診療所は増えています。ところが、入院できる診療所だけが減っています。
厚生労働省の公表統計によれば、令和6年10月1日現在で有床診療所は5,415施設(前年比226施設・4.0%減)、無床診療所は99,792施設(同539施設・0.5%増)。本稿ではこの分岐を確認します。
本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
無床は増え、有床は減っている
厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表)によれば、診療所の内訳は次のとおりです。
| 区分 | 令和5年 | 令和6年 | 増減数 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 一般診療所 計 | 104,894 | 105,207 | +313 | +0.3% |
| 有床 | 5,641 | 5,415 | △226 | △4.0% |
| (再掲)療養病床を有する | 506 | 431 | △75 | △14.8% |
| 無床 | 99,253 | 99,792 | +539 | +0.5% |
| (参考)病院 | 8,122 | 8,060 | △62 | △0.8% |
| (参考)歯科診療所 | 66,818 | 66,378 | △440 | △0.7% |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表)より作成
有床診療所の減少率4.0%は、病院の0.8%の5倍です。さらに療養病床を有する一般診療所は14.8%減と、突出した減り方をしています。
有床診療所は一般診療所全体の5.1%にすぎません(前年5.4%)。診療所の20軒に1軒しか入院できる床を持っていないのが現在の姿です。
病床規模から見える実態
同資料によれば、有床診療所の病床規模別では「10〜19床」が3,788施設で、有床診療所総数の70.0%を占めます。
医療法上、診療所の病床は19床以下と定められています。つまり制度上の上限いっぱいに近い規模が主流だということです。
病床の稼働も厳しい水準にあります。同資料の病院報告によれば、療養病床を有する診療所の病床利用率は40.0%で、前年の41.5%から1.5ポイント低下。病院の療養病床85.0%と比べて45ポイントの差があります。平均在院日数は96.2日です。
施設数が14.8%減り、残った施設の利用率も下がっている。この形態が縮んでいることは、2つの数字が同じ方向を指しています。
病院の病床規模と並べると、この形態の位置がはっきりします。同資料によれば、病院で最も多いのは「50〜99床」の1,966施設(24.4%)、次いで「100〜149床」1,393施設、「20〜49床」923施設です。
つまり19床以下の有床診療所と、20〜49床の小規模病院の間には、制度上の断絶があります。19床までは診療所、20床からは病院。同じ「小さな入院施設」でも、人員配置の基準も、行政上の扱いも変わります。
有床診療所が減っている一方、20〜49床の病院は919施設から923施設へ4施設増えています。減っているのは診療所側だけという点が、この分野の特徴です。
なぜ床を手放すのか
統計は理由までは示しません。ただし、有床診療所には構造上の負担があります。
- 24時間の体制。入院患者がいる以上、夜間も看護職員を置く必要があります。少人数の診療所にとって、この負担は大きい
- 建物と設備。病室、スタッフステーション、防火設備。無床であれば不要なものが必要になります
- 後継者。診療所の承継では、後を継ぐ医師が入院機能まで引き受けるかが問われます。無床にすれば負担は大きく下がります
開設者別に見ると、一般診療所全体では医療法人が994施設増、個人が489施設減という動きです。個人から医療法人へという流れは診療所でも進んでいます(歯科診療所でも医療法人376施設増、個人855施設減)。
なお公的医療機関の一般診療所は3,930から3,501へ、429施設(10.9%)減っています。公立の診療所の整理も進んでいます。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 病床を残すか、返上するか。これが最初の判断になります。床を残せば体制の負担が続き、返上すれば元に戻せません
- 病床の種類。一般病床か療養病床か。療養病床を持つ診療所は利用率40.0%という厳しい水準にあります
- 法人格。医療法人か個人か。個人立であれば、承継は事業譲渡または新規開設と廃止の組み合わせになります
- 夜間の看護体制。人員を確保できているか
- 建物の築年数。病室を持つ分、無床より更新の負担が重くなります
- 診療圏と患者数。外来と入院それぞれの推移
減っている形態は、残る側にとって希少になります。診療所の病床は新たに増やすことが容易ではないため、入院機能を求める譲り受け手にとっては、既存の有床診療所を引き継ぐことが現実的な手段になります。
病院は「病院業界の動向」、診療所全般は「診療所・クリニック業界の動向」に整理しています。