M&Aの検討を始めた経営者様が、あまり説明を受けないままになりがちなのが「うまくいかなかったとき」の話です。しかし実務では、交渉が途中で止まることは決して例外ではありません。どの段階で止まる可能性があり、そのとき何が起きるのかを知っておくことは、過度な期待も過度な不安も避けるうえで大切です。本稿では、段階ごとに何が起き、どう備え、その後どう動くかを整理します。契約の解除や責任に関する具体的な判断は、弁護士にご確認ください。

破談は珍しいことではない

買い手候補に打診を始めても、関心を示す先が現れないことがあります。面談まで進んでも、条件が折り合わないことがあります。基本合意まで至っても、デューデリジェンスの結果で見直しになることがあります。M&Aは相手のあることで、双方の社内事情や外部環境にも左右されるため、途中で止まる可能性は常にあります。

大切なのは、止まること自体を失敗と捉えないことです。条件が合わない相手と無理に成約するほうが、成約後の不幸につながります。むしろ、「納得できないなら止める」という選択肢を持ち続けることが、交渉における最大の強みでもあります。失敗の要因と防ぎ方は「M&Aの失敗事例に学ぶ」で解説しています。

段階別|どこで、なぜ止まるのか

段階止まる主な理由
打診の段階候補先の関心が得られない。規模・業種・地域が買い手の方針に合わない。希望価格と市場の見方に開きがある
企業概要書の開示後収益性や取引先構成が想定と異なる。買い手の投資方針の変更。社内で優先順位が下がる
面談・条件交渉の段階価格の目線が合わない。従業員の処遇や拠点の維持について方針が異なる。経営者同士の相性
基本合意後・DD中簿外債務や未払賃金など想定外の事項が判明する。株主構成や許認可の問題が発覚する。買い手の資金調達がつかない
最終契約の交渉中表明保証や補償の範囲で折り合わない。価格調整の条件が合意できない
最終契約後・クロージング前前提条件が満たせない。重要な取引先の同意が得られない。売り手・買い手いずれかに重大な事情の変化が生じる

前半の段階で止まる場合は、影響が限定的です。情報開示の範囲も狭く、費用もほとんど発生していません。一方、後半になるほど、投じた時間と費用、そして開示した情報の量が増えるため、止まったときの影響が大きくなります。だからこそ、後半で止まらないよう、早い段階で懸念事項を洗い出しておくことが実務上の要点になります。

止まったときに起きること|費用・情報・社内

費用

仲介会社に支払う費用の扱いは、契約内容によって異なります。当社の場合は、相談料・着手金・月額報酬はいただいていません。基本合意時に成功報酬額の10%を中間金として申し受け、成約時に成功報酬から全額を差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合、中間金は返金されません。この点は契約前に必ずご確認いただいています。中間金の考え方は「M&Aの中間金とは」で解説しています。

加えて、売り手側で弁護士・税理士等に依頼した費用は、原則として各自の負担です。最終契約書に費用負担の定めがある場合は、その内容に従います。

情報

止まった時点で、相手方には自社の詳細な情報が渡っています。ここで効いてくるのが秘密保持契約です。交渉終了時の資料の返還または破棄、守秘義務の存続期間、目的外使用の禁止、従業員への接触制限といった条項が、この局面で実際に機能します。交渉終了の際には、書面で終了を確認し、資料の取扱いについても明確にしておいてください。

社内

キーパーソンに開示していた場合、その後のフォローが必要です。「この会社は売られるのか」という不安を残したままにすると、離職につながりかねません。経緯を説明し、当面の方針を伝える場を設けてください。逆に、まだ誰にも開示していない段階で止まったのであれば、社内への影響はほとんどありません。開示を遅らせることの意味は、ここにあります。

最終契約後に実行できなくなる場合

最終契約を締結した後にクロージングに至らないケースは多くありませんが、可能性はあります。前提条件が満たせない、重要な取引先の同意が得られない、当事者に重大な事情の変化が生じた、といった場合です。

