「M&A仲介」と検索窓に入れると、「やばい」「怪しい」といった言葉が候補に並ぶことがあります。この記事にたどり着いた方も、しつこい営業電話に嫌気が差していたり、「手数料が高すぎるのではないか」「本当に自分の味方なのか」という不信感をお持ちだったりするのではないでしょうか。その警戒心は、決して的外れではありません。業界の一員である当社が言うのもはばかられますが、批判されても仕方のない営業や説明が、この業界の一部に存在してきたことは事実です。本稿では、その批判から逃げずに、何が問題とされているのかを整理し、国のルール整備の現状と、信頼できる会社を見分ける実践的な方法までをご説明します。
「M&A仲介 やばい」と検索される背景に、正面から向き合う
M&A仲介への批判は、おおむね次の三つに集約されます。
- 強引な営業——「買いたい会社がいる」と根拠を示さずに接触する、断っても繰り返し電話をかける、即断を迫るといった営業手法への反発
- 高額・不透明な手数料——着手金や中間金の説明が不十分なまま契約し、成約前に想定外の費用が生じた、最低報酬額を知らされていなかった、という不満
- 利益相反への疑念——売り手と買い手の双方から報酬を受け取る「仲介」という形態は、そもそもどちらの味方なのか分からない、という構造への疑問
M&A市場は拡大を続けており、レコフデータによれば2025年の件数は5,000件超と2年連続で過去最多を更新しました。帝国データバンクの2025年調査では後継者不在率が50.1%にのぼり、M&Aが事業承継の現実的な選択肢になった一方で、市場拡大に参入が追いつき、支援の質にばらつきが生じたことも否めません。「やばい」という検索は、その歪みに対する経営者の率直な感覚だと、私どもは受け止めています。
批判を整理する|「構造の問題」と「行為の問題」は別物です
批判を正しく理解するには、「仲介という仕組みに内在する構造的な課題」と「一部の事業者による行為の問題」を分けて考えることが有益です。
構造の問題:両手仲介の利益相反
仲介会社は、売り手・買い手の双方と契約し、双方から報酬を受領します。売り手は高く売りたい、買い手は安く買いたい——利害が対立する両者の間に立つ以上、どちらか一方の利益だけを追求する立場には立てません。これは特定の会社の善し悪しではなく、仲介という形態そのものが抱える構造的な課題です。だからこそ、この構造を契約前に説明するかどうかが、誠実さの分かれ目になります。仕組みの詳細は「M&A仲介の両手取引とは|利益相反と指摘される仕組みとの付き合い方」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
なお、利害の一致する側だけを支援する形態としてFA(ファイナンシャル・アドバイザー)があります。仲介とFAにはそれぞれ長所と短所があり、中小企業のM&Aでは双方の事情を知る仲介が成約可能性や条件調整の面で機能する場面も多くあります。大切なのは、形態の違いと構造を理解したうえで選ぶことです。
行為の問題:誇大な営業・不透明な説明
一方、勧誘目的を告げない接触、根拠のない高値の提示、即断を迫る勧誘、手数料の不十分な説明——これらは仕組みの問題ではなく、個々の事業者の行為の問題です。構造的な課題は説明と設計で対処できますが、行為の問題は、そうした行為をしない会社を選ぶことでしか避けられません。「M&A仲介はすべて危ない」でも「どこも同じ」でもなく、行為を見て会社を選別する、というのが実務的な結論になります。
国の対応|中小M&Aガイドライン第3版と支援機関登録制度
こうした批判に対し、国も対応を進めてきました。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は改訂を重ね、現行の第3版(令和6年8月)では支援機関への規律が具体化されています。主な内容は次のとおりです。
- 広告・営業の規律——勧誘目的を告げない営業の禁止、顧客が停止の意思を示した場合は直ちに営業を停止すること、虚偽・誤認を招く表現の禁止、即時の判断を迫る営業の禁止
