「通い・訪問・泊まり」を1つの事業所で提供する小規模多機能型居宅介護。そこに看護を加えたのが看護小規模多機能型居宅介護(看多機)です。

厚生労働省の公表統計によれば、小規模多機能は5,478事業所で減少傾向、看多機は1,074事業所で5年間に51.1%増。看護を持つかどうかで、明暗が分かれています。

本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

5年で片方は78減り、片方は363増えた

厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によれば、両サービスの推移は次のとおりです。

年(各年10月1日現在)小規模多機能型居宅介護複合型サービス(看護小規模多機能)
令和2年(2020)5,556711
令和3年(2021)5,614817
令和4年(2022)5,570901
令和5年(2023)5,523994
令和6年(2024)5,4781,074
5年間の増減△78(△1.4%)+363(+51.1%)

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

小規模多機能は令和3年の5,614をピークに、3年続けて減っています。介護予防小規模多機能型居宅介護も5,076から5,037へ、同じ方向に動いています。

看多機は5年とも増え続け、1.5倍になりました。地域密着型サービス7種のなかで、最も高い増加率です(次いで定期巡回・随時対応型訪問介護看護の31.1%増)。

いずれも「通い・訪問・泊まり」を組み合わせる点は同じです。違いは看護師による医療的なケアを提供できるかどうか。その一点で、5年間の結果が分かれました。

担い手の構成にも差がある

同資料によれば、開設(経営)主体の構成は次のとおりです。

小規模多機能看護小規模多機能
営利法人(会社)47.7%49.8%
社会福祉法人32.2%19.9%
医療法人10.8%21.0%
特定非営利活動法人(NPO)5.4%2.2%
協同組合2.6%3.1%
社団・財団法人0.8%3.7%

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

看多機は医療法人が21.0%と、小規模多機能の10.8%の約2倍です。看護職員を確保しやすい医療法人が参入しやすい構造がうかがえます。

ただし、どちらも営利法人が最多です。株式譲渡という一般的な形で経営権を移せる事業所が半数近くを占めます。

「まるごと引き受ける」事業の難しさ

この2つのサービスに共通するのは、1つの事業所で複数の機能を持つことです。

通いも、訪問も、泊まりも、同じ職員が同じ利用者に提供します。利用者にとっては、状態が変わっても事業所を変えずに済むという利点があります。

他方、事業者にとっては難しさがあります。

  • 登録定員が決まっている。通いや泊まりの利用が増えても、登録者数の上限があるため売上の天井が見えやすい
  • 報酬が月額包括。使われた分だけ収入が増える仕組みではありません。利用が集中すると、同じ収入で手間だけが増えます
  • 24時間の体制。泊まりと訪問に対応するため、夜間も人を置く必要があります
  • 市町村の指定。地域密着型なので商圏が行政区画で区切られます

小規模多機能が減っているのは、この難しさと無関係ではないと考えられます。ただし統計は理由までは示しません。

承継のときに見られる点

評価の目は次のようなところに向きます。

  • 登録者数と登録定員に対する充足率。月額包括報酬なので、登録が埋まっているかが収入を決めます
  • 看護職員の在籍。看多機であれば必須です。小規模多機能から看多機への転換を考える場合も、ここが前提になります
  • 夜間の人員配置。泊まりと訪問の体制を回せているか
  • 物件の権利。通い・泊まりのスペースが必要で、賃借が多い分野です
  • 市町村の指定状況と総量規制。その地域で新規指定が下りるか
  • 居宅介護支援事業所との関係。ただしこのサービスは自ら計画を作るため、外部のケアマネジャーとの関係は他サービスと異なります

看多機が伸びている一方で、小規模多機能は減っている。この差は、譲り受ける側がどちらを求めているかにも表れます。小規模多機能をお持ちで看護の体制が整えられるなら、その可能性も含めて評価される場面があります。

分野全体は「介護業界の動向」に、実務は「小規模多機能型居宅介護のM&A」に整理しています。

この数字の読み方。厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査は事業所・施設を単位に集計したものです。1つの法人が複数の事業所を運営していることがあるため、法人の数はこれより少なくなります。また調査日時点の値で、その後の開設・廃止は含みません。承継の検討で規模を見るときは、事業所の数ではなく、1つの法人がどの指定をいくつ持っているかをご確認ください。

よくあるご質問

A.厚生労働省の統計では、令和3年の5,614をピークに令和6年は5,478と、3年続けて減っています。5年間では78事業所(1.4%)の減少です。
A.統計は数を示すだけで理由は示しません。事実として、令和2年の711から令和6年の1,074へ51.1%増え、地域密着型サービス7種のなかで最も高い増加率です。開設主体では医療法人が21.0%と、小規模多機能の10.8%の約2倍を占めます。
A.制度上は別のサービスであり、改めて指定を受ける必要があります。看護職員の配置が要件になりますので、体制を整えられるかが前提です。市町村により取り扱いが異なりますので個別にご確認ください。
A.利用回数にかかわらず、登録者1人あたり月額で報酬が決まる仕組みです。利用が増えても収入は増えないため、登録定員の充足率が収益を左右します。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら