顧問税理士の事務所がM&A支援を行っている、というケースが増えています。税務に強いという明確な利点がある一方、構造上の制約もあります。使い分けの考え方を整理します。

どういう形で関わっているか

会計事務所系のM&A支援には、いくつかの形があります。

① 事務所自身がFA・仲介として関わる。M&A専門の部門やグループ会社を持っている場合です。

② 仲介会社に紹介し、税務面だけ支援する。提携先に案件を紹介し、自身は顧問としての役割に留まる形です。

③ 買い手側のデューデリジェンスを受託する。財務デューデリジェンスの実施者として関わります。

どの形なのかによって、期待できることが違います。まず立場を確認してください。

税務の強さは実際の利点

会計事務所系の最大の強みは、税務の設計を最初から織り込めることです。

譲渡のスキーム(株式譲渡か事業譲渡か)、役員退職金の支給額と時期、自己株式の取得、名義株の整理。これらは税負担に直結します。

M&Aの専門会社が後から税理士を入れるより、初めから税務の視点が入っているほうが速く、抜けも少ない。これは率直に利点です。

とくに、譲渡益が大きくなる案件、相続との兼ね合いがある案件では、この違いが効きます。

候補先の範囲は限られやすい

一方で、買い手候補をどこから探すかという点には制約があります。

会計事務所の候補先ネットワークは、基本的にその事務所の顧問先です。地域の中では強くても、他県や異業種、投資ファンドには届きにくい。

提携するM&A会社やプラットフォームを通じて広げている事務所もありますが、その場合は実質的にその提携先の力量に依存します。

「候補先はどこから探すのか」を、具体的に聞いてください。ここが曖昧なまま専任で任せると、打診先が数社で止まることがあります。

顧問契約があることの両面

会社の内情を最もよく知っているのは顧問税理士です。これは大きな利点です。

同時に、顧問契約が続くかどうかという利害が、構造として存在します。譲渡が成立すれば顧問契約が切り替わる可能性がある。逆に、自らが仲介として手数料を受け取る立場にもなり得る。

これは不正を疑うという話ではありません。ただ、助言に利害が絡み得る構造であることは、依頼する側が理解しておくべき点です。

当社は税務顧問業務を行わないため、成約後も顧問契約は先生に残ります。この考え方は士業・金融機関の皆様へに書いています。

専門外になりやすい領域

税務以外の実務で、体制の差が出る領域があります。

買い手との交渉。価格の駆け引き、条件のすり合わせ、決裂しかけた場面の立て直し。これは経験の蓄積がものを言います。

従業員と取引先への対応。いつ誰に伝えるか、どう説明するか。

法務の論点。株主間の問題、許認可、契約上のチェンジ・オブ・コントロール条項。弁護士との連携体制があるかを確認してください。

「税務は安心、それ以外は誰が見るのか」という問いを立てると、体制がはっきりします。

手数料の体系を確認する

会計事務所系でも、手数料の体系は事務所ごとに異なります。顧問料とは別に、M&Aの報酬が発生します。

確認する項目は他と同じです。着手金・月額報酬の有無、中間金の扱いと返金の有無、成功報酬の計算基準、最低報酬額。

また、紹介にとどまる場合の紹介料の扱いも確認してください。事務所が受け取るのか、顧問先の手数料に上乗せされるのか。

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)は、手数料の体系と算定基準を明確に説明することを支援機関に求めています。

デューデリジェンスを受ける側の視点

もう一つ、会計事務所系ならではの利点があります。買い手側の財務デューデリジェンスが何を見るかを知っていることです。

役員報酬と地代家賃の調整、在庫の評価、簿外債務、未払残業代、名義株。指摘される項目はおおむね決まっています。

これを事前に洗い出し、整理したうえで交渉に入れるかどうかで、価格の下振れは変わります。調査で初めて出てくる問題ほど、買い手の心証を悪くします。

ただし、この作業は顧問税理士でなくてもできます。M&Aの専門会社でも、財務デューデリジェンスを受託する会計事務所でも構いません。「誰に頼むか」より「事前にやってあるか」が効くのが実際のところです。

組み合わせるという選択

実務では、どちらか一方を選ぶ必要はありません。

よくある形は、顧問税理士に税務面を見てもらいながら、M&Aの進行は専門会社が担うというものです。役割を分けることで、それぞれの強みが生きます。

この形にする場合、先生に先に相談してください。後から知らされると、蚊帳の外に置かれたと感じられます。「税務の面で見ていただきたい」と伝えれば、協力が得られます。

顧問税理士が消極的なときも併せてご覧ください。

確認すべきことは、結局同じ

会計事務所系でも、仲介専業でも、金融機関系でも、確認すべきことは変わりません。

立場はFAか仲介か。候補先はどこから探すのか。誰が実際に担当するのか。手数料はいくらで、いつ発生し、返金はあるか。専任か、期間はどれくらいか。中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しているか。

会社の種類で判断するのではなく、この6点の答えで判断してください。種類に関係なく、丁寧な会社と、そうでない会社があります。

※ 本稿は一般的な考え方をご紹介するものであり、個別の法務・税務アドバイスではありません。実際の取り扱いは会社の状況や契約の定めによって異なります。専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.税務の設計を最初から織り込めることです。譲渡スキームの選択、役員退職金の支給額と時期、自己株式の取得、名義株の整理はいずれも税負担に直結します。譲渡益が大きい案件や相続との兼ね合いがある案件で効きます。
A.会計事務所の候補先ネットワークは基本的にその事務所の顧問先です。提携先やプラットフォームを使う場合は実質的にその提携先の力量に依存します。「候補先はどこから探すのか」を具体的に確認してください。
A.顧問契約が続くかどうかという利害が構造として存在する点です。不正を疑う話ではありませんが、助言に利害が絡み得る構造であることは理解しておいてください。
A.買い手との交渉、従業員と取引先への対応、法務の論点(株主間の問題・許認可・チェンジオブコントロール条項)は体制の差が出ます。弁護士との連携体制も含め、「税務以外は誰が見るのか」を確認してください。
A.できます。顧問税理士に税務面を見てもらい、M&Aの進行は専門会社が担う形が一般的です。ただし先生に先に相談してください。後から知らされると蚊帳の外に置かれたと感じられます。
A.買い手側の財務デューデリジェンスが何を見るか(役員報酬と地代家賃の調整、在庫評価、簿外債務、未払残業代、名義株)を知っている利点はあります。ただしこの事前整理は顧問税理士でなくてもできます。「誰に頼むか」より「事前にやってあるか」が効きます。

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先生と役割を分けて、お手伝いします。

当社は税務顧問業務を行いません。
相談料・着手金・月額報酬はいただきません。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら