油圧緩衝器などを製造するカヤバは2024年11月11日、名古屋証券取引所メイン市場に上場する知多鋼業を完全子会社化するための公開買付け(TOB)を開始する予定であると公表しました。対象会社は同日、賛同と応募推奨を決議したとしています。

開示された事実

譲受(買い手)カヤバ株式会社(7242・東証プライム)
譲渡対象知多鋼業株式会社(名古屋証券取引所メイン市場)(各種線ばね、各種薄板ばね、パイプ成形加工品、切削加工品及び歯科医療品の製造販売)
所在地愛知県春日井市
手法公開買付け(TOB)。成立後にスクイーズアウト手続を経て完全子会社化する予定
対価1株2,010円。買付予定数の下限5,276,700株(所有割合55.11%)、上限は設定なし
日程公表 2024年11月11日/公開買付けの開始は独占禁止法の手続完了などを前提条件とし、2025年1月下旬頃を目途

対象会社は1956年3月設立、資本金819,078千円(2024年8月31日現在)で、各種線ばね、薄板ばね、パイプ成形加工品、切削加工品及び歯科医療品の製造販売を行っています。買い手は公表時点で対象会社株式1,107,000株(所有割合11.56%)を持つ主要株主かつ筆頭株主です(出典:カヤバ株式会社 2024年11月11日公表資料)。

買付価格は1株2,010円です。開示資料には、買い手が2024年10月7日の前営業日終値を基準に1,400円を提案し、対象会社から引上げの要請を受けて10月15日に1,650円、11月8日に2,010円を提案したという経緯が記載されています。2,010円は11月7日の終値848円に対して137.03%、過去1ヶ月の終値単純平均875円に対して129.71%にあたるとしています(出典:カヤバ株式会社 2024年11月11日公表資料)。

一方で買付価格は、対象会社の2024年8月31日時点の簿価純資産額24,555,974千円を自己株式控除後の発行済株式数9,575,483株で割った1株当たり純資産2,564円を21.61%下回っています(出典:カヤバ株式会社 2024年11月11日公表資料)。開示資料は、仮に清算する場合でも簿価純資産額がそのまま換価されるわけではなく、工場や本社は建築後相当の年月が経過して老朽化し、工場は汎用性が乏しく即時一括での売却が困難であることを理由として挙げています。特別委員会も、1株当たり簿価純資産額が公正価値の最低価格になるという考え方は採用していないと記載されています。

買い手グループは対象会社売上高の3割超を占める最大取引先であり、両社は海外合弁会社3社を有すると記載されています(出典:カヤバ株式会社 2024年11月11日公表資料)。対象会社は、買い手が支配株主ではないものの主要株主かつ主要な取引先でもあることを踏まえ、独立したファイナンシャル・アドバイザーの起用と特別委員会の設置を行ったとしています。公開買付けは独占禁止法上のクリアランス取得などを前提条件としており、開始時期は確定していません。

出典: カヤバ株式会社(TDnet適時開示。TDnetでの公開期間が終了しているため、URLは株探が保存する原本PDF)「知多鋼業株式会社(証券コード:5993)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」(2024年11月11日公表)

中小企業の経営者は、どう読むか

この一件がいちばんはっきり示しているのは、純資産が価格の下限にはならないということです。買付価格は一株当たりの簿価純資産を下回っており、特別委員会も、簿価純資産額が公正価値の最低価格になるという考え方は採用していないと明記しています。「うちは純資産がこれだけあるから、最低でもこの金額」という前提は、上場企業の案件でも通っていません。

その理由として挙げられているのは、工場や本社が建築後相当の年月を経て老朽化していること、工場は汎用性が乏しく、すぐにまとめて売ることが難しいことです。帳簿の金額と、実際に売ったときに手元に入る金額は別だという話です。自社の不動産や設備が帳簿にいくらで載っているかではなく、いま買う人がいるかで見られます。

価格は一度で決まっていません。最初の提示に対して対象会社側が引上げを要請し、その経緯が日付入りで開示資料に書かれています。最初に出てきた金額が結論ではないという、交渉の実際がそのまま残っている資料です。中小企業の譲渡でも、最初の提示をそのまま受けるか、根拠を示して返すかで結果が変わります。

買い手は、対象会社の売上の三割を超える最大の取引先であり、同時に筆頭株主でもありました。取引先が買い手になる形は中小企業でもよくあります。事業のつながりが深いほど話は進みやすい反面、価格の妥当性を誰がどう確かめたのかが問われます。この案件では、独立した助言者と特別委員会を置くという形で備えています。

公開買付けの開始時期は決まっていません。独占禁止法の手続が終わることが前提条件になっているためです。相手が同じ業界で規模が大きい場合、当事者どうしで合意しても、外の手続が終わるまで実行できません。日程は自分たちだけでは決められないと考えておくほうが安全です。

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本記事は、各社が公表した適時開示資料などの一次情報を当社が要約したものです。当社の成約実績ではなく、当社が関与した案件でもありません。記載の事実は公表日時点のもので、その後変更されることがあります。詳細は出典の資料をご確認ください。