- 仲介者の利益相反への対応——売り手・買い手の双方から報酬を受ける仲介であることを、両当事者に説明する義務
- 契約条項の制限——依頼者を過度に拘束する専任条項や、契約終了後も手数料請求権を残すテール条項への制限
- セカンドオピニオンの容認——他の支援機関に意見を求めることを妨げないこと
さらに、ガイドラインの遵守を宣言した支援機関を国(中小企業庁)が登録・公表する「M&A支援機関登録制度」が設けられています。登録の有無や遵守宣言の公開状況は、誰でも確認できます。ルールと公表の仕組みが整った今、経営者様の側にも「確認する術」があるのです。
信頼できる会社を見分ける実践チェックリスト
それでは、具体的に何を確認すればよいのか。実務的なチェックポイントを整理します。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 登録・宣言 | M&A支援機関登録制度への登録があるか。ガイドライン遵守宣言をサイト等で公開しているか |
| 手数料の説明 | 算定基準(レーマン方式の基準額)・支払時期・最低報酬額・総額目安を、契約前に書面で提示するか |
| 利益相反の説明 | 双方から報酬を受ける仲介であることを、契約前に書面で説明するか |
| 営業姿勢 | 即断を迫らないか。「今決めないと損」といった話法を使わないか |
| 契約条項 | 専任条項・テール条項の内容と期間が説明されるか。セカンドオピニオンを妨げないか |
| 担当者の質 | 質問に根拠をもって答えるか。分からないことを分からないと言えるか |
ひとつでも満たさなければ危険、というものではありませんが、複数の項目で説明を避ける相手には慎重になるべきです。より詳しい比較の視点は「M&A仲介会社の選び方|失敗しない7つのチェックポイント」にまとめています。
それでも不安なときの防衛策|セカンドオピニオンと専門家同席
チェックリストで確認しても、なお不安が残ることはあるでしょう。そのときの防衛策も、きちんと用意されています。
セカンドオピニオンを取る
提示された企業価値評価や契約条件について、他の支援機関や専門家に意見を求めることは、ガイドラインも認める正当な行為です。秘密保持の取り扱いに配慮は必要ですが、「他社に聞くのは失礼ではないか」とためらう必要はまったくありません。むしろ、セカンドオピニオンを嫌がる相手のほうに注意が必要です。
顧問税理士・弁護士に同席してもらう
重要な面談や契約書の確認に、日頃から自社を知る顧問税理士や弁護士に同席してもらう方法も有効です。専門家の目が入るだけで、説明の質は変わります。誠実な支援機関であれば、専門家の同席を歓迎こそすれ、嫌がることはありません。
複数社と会ってから決める
1社の話だけで判断せず、複数の支援機関と面談して比較することも、シンプルながら最も効果的な防衛策です。同じ質問をぶつけてみれば、説明の丁寧さ、根拠の示し方、契約を急がせるかどうかの差が、はっきりと見えてきます。
業界の一員としての当社の考え
最後に、当社自身の立場を申し上げます。株式会社プラチナパートナーズも、売り手・買い手の双方から報酬をいただく仲介形態を採っています。その構造上の性質から逃げるつもりはなく、だからこそ、仲介であることとその意味を、ご契約の前に必ず書面でご説明しています。中小M&Aガイドラインの遵守を宣言し、全42項目の遵守事項を遵守宣言のページで公開しているのも、「言葉ではなく、確認できる形で」姿勢を示したいと考えるからです。
手数料についても、相談料・着手金・月額報酬0円の成功報酬型とし、成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額、最低2,000万円・税別)、中間金は成功報酬額の10%を基本合意時にいただき成功報酬から全額差し引く(基本合意後に不成立となった場合は返金しない)——という体系を、契約前にすべて書面でご提示しています。「M&A仲介はやばいのか」という問いへの当社なりの答えは、業界への批判を否定することではなく、批判された事柄をひとつずつ、確認可能な形で潰していくことです。比較検討の一社として、厳しい目でお確かめいただければ幸いです。