病院の数が減ることは、すべての診療科が等しく減ることを意味しません。
厚生労働省の公表統計によれば、一般病院は16年で9.2%減りました。そのなかで産婦人科は20.2%減、小児科は16.5%減。一方、腎臓内科は5.0倍、乳腺外科は5.3倍、病理診断科は5.9倍になっています。本稿ではこの分化を確認します。
本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」統計表8(令和7年9月26日公表・各年10月1日現在)によります。診療科目は重複計上(1病院が複数の科を標榜)です。増減率は本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
減っている科
厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」統計表8(令和7年9月26日公表・各年10月1日現在)によれば、一般病院は平成20年の7,714から令和6年の7,003へ、16年間で711施設(9.2%)減りました。診療科目別(重複計上)では、次の科が病院全体を上回るペースで減っています。
| 診療科 | 平成20年 | 令和6年 | 16年間の増減 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 産婦人科 | 1,319 | 1,052 | △267 | △20.2% |
| 小児科 | 2,905 | 2,427 | △478 | △16.5% |
| 外科 | 4,978 | 4,293 | △685 | △13.8% |
| 眼科 | 2,498 | 2,307 | △191 | △7.6% |
| 肛門外科 | 1,186 | 1,102 | △84 | △7.1% |
| 耳鼻いんこう科 | 2,035 | 1,933 | △102 | △5.0% |
| 整形外科 | 5,085 | 4,838 | △247 | △4.9% |
| (参考)一般病院 計 | 7,714 | 7,003 | △711 | △9.2% |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」統計表8(令和7年9月26日公表・各年10月1日現在)より作成
最も減ったのは産婦人科です。病院全体の減少率9.2%に対して20.2%。2倍以上のペースで減っています。
ただし細かく見ると、産婦人科1,052が減る一方、「産科」は177から193へ、「婦人科」は743から889へ増えています。産婦人科という括りが分かれ、婦人科のみを標榜する病院が増えた形です。
小児科は2,905から2,427へ。一方で小児外科は330から417へ増えており、こちらも専門分化が進んでいます。
増えている科
対照的に、16年で数倍になった科があります。
| 診療科 | 平成20年 | 令和6年 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 病理診断科 | 168 | 988 | 5.9倍 |
| 乳腺外科 | 211 | 1,117 | 5.3倍 |
| 血液内科 | 153 | 803 | 5.2倍 |
| 腎臓内科 | 302 | 1,518 | 5.0倍 |
| 救急科 | 186 | 919 | 4.9倍 |
| 糖尿病内科(代謝内科) | 388 | 1,787 | 4.6倍 |
| 感染症内科 | 51 | 222 | 4.4倍 |
| 臨床検査科 | 93 | 267 | 2.9倍 |
| 消化器外科(胃腸外科) | 880 | 1,856 | 2.1倍 |
| 呼吸器外科 | 665 | 1,061 | 1.6倍 |
| 心臓血管外科 | 893 | 1,208 | 1.4倍 |
| リハビリテーション科 | 4,954 | 5,640 | 1.1倍 |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」統計表8(令和7年9月26日公表・各年10月1日現在)より作成
増えた科には共通点があります。いずれも、かつては「内科」「外科」に含まれていたものです。腎臓内科、糖尿病内科、血液内科は内科から、乳腺外科、消化器外科は外科から分かれました。
実際、内科は7,089から6,506へ、外科は4,978から4,293へ減っています。総合的な科が減り、専門の科が増える。これが16年間に起きたことです。
なおリハビリテーション科は5,640で、内科・整形外科に次いで標榜する病院が多い科になっています。
承継の場面で何を意味するか
この数字は、医療機関の承継を考えるうえで直接の意味を持ちます。
減っている科ほど、引き受け手を見つけるのが難しい。産婦人科や小児科が減っているのは、統計上の事実です。これらの科を標榜する医療機関を譲る場合、同じ科の医師を後継として確保できるかが最大の関門になります。
逆に言えば、減っている科ほど、残った医療機関の地域における位置づけは重くなります。近隣に同じ科がなくなれば、患者はそこへ集まります。分娩を扱う施設が地域から消えれば、その影響は直接住民に及びます。
増えている科については別の見方が要ります。専門分化した科は、設備と専門医が揃って初めて成り立ちます。腎臓内科であれば透析設備、乳腺外科であれば画像診断の体制。引き継ぐ側は、医師だけでなく設備と体制を合わせて評価します。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 標榜している科と、実際に診療している科。標榜は重複計上なので、看板と実態が違うことがあります
- 常勤医師の科別構成。非常勤に依存している科があると、承継後に維持できるかが問われます
- 減っている科か、増えている科か。後継医師を探す難易度が変わります
- 設備と診療体制の対応。専門科を標榜していれば、それに見合う設備があるかが確認されます
- 地域での位置づけ。近隣に同じ科がどれだけあるか。少なければ患者は集まりますが、同時に地域の医療を支える責任も重くなります
- 分娩の取扱い。産科では、分娩を扱うかどうかで必要な体制も責任もまったく変わります
病院全体の動きは「病院業界の動向」、診療所は「診療所・クリニック業界の動向」、有床診療所は「有床診療所の動向」に整理しています。