クリーニング業は、統計で減少がはっきりと確認できる業種です。しかも、その減少は一過性のものではなく、長期にわたって続いています。厚生労働省の公表資料から、まず現状を正確に押さえます。
数字で見るクリーニング業界の現在地
厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例の概況」によると、令和6年度末現在のクリーニング業の施設数は69,855施設で、前年度に比べ3,081施設(4.2%)減少しました。
直近5年の推移を見ると、減少の連続であることがわかります。
| 年度末 | クリーニング業 計 | うちクリーニング所 (取次所を除く) | うち取次所 | 無店舗取次店 |
|---|---|---|---|---|
| 令和2年度 | 83,700 | 23,403 | 58,138 | 2,159 |
| 令和3年度 | 80,162 | 22,580 | 55,419 | 2,163 |
| 令和4年度 | 76,300 | 21,299 | 52,784 | 2,217 |
| 令和5年度 | 72,936 | 20,478 | 50,192 | 2,266 |
| 令和6年度 | 69,855 | 19,379 | 48,172 | 2,304 |
令和2年度からの4年間で、施設数は83,700から69,855へ、約1万4千施設減りました。減少率で見ると、令和6年度はクリーニング所(取次所を除く)が5.4%減、取次所が4.0%減です。
比較のために、同じ統計から他の生活衛生関係施設の動きを見ると、理容所は107,995施設(2.1%減)、美容所は277,752施設(1.3%増)です。理容所も減少していますが、クリーニング業の減少幅はそれを上回っています。
取次所と無店舗取次に見える構造変化
数字を分解すると、この業界の構造変化が見えてきます。減少しているのは実際に洗濯を行うクリーニング所と、店頭で受け渡しを行う取次所です。一方で、無店舗取次店だけは増加しています(令和6年度2,304、前年度比1.7%増)。
無店舗取次は、集配や宅配などを通じて店舗を持たずに受注する形態です。数としては小さいものの、この5年間で一貫して増えている唯一の区分であることは、需要の受け方が変わりつつあることを示しています。
背景には、次のような変化が指摘されます。
- 家庭用洗濯機と衣料品の性能向上により、クリーニングに出す衣類そのものが減った
- 働き方や服装の変化により、スーツ・ワイシャツの需要が縮小した
- 店舗を構えるコスト(賃料・人件費)が上昇し、小規模店舗の維持が難しくなった
- 集配・宅配という形での受注が広がった
これらの変化は、店舗網を広げることで売上を確保してきた従来のモデルが機能しにくくなっていることを意味します。
制度の枠組み|クリーニング業法と資格
クリーニング業は、クリーニング業法に基づく制度のもとで営まれています。営業にあたっては都道府県知事等への届出が必要とされ、洗濯物の処理を行う施設にはクリーニング師を置くことが求められています。クリーニング師は都道府県知事が行う試験に合格した者で、その資格の保有者数も、この業界の担い手を示す指標のひとつです。
また、施設の構造設備、洗濯物の取扱い、消毒の方法などについて衛生上の基準が定められており、保健所による指導・監督の対象となります。溶剤を使用するドライクリーニングについては、環境関連の法令にも留意が必要です。
M&Aの場面では、株式譲渡であれば法人が存続するため届出は一般に維持されますが、事業譲渡では新たな届出が必要になるのが通常です。施設ごとの届出が必要な業態であるため、店舗数が多い場合は手続きの量も相応になります。
経営環境の変化|エネルギー・人手・単価
クリーニング工場は、エネルギーを大量に使う設備です。ボイラー、乾燥機、プレス機——いずれも燃料や電力の価格変動を直接受けます。この数年のエネルギー価格の上昇は、工場を持つ事業者の収益を強く圧迫してきました。
人手の面では、工場の作業者と、店舗の受付担当の双方で採用が難しくなっています。作業には熟練を要する工程があり、経験者が抜けると品質の維持に影響します。
単価については、値上げに踏み切る事業者が増えている一方、地域の競合との関係で上げにくいという声も伺います。ワイシャツ1枚あたりの価格に象徴されるように、消費者にとって価格が見えやすい商品であることが、転嫁を難しくしています。
収益を維持している事業者に共通するのは、法人向け(ホテル、病院、介護施設、飲食店などのリネンサプライやユニフォーム)の比率を高めているケースです。継続的な契約に基づく売上は変動が小さく、単価交渉も個人客より進めやすい傾向があります。
事業承継の観点|工場・店舗・人材
帝国データバンクの2025年調査によると、国内企業の後継者不在率は50.1%です。クリーニング業は家業として営まれてきた例が多く、施設数の減少にはこの後継者問題が相当程度含まれていると考えられます。
承継やM&Aを検討する際に整理しておきたい論点は次のとおりです。
- 工場設備——保有機械の一覧、購入年、稼働状況、次回更新の見込み。ボイラーの更新時期は特に重い論点です。
- 処理能力と稼働率——工場の1日あたり処理能力と、実際の稼働率。余力があれば、買い手にとっては自社の物量を載せる余地になります。
- 店舗網——直営店・取次店の一覧、立地、賃借条件と残存期間、店舗ごとの採算。
- 売上構成——個人客と法人客の比率、法人契約の相手先・契約期間・単価。法人比率が高いほど、売上の安定性が評価されやすくなります。
- 人材——工場の熟練作業者、クリーニング師の在籍状況、平均勤続年数。
- 環境対応——使用溶剤の種類、排水・廃棄物の処理、土壌に関する過去の履歴。デューデリジェンスで確認される場合があります。
廃業と譲渡のどちらが手元に残るかという観点は「廃業とM&Aの比較」で、店舗網と工場設備の評価については「クリーニング業のM&A」で整理しています。
まとめ|工場が動いているうちに
クリーニング業の施設数は、4年間で約1万4千減りました。この流れが自然に反転するとは考えにくく、残る事業者にとっては、需要を集約できるかどうかが分かれ目になります。工場の処理能力に余力があり、法人契約という安定した売上を持つ事業者は、その集約の受け皿になり得る立場です。
逆にいえば、工場を止め、店舗を閉じてからでは、引き継げるものが残りません。設備の更新時期を前に迷われている段階、あるいは後継者が決まらないまま数年が過ぎている段階こそ、選択肢を並べて考える好機です。
当社プラチナパートナーズは、成功報酬型のもと、クリーニング業を含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。工場・店舗・人材の整理から、守秘義務を徹底のうえ対応いたします。
本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。