債務が重く、そのままでは引き継ぎ手が見つからない。しかし事業そのものには収益力があり、従業員も取引先も残っている。こうした場合に検討されるのが第二会社方式です。採算の取れる事業だけを切り出して残し、債務は旧会社に残して整理する。再生の局面で用いられる手法を整理します。

どういう仕組みか

第二会社方式は、収益力のある事業を新しい会社(第二会社)に移し、過大な債務を旧会社に残して整理する手法です。

事業を移す方法には、会社分割を使う形と、事業譲渡を使う形があります。移した先の新会社には、事業に必要な資産と、事業を続けられる範囲の債務だけを持たせます。旧会社は、残った資産を換価して債務の返済に充て、特別清算や破産といった手続きで整理します。

結果として、事業と雇用は新会社で続き、返しきれない債務は旧会社とともに整理される。「事業を残し、債務を断つ」というのが、この手法の核心です。

誰が新会社の株主になるか

新会社の株主をどうするかで、性格が変わります。

スポンサーとなる企業が新会社の株式を引き受ける場合、実質的には事業のM&Aです。買い手が事業を引き継ぎ、対価が旧会社の債務返済に充てられます。

旧経営者やその親族が新会社の株主になる形もありますが、この場合は債権者から厳しく見られます。債務だけを切り捨てて事業は手元に残す、という構図に見えるためです。金融機関の同意を得るには、経営者が私財を提供する、経営から退くといった条件が求められることが少なくありません。

どちらの形を取るにせよ、債権者の納得が得られる設計であることが大前提になります。

金融機関の同意が出発点

第二会社方式は、債権者、とりわけ金融機関の同意なしには成立しません。同意を得るために示す必要があるのは、次の三点です。

第一に、このまま続けた場合と比べて、債権者の回収額が増えること。清算した場合の配当見込みより、第二会社方式のほうが回収が多いと示せなければ、同意する理由がありません。第二に、新会社が事業を継続できること。資金繰り、人員、取引の継続見込み。第三に、経営責任の取り方

中小企業活性化協議会などの公的な枠組みを使って進めることもあります。いずれにしても、弁護士・公認会計士・税理士の関与が不可欠な手続きです。

会社分割と事業譲渡のどちらを使うか

事業を移す方法として、会社分割と事業譲渡のいずれかを選びます。

会社分割は包括承継のため、契約や労働契約が個別の同意なしに移ります。手続きの負担は軽くなりますが、債権者保護手続が必要で、詐害的な会社分割と見られないよう慎重な設計が要ります。

事業譲渡は、移す資産と契約を一つずつ特定するため、範囲を明確にできます。その代わり、契約は相手方の承諾、労働契約は本人の同意が必要で、手続きの量が増えます。

実務では、債権者との関係や許認可の扱いを見ながら選びます。会社分割事業譲渡の解説も併せてご覧ください。

許認可と従業員をどう移すか

許認可は、第二会社方式でもっとも注意を要する部分です。事業譲渡では原則として引き継げず、会社分割でも業法によって扱いが異なります。新会社が許認可を取得できるまで事業を止められない業種では、日程の組み方が決定的に重要になります。

従業員については、会社分割であれば労働契約承継法に基づく通知・協議の手続きを踏みます。事業譲渡であれば個別同意です。いずれにしても、雇用が継続することを早い段階で伝えられるかが、現場の動揺を抑えるうえで大きく効きます。

再生の局面では、人が先に辞めてしまうと事業価値そのものが失われます。従業員への説明は、法的手続きの都合だけで決めないほうがよい部分です。

税務上の論点

第二会社方式には、税務上の論点がいくつも伴います。旧会社での債務免除益と繰越欠損金の関係、資産の譲渡損益、新会社における資産の取得価額、消費税の扱い。会社分割を使う場合は、適格・非適格の判定も加わります。

とくに債務免除益は、金額が大きくなりやすく、繰越欠損金で吸収しきれないと課税が生じます。事業再生の場面では、一定の要件のもとで期限切れ欠損金を使える取り扱いもありますが、要件の判断は専門的です。

スキームを決める前に、税理士に税務上の影響を試算してもらうこと。ここを飛ばして進めると、最後に想定外の税額が出てきます。

使える場面と、その限界

第二会社方式が向くのは、事業に収益力があるのに、過去の投資や環境の変化でつくった債務が重すぎるという場合です。事業そのものが赤字で、再生の見込みが立たない会社では、この手法を使っても解決しません。

また、手続きには時間と費用がかかります。弁護士・会計士への報酬、登記費用、公告費用。資金が尽きる寸前では、そもそも着手できません。

「まだ余力があるうちに相談する」ことが、選択肢を残す唯一の方法です。単純な株式譲渡や事業譲渡で解決する案件も多くあります。どの方法が現実的かは、数字を見せていただかないと判断できません。

※ 本稿は一般的な考え方をご紹介するものであり、個別の法務・税務アドバイスではありません。実際の手続や課税関係は、会社の状況や契約の定めによって異なります。弁護士・税理士等の専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.債権者の同意を得たうえで行う法的な整理です。清算した場合よりも債権者の回収額が増えることを示し、納得を得たうえで進めます。同意が得られない設計は成立しません。経営者に対して私財の提供や経営からの退任が求められることもあります。
A.形式的には可能ですが、債権者から厳しく見られます。債務だけを切り離して事業は手元に残す構図に見えるためです。スポンサーに引き継いでもらう形のほうが、同意は得やすくなります。
A.弁護士・公認会計士・税理士への報酬、登記費用、公告費用などが必要です。金額は案件の規模と複雑さで大きく変わります。資金が尽きる寸前では着手そのものが難しくなるため、余力のあるうちのご相談をお勧めします。
A.直近の決算書、試算表、資金繰り表、借入金の一覧をご用意いただければ、現実的な選択肢を整理できます。第二会社方式まで必要なのか、通常の譲渡で解決するのかは、数字を拝見しないと判断できません。

Free Consultation

まだ余力があるうちに、ご相談ください。

どの方法が現実的かは、数字を拝見して判断します。
相談料・着手金・月額報酬はいただきません。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。秘密は厳守いたします。

無料相談を申し込む

Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら