産業廃棄物処理のダイセキは2024年12月13日、東京証券取引所スタンダード市場に上場する大阪油化工業株式会社を完全子会社化することを目的として、公開買付けを実施することを決議したと公表しました。公表時点で買い手は対象会社株式を所有していません。
開示された事実
| 譲受(買い手) | 株式会社ダイセキ(9793・東証プライム) |
|---|---|
| 譲渡対象 | 大阪油化工業株式会社(東証スタンダード)(精密蒸留精製) |
| 所在地 | 大阪府枚方市 |
| 手法 | 公開買付け(TOB)。完全子会社化を目的とし、成立後に株式併合を実施する二段階買収。対象会社のファイナンシャル・アドバイザーが複数の候補者を招いた入札プロセスを経ている |
| 対価 | 1株3,201円。買付代金3,342,144,894円(買付予定数1,044,094株×3,201円)。買付予定数の下限655,300株(所有割合62.76%)、上限なし |
| 日程 | 取締役会決議 2024年12月13日/公開買付開始公告・届出書提出 2024年12月16日/買付け等の期間 2024年12月16日〜2025年2月3日(30営業日)/決済の開始日 2025年2月7日 |
開示資料には、対象会社のファイナンシャル・アドバイザーから複数の候補者の中からパートナーを選定するための入札プロセスに招聘する意向との連絡を受け、2024年6月25日に秘密保持誓約書を提出して第1次入札プロセスへの参加を検討したという経緯が記載されています。買い手は自社が持ち合わせていない蒸留再生ノウハウを持つ対象会社と協働することで顧客基盤を拡大できると判断したとしています。
買付価格は1株3,201円です。開示資料によれば、買い手は最終提案書で3,000円(2024年10月11日の終値1,512円に対して98.41%のプレミアム)を提示しましたが、10月17日に「他の候補先からの提案との比較において優劣をつけることが難しい」として再提案の要請を口頭で受け、最終的に3,201円となりました(出典:株式会社ダイセキ 2024年12月13日公表資料)。
買付代金は3,342,144,894円で、買付予定数1,044,094株に買付価格3,201円を乗じた金額です。買付予定数の下限は655,300株(所有割合62.76%)で、上限は設定されていません(出典:株式会社ダイセキ 2024年12月13日公表資料)。
対象会社の代表取締役社長は主要株主かつ筆頭株主で、所有する238,000株(所有割合22.79%)のうち譲渡制限付株式4,000株を除く234,000株(所有割合22.41%)について応募する旨を合意しています(出典:株式会社ダイセキ 2024年12月13日公表資料)。開示資料は、譲渡制限付株式には譲渡制限が付されており公開買付けに応募できないため、合意の対象としていないと注記しています。買い手は本取引後も対象会社の独立性を尊重し、従業員の雇用や処遇は基本的に維持するとしています。
中小企業の経営者は、どう読むか
この案件は、買い手が一社ではありませんでした。売り手側の助言者が複数の候補を招き、入札の形で進めています。そして買い手は「他の候補との比較で優劣がつけられない」と言われて、価格を上げています。比べられる状況を作ると、条件は動くということです。
中小企業の譲渡でも同じ考え方が使えます。一社だけと話すのか、複数に当たるのかで結果が変わります。ただし、声をかける数を増やすほど情報が広がるので、どこまで広げるかは秘密保持と天秤にかける判断です。
入札に参加するために、買い手はまず秘密保持の書面を出しています。名前を知る前の段階です。売り手側から見れば、自社の名前が出る前に、相手に書面で縛りをかけているということです。順番が守られているかを確かめる場面です。
社長が持っていた株式のうち、譲渡制限付株式は応募できないと明記されています。持っている株式の中に、渡せないもの・渡しにくいものが混ざっていることがあります。自社の株式に条件が付いていないかは、譲渡を考える前に確かめる項目です。
買い手は、独立性を尊重し従業員の雇用と処遇は基本的に維持すると明記しています。売り手が最後まで気にするのはここです。相手がこれを文書で言えるかどうかは、譲渡先を選ぶときの判断材料になります。