の土地建物が経営者個人の名義になっている、といった権利関係の問題が見つかると、その整理にさらに時間がかかります。

原因2:条件に合う相手がなかなか見つからない

希望価格が市場の水準から大きく離れている、譲渡後の条件(雇用・社名・拠点の維持など)が多い、事業の特殊性が高く買い手の裾野が狭い——こうした場合、候補先への打診を重ねても話が進まず、探索が長期化します。条件を下げるべきだという意味ではなく、「絶対に譲れない条件」と「相対的に譲れる条件」をあらかじめ仕分けしておくことが、探索の効率を大きく左右するということです。

原因3:デューデリジェンスで論点が見つかる

買い手による詳細調査(DD)では、未払残業代の可能性、契約書の不備、会計処理の論点などが発見されることがあります。論点が見つかること自体は珍しくありませんが、その内容が重いほど、対応協議や条件の再交渉に時間を要します。事前に自社の弱点を把握し、説明できる状態にしておくことが、DD段階の停滞を防ぐ最善策です。

原因4:許認可・関係者対応が必要になる

建設業、運送業、調剤薬局、介護など許認可が事業の前提となる業種では、承継スキームによっては行政手続が必要になり、その期間がスケジュールに組み込まれます。また、主要取引先との契約にチェンジ・オブ・コントロール条項(経営権の変更時に通知・承諾を要する条項)がある場合、取引先への説明と承諾取得のプロセスが発生することもあります。

期間を短縮するために売り手ができる準備

長引く原因の裏返しが、そのまま短縮策になります。売り手側で着手できる準備を挙げます。

  • 基礎資料を揃えておく:決算書3期分・勘定科目内訳書・株主名簿・定款・主要契約書・許認可関係書類を一式にまとめておく。必要書類の全体像は「M&A・会社売却に必要な書類一覧」を参照してください
  • 株式・資産の権利関係を確認する:名義株や株式の分散、個人名義の事業用資産がないかを確認し、あれば早めに専門家へ相談して整理を始める
  • 条件の優先順位を決めておく:価格・雇用・社名・引継ぎ期間などについて、譲れない条件と譲歩可能な条件を仕分けしておく
  • 自社の弱点を先に把握する:労務・契約・会計面の気になる点を仲介会社に正直に共有しておくと、DD段階での「想定外」を減らせます
  • 意思決定の体制を整える:株主が複数いる場合は、方針について事前に合意形成しておく

これらは、M&Aを決断する前からでも進められるものばかりです。準備が早いほど選択肢は広がり、プロセスは滑らかになります。

急ぎすぎにも注意|スピードと質のバランス

ここまで短縮の観点で述べてきましたが、最後に逆側の注意も申し上げます。期間の短さは、それ自体が目的ではありません。

成約を急ぐあまり、相手の見極めが浅いまま基本合意に進んだり、条件交渉を十分に尽くさないまま契約したりすれば、譲渡後に「こんなはずではなかった」という結果を招きかねません。特に、従業員の雇用や処遇に関わる条件は、時間をかけてでも丁寧に詰めるべき部分です(会社売却と従業員への影響もあわせてご覧ください)。

目安とすべきは、「無駄な停滞をなくすことで期間を圧縮し、判断に必要な時間はきちんと確保する」というバランスです。信頼できる支援機関は、スケジュールを急がせるのではなく、停滞の原因を先回りして潰しながら、判断の局面では十分な検討時間を確保してくれるはずです。当社プラチナパートナーズも、ご契約やご決断を急がせない方針を明確にしたうえで、初回のご相談時に貴社の状況を伺い、想定されるスケジュール感を率直にお伝えしています。相談料は無料ですので、時期の見立てだけでもお気軽にご相談ください。

よくあるご質問

A.一般に、仲介会社への相談から成約(クロージング)まで半年〜1年程度が目安とされています。ただしこれはあくまで慣行的な目安であり、会社の規模、資料の準備状況、業種(許認可の有無)、相手探しの難易度によって、数ヶ月で決着する場合もあれば1年以上かかる場合もあります。
A.案件によりますが、実務上つまずきやすいのは「資料の準備に時間がかかる」「条件に合う相手がなかなか見つからない」の2点です。決算書や契約書などの基礎資料が整理されていないと着手前の段階で数ヶ月を要することがあり、希望条件が厳しい場合は相手探しが長期化します。事前の資料整理と、条件の優先順位付けが最も効果的な対策です。
A.売り手側の準備によって短縮できる部分は確かにあります。決算書3期分や株主名簿・主要契約書の事前整理、株式や名義資産の権利関係の確認、譲れる条件と譲れない条件の整理をしておくと、着手後の停滞を減らせます。一方で、デューデリジェンスや相手側の意思決定など、売り手の努力だけでは縮められない工程もあるため、焦って質を犠牲にしないバランスが大切です。

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引退時期や資金需要からの逆算、準備すべき資料のご案内まで、初回相談(無料)で承ります。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら