「まず取引銀行に相談すべきか」というご質問をよくいただきます。銀行系と独立系では、立ち位置も進め方も違います。どちらが優れているという話ではなく、違いを整理します。
まず、FAと仲介の違い
前提として、支援の形には二つあります。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、売り手か買い手のどちらか一方につく形です。依頼者の利益を最大化するために交渉します。
仲介は、双方の間に立つ形です。両者から手数料を受け取り、着地点を探します。
金融機関のM&A部門はFAの形を取ることが多く、独立系には仲介が多い、というのが大まかな傾向です。ただし会社によって異なるため、必ず確認してください。中小M&Aガイドラインは、どちらの立場かを明示することを求めています。
候補先の広さ
金融機関の強みは、取引先の情報を持っていることです。地域金融機関であれば、その地域の企業の財務内容を把握しています。
一方で、その範囲を超えた候補には届きにくいという制約もあります。他県の企業、異業種からの参入、投資ファンド。取引のない先の情報は持っていません。
独立系は、金融機関のような与信情報は持ちませんが、地域や業種の枠にとらわれずに探せます。近年は複数のM&Aプラットフォームや支援機関のネットワークも使えます。
どちらが広いかは、探す相手によって変わります。
手数料の考え方
ここは会社ごとに大きく違うため、一般論として言えることは限られます。
注意すべきなのは、金額の多寡より、体系の違いです。着手金の有無、月額報酬の有無、中間金の扱い、成功報酬の計算基準(株式価値ベースか移動総資産ベースか)、最低報酬額。
同じ料率でも、基準が違えば金額は倍近く変わります。
当社の体系は相談料・着手金・月額報酬0円、中間金は成功報酬額の10%(成功報酬から全額差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)、成功報酬は移動総資産レーマン方式・最低2,000万円です。詳細は料金体系に掲載しています。
融資との関係
金融機関に相談する場合、融資の関係が背景にあることは意識しておいてよい点です。
借入がある会社にとって、金融機関は債権者でもあります。譲渡の相談をすれば、債権保全の観点からの関心も自然に働きます。
これは必ずしも悪いことではありません。借入の引き継ぎや保証の解除について、早い段階から話せるという利点があります。
一方で、「まだ検討段階」の話が与信判断に影響しないかを気にされる方もいます。相談の段階とタイミングは、ご自身で設計してください。銀行が難色を示したらも併せてご覧ください。
進め方の速さ
組織の性格として、金融機関は稟議の手続きがあります。候補先への打診、条件の変更、契約の締結。いずれも社内手続きを経ます。
これは慎重さの表れであり、大きな案件では安心材料になります。一方で、小回りは効きにくい面があります。
独立系は判断が速い反面、体制や管理の質が会社によって大きく異なります。M&A支援機関登録の有無、ガイドライン遵守宣言の有無は、確認の手がかりになります。
規模による向き不向き
実務の感覚として申し上げます。
譲渡金額が大きい案件(数十億円以上)では、金融機関やその系列、大手FAの体制が効きます。買い手も大企業やファンドになり、資金調達が絡むためです。
中小規模の案件では、案件あたりに割ける手間の問題が出ます。金融機関の体制は一定以上の規模を前提に組まれていることがあり、小規模な案件は優先度が下がる場合があります。
「自社の規模だと、どのくらいの優先度で扱われるのか」を率直に聞いてください。
両方に当たってよい
結論として、取引銀行に聞くことと、独立系に相談することは、両立します。
ただし順番と情報管理には注意してください。複数に同時に相談すると、同じ買い手候補に別々のルートから打診が行く可能性があります。これは避けたい事態です。
実務では、まず話を聞く段階では複数に会い、正式に依頼する段階で一本化するのが通常です。専任条項を結ぶ前であれば、比較は自由です。
中小M&Aガイドライン(第3版)も、セカンドオピニオンを求めることを妨げないよう求めています。
判断の軸を一つに絞るなら
比較の観点を並べましたが、迷ったときの軸を一つ挙げます。
「自社の案件を、誰が実際に担当するのか」です。
組織の大小ではなく、担当する人の経験と、割ける時間。大きな組織の中で優先度の低い案件として扱われるより、小さくても主戦力が担当するほうが進むことがあります。逆もまた然りです。
面談で、担当予定者に直接会わせてもらってください。それを断る会社は、判断材料としてわかりやすい相手です。