家具・インテリアの製造は、住宅や店舗・オフィスの動きにそのまま連動する仕事です。加えて、輸入品との競合が長く続いてきた分野でもあります。本稿では、公表統計をもとに、この業界がいまどの位置にいるのかを整理し、事業承継で何が問われるのかを考えます。
家具・装備品製造業の現在地|減少幅が製造業で最も大きい
総務省・経済産業省「2024年経済構造実態調査(製造業事業所調査)」によると、家具・装備品製造業の事業所数は6315事業所で、製造業全体の2.8%を占めます(2024年6月1日現在)。従業者数は8万9318人、製造品出荷額等は2兆198億円(2023年)、付加価値額は7638億円でした。
ここで注目したいのは減少幅です。同調査では、家具・装備品製造業の事業所数は前年比1.0%減、従業者数は前年比1.3%減となっています。製造業全体の事業所数が前年比0.5%減であることと比べると、減少のペースは速い部類に入ります。
一方で、製造品出荷額等は前年比1.2%増、付加価値額は前年比1.5%増とわずかに伸びました。事業者数が減りながら金額が維持されている点は、繊維工業と似た構図です。規模の小さな事業所の退出が続き、残った会社に受注が集まっている可能性があります。
需要の土台|住宅着工と、2025年4月からの省エネ基準
家具の需要を左右する最大の要因は住宅の着工です。
国土交通省「建築着工統計調査報告」によれば、2024年度の新設住宅着工戸数は81万6018戸で前年度比2.0%増となり、3年ぶりに増加しました。床面積は6283万平方メートル(同1.0%増)です。利用関係別では、貸家が35万6893戸(同4.8%増)、持家が22万3079戸(同1.6%増)と伸びた一方、分譲住宅は22万9440戸(同2.4%減)と2年連続で減少しました。
2025年4月からの省エネ基準適合義務化
制度面では、建築物省エネ法の改正により、2025年4月から原則としてすべての新築住宅・非住宅について省エネ基準への適合が義務づけられました(国土交通省)。従来は一定規模以上の建築物が対象でしたが、規模にかかわらず適合が求められる形に変わっています。
この改正は、建築コストの上昇や設計・確認手続きの変化を通じて、住宅着工の動きに影響します。実際、一般社団法人セメント協会の「セメントハンドブック2026年度版」は、2025年度の住宅投資について「2025年4月からの省エネ基準適合義務化の影響や建設コストの高騰により減少した」としています。家具メーカーにとっては、川上の着工動向を注視する必要があるということです。
輸入品との競合と、国内に残る領域
家具は、長く輸入品との競合にさらされてきた分野です。価格帯の広い量販家具の領域では海外生産品の存在感が大きく、国内メーカーは別の軸で勝負せざるを得なくなりました。
国内に残っている会社の強みは、おおむね次のいずれかに集約されます。
- オーダーメイド・造作家具など、寸法や仕様が一品ごとに異なる領域
- 店舗什器・オフィス家具など、施工とセットで納める業務用の領域
- 病院・介護施設・学校など、仕様や安全基準が定められた領域
- 短納期・小ロットの補修や追加製作
いずれも、輸送コストと納期の面で海外生産が不利になる領域です。逆にいえば、規格品の量産に依存している会社ほど、経営環境は厳しくなります。自社の売上がどの領域から来ているかを分解しておくことが、将来を考える出発点です。
内装工事とセットで受注する会社については「内装工事業のM&A」もあわせてご覧ください。
経営環境|木材・金物の価格と、職人の確保
原材料面では、木材・合板・金物・塗料の価格が経営に直結します。中小企業庁「価格交渉促進月間(2025年9月)フォローアップ調査結果」(2025年11月28日公表)によれば、コスト全般の価格転嫁率は53.5%(原材料費55.0%、労務費50.0%、エネルギーコスト48.9%)でした。同調査の業種別集計では、建材・住宅設備は下位に位置しています。
また、経済構造実態調査によると、木材・木製品製造業(家具を除く)の製造品出荷額等は2023年に3兆4394億円で前年比8.4%減、付加価値額は1兆222億円で前年比14.3%減と、大きく落ち込みました。川上の木材関連が変動していることも、家具メーカーの調達環境に影響します。
職人の確保
家具・造作の現場は、木工機械の操作、組立、塗装、そして現場での取付けと、それぞれに経験が必要です。人材の確保が難しいことは、この業界の共通課題です。取付けまで自社で担える体制は、それ自体が競争力になっています。
事業承継の観点|受注が住宅か、業務用か
帝国データバンクの2025年調査によると、国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。家具・インテリア製造業の承継で最初に確認したいのは、受注が住宅向けか、業務用かという点です。
住宅向けが中心の場合、着工戸数と住宅市場の動きに業績が連動します。買い手は、需要の変動に対してどこまで固定費を吸収できるかを見ます。業務用が中心の場合は、取引先(工務店、ゼネコン、設計事務所、施設運営者)との関係の継続性が焦点になります。
また、この業界では工場・倉庫といった不動産を保有している会社が多く、資産の評価が譲渡の条件に影響します。事業と不動産のどちらに価値の重心があるかを、事前に整理しておくことをおすすめします。
企業価値の基本的な考え方は「時価純資産法とは」で解説しています。
M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと
買い手が確認する主な項目です。
| 領域 | 整理しておきたいこと |
|---|---|
| 受注 | 受注先別の売上構成、住宅向け/業務用の比率、リピート率、受注残の状況。 |
| 設備 | 木工機械・塗装設備の設置年と更新見込み、乾燥設備・集塵設備の状況。 |
| 技能 | 職人の人数と年齢構成、外注(取付け・塗装)への依存度。 |
| 不動産 | 工場・倉庫・展示場の所有/賃借、簿価と実勢の差、遊休資産の有無。 |
| 在庫 | 製品・仕掛品・材料の在庫評価、長期滞留品の有無。 |
| 安全・法令 | 木くず・塗料の廃棄物処理、消防法上の届出、粉じん・有機溶剤に関する健康診断。 |
製造業としてのM&Aの進め方は「家具・内装製造業のM&A」で解説しています。減少が続く業界では、受注と人員が維持されているうちに検討を始めることが、結果として選択肢を広げます。
当社プラチナパートナーズは、家具・内装関連企業の事業承継をご支援しています。相談料・着手金・月額報酬は0円です。
本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。統計は調査時点・集計範囲により数値の定義が異なるため、個別の判断にあたっては原典および専門家へのご確認をお願いいたします。