建材・住宅資材の製造は、住宅と非住宅の建築需要にそのまま連動します。近年は、省エネ基準の適合義務化という制度変更と、建設現場の人手不足による工期の長期化という二つの流れが、需要の形を変えつつあります。本稿では、公表資料をもとに整理します。
建材・住宅資材の需要はどこから来るのか
建材・住宅資材は、窯業・土石製品、木材・木製品、金属製品、化学工業など複数の産業分類にまたがるため、一つの統計で全体を捉えることはできません。ここでは需要側の指標から見ていきます。
国土交通省「建築着工統計調査報告」によれば、2024年度の新設住宅着工戸数は81万6018戸で前年度比2.0%増となり、3年ぶりに増加しました。床面積は6283万平方メートル(同1.0%増)です。利用関係別では、貸家が35万6893戸(同4.8%増)、持家が22万3079戸(同1.6%増)と伸びた一方、分譲住宅は22万9440戸(同2.4%減)と2年連続の減少でした。
供給側の指標としては、総務省・経済産業省「2024年経済構造実態調査(製造業事業所調査)」によれば、窯業・土石製品製造業の事業所数は1万792事業所、従業者数は23万9697人(2024年6月1日現在)、製造品出荷額等は8兆5311億円(2023年)。木材・木製品製造業(家具を除く)は6196事業所、9万1885人、3兆4394億円(前年比8.4%減)でした。
2025年4月からの省エネ基準適合義務化
制度面での最大の変更は、建築物省エネ法の改正です。国土交通省によれば、2025年4月から、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務づけられました。従来は床面積2000平方メートル以上の建築物などが対象でしたが、規模を問わず適合が求められる形に変わっています。あわせて、改正前の届出義務・説明義務は廃止されました。
この改正は、断熱材、サッシ・窓、給湯・空調設備といった省エネ関連の建材にとっては需要を押し上げる要因です。一方で、建築コストの上昇を通じて着工そのものを抑える方向にも働きます。
実際、一般社団法人セメント協会の「セメントハンドブック2026年度版」は、2025年度の民需について「住宅投資は2025年4月からの省エネ基準適合義務化の影響や建設コストの高騰により減少した」としています。制度がプラスに働く建材と、マイナスに働く建材があるということです。
建築物省エネ法に基づく適合義務の範囲や手続は、建築物の用途・規模・着工時期によって異なります。個別の判断は所管行政庁および建築の専門家にご確認ください。
需要側で起きていること|工期の長期化とコスト上昇
需要側で起きている変化として見逃せないのが、工期の長期化です。
セメント協会の前掲資料によれば、2025年度のセメント国内需要は3053万2000トンで前年比93.5%となり、7年連続のマイナスとなりました。同資料は、その要因として「近年の慢性的な人手不足に加え、時間外労働の上限規制や夏場の熱中症対策による作業時間の短縮により工期が長期化し出荷数量は減少」「週休2日制導入の拡大により土曜日の出荷が大幅に減った」ことを挙げています。生産は4440万7000トン(前年比96.8%)、輸出は879万トン(同107.1%)でした。
なお、同資料によれば、セメントの国内需要は1990年度に8628万6000トンでピークを記録しており、そこから長期にわたって縮小が続いています。
建材メーカーにとって、この「工期の長期化」は独特の影響を持ちます。年間の着工戸数が同じでも、現場に資材が入るタイミングが分散するため、出荷が平準化する一方でピークの取り込みが難しくなります。在庫と生産計画の組み方が変わってくるということです。
経営環境|価格転嫁が進みにくい業種のひとつ
コストの転嫁については、中小企業庁「価格交渉促進月間(2025年9月)フォローアップ調査結果」(2025年11月28日公表)が、コスト全般の価格転嫁率を53.5%(原材料費55.0%、労務費50.0%、エネルギーコスト48.9%)としています。同調査の業種別集計では、建材・住宅設備は下位に位置する業種のひとつです。
建材は、住宅メーカーや工務店、建材商社を経由して現場に届くため、価格改定が何段階もの交渉を経ることになります。最終の建築コストに跳ね返るため、値上げへの抵抗も強くなりがちです。
2026年1月1日から施行された「中小受託取引適正化法」(旧下請法)では、協議に応じない一方的な代金決定が禁止されました(公正取引委員会・中小企業庁)。ただし、実際に交渉を動かすには、製品ごとの原価構成を示せることが前提になります。
事業承継の観点|製造業か、商流か、施工か
帝国データバンクの2025年調査によれば、国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。建材・住宅資材の会社を承継するとき、まず整理したいのは、自社が製造業なのか、商流の会社なのか、施工まで担う会社なのかという点です。
製造が中心であれば、設備の状態と生産能力、そして製品の競争力が問われます。商流が中心であれば、仕入先と販売先の関係、在庫と物流の体制が価値の源泉です。施工まで担うのであれば、建設業許可と職人の確保が論点になります。
多くの会社はこれらが混ざっており、部門ごとに収益性が大きく異なることも珍しくありません。部門別の損益を把握しておくことは、承継の準備として非常に有効です。
建材商社としての論点は「建材商社のM&A」で解説しています。
M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと
買い手が確認する主な項目です。
| 領域 | 整理しておきたいこと |
|---|---|
| 需要構造 | 住宅向け/非住宅向け、新築向け/改修向けの売上構成と推移。 |
| 製品 | 製品別の売上と粗利、省エネ基準への適合状況、試験成績・認定の取得状況。 |
| 取引先 | 販売先別の売上構成と依存度、与信管理の状況、回収サイト。 |
| 在庫・物流 | 在庫水準と滞留品、保管場所、配送体制と物流費の推移。 |
| 設備・不動産 | 製造設備の設置年と更新見込み、工場・倉庫の所有/賃借。 |
| 許認可 | 建設業許可(施工を伴う場合)、産業廃棄物の委託契約、消防法関連の届出。 |
建材分野では、製品が公的な規格や大臣認定を取得しているかが、事業の参入障壁になっている場合があります。取得状況と、その維持に必要な試験・更新の負担を整理しておくと、事業の強みを説明しやすくなります。
当社プラチナパートナーズは、建材・住宅資材関連企業の事業承継をご支援しています。相談料・着手金・月額報酬は0円です。部門別の損益整理からお手伝いできます。
本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。統計は調査時点・集計範囲により数値の定義が異なるため、個別の判断にあたっては原典および専門家へのご確認をお願いいたします。