病院は減り続けています。厚生労働省の公表統計によれば、令和6年10月1日現在で8,060施設、前年より62施設の減少です。
ただし、減り方は一様ではありません。開設者別に見ると、個人立の病院だけが1年で14.0%減っています。本稿ではこの偏りを確認し、承継の観点で何が焦点になるかを整理します。
本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表)によります。施設数は令和6年10月1日現在、病床利用率と平均在院日数は令和6年の年間値です。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
病院8,060施設、診療所とは方向が違う
厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表)によれば、医療施設の内訳は次のとおりです。
| 施設の種類 | 令和5年 | 令和6年 | 増減数 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 医療施設 総数(活動中) | 179,834 | 179,645 | △189 | △0.1% |
| 病院 | 8,122 | 8,060 | △62 | △0.8% |
| 精神科病院 | 1,057 | 1,057 | ― | ― |
| 一般病院 | 7,065 | 7,003 | △62 | △0.9% |
| (再掲)療養病床を有する病院 | 3,403 | 3,338 | △65 | △1.9% |
| 一般診療所 | 104,894 | 105,207 | +313 | +0.3% |
| 有床 | 5,641 | 5,415 | △226 | △4.0% |
| 無床 | 99,253 | 99,792 | +539 | +0.5% |
| 歯科診療所 | 66,818 | 66,378 | △440 | △0.7% |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表)より作成
病院は減り、一般診療所は増えています。ただし一般診療所の増加は無床(+539)によるもので、有床診療所は226施設(4.0%)減っています。
入院のできる施設に絞れば、病院も有床診療所も減っている。とくに療養病床を有する一般診療所は431施設で、前年より75施設(14.8%)減りました。精神科病院だけが1,057施設で増減なしです。
個人立の病院が消えている
開設者別に見ると、減り方の偏りがはっきりします。
| 開設者 | 令和5年 | 令和6年 | 増減 | 構成割合 |
|---|---|---|---|---|
| 医療法人 | 5,658 | 5,626 | △32(△0.6%) | 69.8% |
| 公的医療機関 | 1,191 | 1,182 | △9(△0.8%) | 14.7% |
| 国 | 317 | 317 | ― | 3.9% |
| 社会保険関係団体 | 46 | 47 | +1(+2.2%) | 0.6% |
| 個人 | 107 | 92 | △15(△14.0%) | 1.1% |
| その他 | 803 | 796 | △7(△0.9%) | 9.9% |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表)より作成
個人立の病院は1年で14.0%減りました。病院全体の減少率0.8%の17倍のペースです。残りは92施設、病院全体のわずか1.1%にすぎません。
統計は理由までは示しません。ただ、個人立の病院は開設者個人と事業が一体であり、法人化されていないため、経営者が退けばそのまま廃止に直結しやすい構造にあります。
対照的に、一般診療所では医療法人が994施設増え、個人が489施設減っています。歯科診療所でも医療法人が376施設増、個人が855施設減。個人から医療法人へ、という流れは医療施設全体に共通しています。
病床利用率は上がり、在院日数は短くなった
同資料の病院報告によれば、令和6年の病床利用率と平均在院日数は次のとおりです。
| 病床の種類 | 病床利用率(令和6年) | 前年差 | 平均在院日数(令和6年) | 前年差 |
|---|---|---|---|---|
| 全病床 | 77.0% | +1.4pt | 25.6日 | △0.7日 |
| 一般病床 | 73.3% | +2.5pt | 15.5日 | △0.2日 |
| 療養病床 | 85.0% | +0.9pt | 117.4日 | △2.2日 |
| 精神病床 | 81.4% | △0.2pt | 255.0日 | △8.2日 |
| (参考)療養病床を有する診療所の療養病床 | 40.0% | △1.5pt | 96.2日 | △1.2日 |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表)より作成
利用率が上がり、在院日数が短くなっています。同じベッドを、より短い期間で、より高い稼働で回している形です。
この2つが同時に動くと、患者の出入りは増えます。収入は増える方向ですが、入退院の事務と受け入れの手間も増えます。
注目すべきは療養病床を有する診療所の利用率40.0%です。病院の療養病床85.0%と45ポイントの差があり、前年からさらに1.5ポイント下がっています。施設数が14.8%減っていることと合わせて読むと、この形態が縮んでいることが分かります。
承継のときに見られる点
病床規模で見ると、同資料によれば病院で最も多いのは「50〜99床」の1,966施設(24.4%)、次いで「100〜149床」1,393施設、「150〜199床」1,380施設です。200床未満が6,662施設で、病院全体の82.7%を占めます(本稿で算出)。病院といっても、多くは中小規模です。
評価の目は次のようなところに向きます。
- 法人格と持分の有無。医療法人が69.8%を占めます。持分の定めがある法人とない法人で、取り得る手順が根本から変わります
- 病床の種類と許可病床数。一般か療養か精神か。病床は地域医療構想に基づく調整の対象で、新たに増やすことは容易ではありません
- 病床利用率。全国平均は77.0%です。自院がどの水準にあるか
- 医師と看護職員の確保。人員配置は診療報酬の区分に直結します
- 建物の築年数と耐震。更新には大きな投資が要ります
- 併設施設。介護老人保健施設や介護医療院を併設していれば、一体で考えます
病床そのものが、この分野で最も引き継ぎにくく、最も価値のある資産です。新設が難しいため、既存の病床を引き継ぐことが実質的に唯一の手段になります。
介護側の動きは「介護老人保健施設・介護医療院業界の動向」に、診療所は「診療所・クリニック業界の動向」に整理しています。