この段階では、契約書の定めが直接に効いてきます。確認すべきは次の点です。

  • どのような事由が解除事由として定められているか
  • 解除された場合、既に支払われた金銭はどう扱われるか
  • 違約金や損害賠償の定めがあるか、上限はあるか
  • 前提条件を満たせない場合、放棄(ウェイバー)や条件の組み替えで実行できないか
  • クロージング期限を延長する手続が定められているか

実務では、いきなり解除に至るより、期限の延長や条件の組み替えで着地を探ることのほうが多いといえます。いずれにせよ、契約に基づく判断が必要になりますので、弁護士にご相談のうえ進めてください。最終契約の構造については「基本合意書(LOI)と最終契約書(SPA)の違いと注意点」をご覧ください。

破談の後にどう動くか

交渉が止まっても、会社を譲渡するという選択肢がなくなるわけではありません。むしろ、一度プロセスを経験したことで、次の交渉は格段に進めやすくなります。

次に向けて、次のような整理をおすすめします。

  • 止まった理由を特定する。価格なのか、条件なのか、開示した事項の内容なのか。仲介会社と率直に振り返る
  • 指摘された事項を手当てする。デューデリジェンスで出た指摘は、次の相手でも同じように指摘されます。是正できるものは是正しておく
  • 資料を整えておく。一度作成した企業概要書や整理した資料は資産です。数字を更新すれば再利用できます
  • 期間を置くかを判断する。同じ買い手候補群に再度打診する場合、時期を空けたほうがよいこともあります
  • 条件の優先順位を見直す。何を最優先にするかを整理し直すと、候補先の選び方が変わることがあります

また、譲渡以外の選択肢を改めて検討する機会にもなります。親族内での承継、社内の幹部への承継、当面の事業継続と体制づくり。第三者への譲渡は選択肢の一つであって、唯一の道ではありません。

まとめ|止まる前提で設計しておく

M&Aは、どの段階でも止まり得ます。だからこそ、①社内への開示はできる限り遅らせる、②秘密保持契約で終了後の取扱いを定めておく、③懸念事項は早い段階で洗い出して手当てする、④費用の発生時期と返金の扱いを契約前に確認する、という四つの備えが実務上有効です。これらを整えておけば、止まったときの損失は最小限に抑えられ、次の機会に向けて動き出せます。

当社プラチナパートナーズでは、ご契約前に費用の発生時期と条件を書面でご説明し、途中で止まった場合の影響も含めてご案内しています。ご決断を急がせることはありません。「本当に進めてよいのか」という段階のご相談こそ歓迎ですので、まずは無料相談からお声がけください。

よくあるご質問

A.段階ごとに理由が異なります。打診では候補先の関心が得られない、企業概要書の開示後では収益性や取引先構成が想定と異なる、面談・条件交渉では価格の目線や従業員の処遇の方針が合わない、基本合意後の調査では簿外債務や未払賃金、株主構成や許認可の問題が判明する、最終契約の交渉では表明保証や補償の範囲で折り合わない、といった具合です。前半で止まるほど影響は限定的です。
A.キーパーソンに開示していた場合、その後のフォローが必要です。「この会社は売られるのか」という不安を残したままにすると、離職につながりかねません。情報については、相手方に自社の詳細が渡っていますので、秘密保持契約に基づいて資料の返還・破棄と義務の継続を確認してください。当社は相談料・着手金・月額報酬をいただいていないため、基本合意の前であれば費用は発生しません。
A.そうではありません。むしろ、一度プロセスを経験したことで、次の交渉は格段に進めやすくなります。止まった理由が価格なのか条件なのか開示した事項なのかを特定し、調査で出た指摘のうち是正できるものは是正しておいてください。同じ指摘は次の相手でも出ます。作成した企業概要書や整理した資料は資産で、数字を更新すれば再利用できます。条件の優先順位を見直す機会にもなります。

Free Consultation

止まったときの備えも含めて、ご相談ください。

相談料・着手金・月額報酬は0円です。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。秘密厳守でご相談を承ります。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

無料相談を申し込む

Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら