日本触媒は2024年11月12日、JSR株式会社から株式会社イーテックの全株式を取得することを公表しました。取得株式数は192,000株で、取得後の議決権所有割合は100.0%となります。
開示された事実
| 譲受(買い手) | 株式会社日本触媒(4114・東証プライム) |
|---|---|
| 譲渡対象 | 株式会社イーテック(合成ゴムラテックス、アクリルエマルジョンを主原料とする建築・土木用材料、産業資材用材料の製造・販売) |
| 所在地 | 三重県四日市市 |
| 手法 | 株式取得。取引実行に先立ち、対象会社が営むファイン事業を売り手の新設子会社へ承継させる吸収分割が予定されており、買い手は分割後の会社の全株式を取得する |
| 対価 | 取得予定価額7,200百万円(最終的な取得価額は株式譲渡契約に定める価格調整条項に基づく調整後の金額となる予定) |
| 日程 | 決議・契約締結 2024年11月12日/株式譲渡実行 2025年4月1日(予定)。実行は吸収分割に必要な手続の完了と独占禁止法に基づく当局の承認等を条件とする |
取得予定価額は7,200百万円です。開示資料は、最終的な取得価額は株式譲渡契約に定める価格調整条項に基づく価格調整を実施した金額となる予定であると注記しています(出典:株式会社日本触媒 2024年11月12日公表資料)。
対象会社は1963年10月19日設立、資本金168百万円で、公表時点ではJSRが100.0%を保有していました。売上高は13,670百万円(2022年3月期)、12,774百万円(2023年3月期)、13,305百万円(2024年3月期)、純資産は7,047百万円、7,479百万円、7,686百万円です(出典:株式会社日本触媒 2024年11月12日公表資料)。開示資料は、この数字には対象会社が営むファイン事業が含まれているが、買い手が取得するのは吸収分割実施後のエマルジョン事業を主体とした会社の全株式であると注記しています。
取引実行に先立ち、対象会社からファイン事業を切り離し、売り手の子会社である新設会社に権利義務を承継させる吸収分割の実施が予定されています。買い手は、この吸収分割に必要な手続の完了と、独占禁止法に基づく当局の承認等を条件として取引を実行するとしています。
取得の理由として買い手は、コンストラクションケミカルズ市場が人口増加と都市化を背景に世界的な成長が見込まれると述べ、対象会社のエマルジョン重合技術やコンパウンド技術により製品ポートフォリオの強化と製品提案力の強化が可能になると判断したとしています。株式譲渡実行日は2025年4月1日を予定しています(出典:株式会社日本触媒 2024年11月12日公表資料)。
中小企業の経営者は、どう読むか
開示されている過去三期の数字と、実際に買う対象が違います。数字には切り離される事業が含まれていて、買い手が取得するのは分割後の会社です。注記でそう書かれています。売上や利益を見るときは、それが何の範囲の数字なのかを先に確かめる必要があります。
ここでも、渡す前に事業を分けるという段取りが取られています。買い手が欲しい部分だけを残し、残りは元の親会社の側に移す形です。会社の中に複数の事業がある場合、全部をまとめて渡すか、分けるかは選べます。
取得価額が「予定」と書かれ、最終的には価格調整条項に基づいて決まると注記されています。契約の時点と実行の時点が離れていると、その間に会社の中身が動きます。動いた分をどう精算するかを決めておくのが価格調整の条項です。金額が一度で確定しない取引は珍しくありません。
契約から実行まで五か月近くあります。事業を切り離す手続と、独占禁止法に基づく承認が条件になっているためです。前提条件が多いほど、実行までの期間は長くなります。その間に何をしてよくて何をしてはいけないかも、契約で決まります。
売り手は上場企業で、買い手も上場企業です。グループの中での位置づけが変わった事業が、その分野を伸ばしたい会社へ移っています。会社を手放す理由は、後継者の不在だけではありません。