中小企業でも、法人がひとつとは限りません。本業の会社と不動産を持つ会社、営業会社と管理会社、創業以来の事情で残っている別会社。これらをまとめて譲るとき、手数料の基準額をどう数えるかで総額が大きく変わります。とくに内部の貸し借りが二重に乗ってしまう問題と、最低手数料が何回適用されるのかは、事前に確認しておかないと後から動かせません。本稿では、その数え方を整理します。
中小企業でもグループになっていることは珍しくない
複数の法人を持っている理由は、たいてい経営上の事情から生まれたものです。代表的なものを挙げます。
- 不動産保有会社——工場や社屋を別法人で持ち、本業の会社に賃貸している
- 営業会社と製造会社——機能ごとに法人を分け、取引や労務の管理を分離している
- 地域ごとの別会社——許認可や取引先の関係で、拠点ごとに法人を立てた
- 資産管理会社——オーナー個人の資産管理のために設立した
譲渡にあたっては、これらを全部渡すのか、一部を手元に残すのかをまず決めます。買い手の関心は本業にあることが多く、不動産保有会社は残したいという売り手も少なくありません。この切り分けが決まらないと、基準額も決まりません。不動産の扱いについては「不動産を持つ会社の売却」もあわせてご覧ください。
基準額の数え方|三つの整理
移動総資産レーマン方式の基準額は株式価値(譲渡対価)+負債総額です。複数の法人が対象になると、この「負債総額」の数え方が問題になります。
| 整理の仕方 | 内容 | 金額への影響 |
|---|---|---|
| 単純合算 | 各社の負債の部の合計を足す | 内部の貸し借りが二重に乗り、基準額が実態より膨らむ |
| 内部取引を相殺した合算 | グループ内の貸付・売掛・未払を相殺してから合計する | 外部に対する債務だけが残り、実態に近い |
| 会社ごとに計算して合計 | 各社の基準額でレーマン計算し、合計する | 料率の低い段階に乗りにくく、最低手数料が複数回かかり得る |
一つ目の問題を具体的に見ます。A社がB社に1億円を貸している場合、A社の貸借対照表には貸付金1億円(資産)、B社には借入金1億円(負債)が立ちます。単純合算すると、この1億円がそのまま基準額に加わります。しかし外部への債務が増えたわけではありません。グループとして見れば内部の振替にすぎず、譲渡の実態を表していない金額です。
三つ目も見落とされやすい論点です。会社ごとに計算すると、レーマン方式の逓減が効きません。基準額10億円を一つとして計算すれば4,500万円ですが、5億円の会社二つとして計算すると2,500万円×2で5,000万円になります。加えて最低手数料が各社に適用される契約であれば、規模の小さい会社の分だけ総額が押し上げられます。
ですから確認すべきは、「一案件として計算するのか、法人の数だけ計算するのか」という一点です。基準額の中身そのものは「手数料の基準額には何が含まれるか」で詳しく扱っています。
一部の会社だけを残す場合
不動産保有会社を手元に残し、本業の会社だけを譲るという形はよくあります。このとき生じる論点を整理します。
| 論点 | 確認すること |
|---|---|
| 賃貸借の継続 | 譲渡後も本業の会社が同じ建物を使えるか。賃料水準は妥当か。契約期間は十分か |
| 内部取引の条件 | 賃料や管理料が実勢とかけ離れていないか。買い手は必ず確認する |
| 保証・担保 | グループ間で連帯保証や担保提供がある場合、譲渡時に整理できるか |
| 基準額 | 残す会社の負債は基準額に入らないか。どの時点の数字で切るか |
内部取引の条件は、手数料ではなく価格に影響します。本業の会社が相場より安い賃料で建物を使っていた場合、譲渡後に賃料を適正化すれば利益は減りますから、買い手はその前提で評価します。逆に高すぎる賃料を払っていたなら、その分は評価にプラスに働きます。同族間の取引がどう見られるかは「関係会社との取引はどう見られるか」で整理しています。
したがって、残す会社と譲る会社の間の契約条件を先に整えておくことが、価格の交渉を円滑にします。これは手数料を下げるための操作ではなく、経営として説明が付く状態にしておくという話です。
法人が増えることで実際に増える費用
仲介手数料以外にも、対象法人が増えれば手間と費用は増えます。あらかじめ見込んでおくべきものを挙げます。
- デューデリジェンスの範囲——財務・法務ともに対象が増える。買い手が負担する場合でも、資料の準備は売り手の作業になる
- 株主名簿・株券の整理——会社ごとに株式の状態を確認する。名義株や所在不明株主が見つかることもある
- 登記と契約の名義変更——役員変更登記、賃貸借や取引基本契約の名義、金融機関への届出
- 税務の検討——グループ内の取引や再編が絡む場合、税務上の扱いの確認が必要になる
- 社内の時間——資料の準備は法人の数だけ増える。経理担当者の負荷を見込んでおく
このうち税務の扱いについては、顧問税理士に早い段階で相談してください。グループ内で資産を移す、会社を合併する、事業を切り出すといった動きは、税務上の影響が大きく、後から取り消せません。準備段階の費用の全体像は「売却の準備段階でかかる費用」で扱っています。
契約前に確認しておくこと
複数の法人が対象になる見込みであれば、仲介契約の前に次の点を確認してください。
- 一案件として計算するか——法人ごとに計算して合計する契約になっていないか
- 内部債権債務の相殺——グループ内の貸し借りを基準額から除くか
- 最低手数料の回数——案件に一回か、法人ごとか
- 残す会社の扱い——対象外の法人の負債は基準額に入らないか
- 途中で対象が変わった場合——交渉の過程で対象法人が増減したとき、どう再計算するか
最後の項目はとくに重要です。「本業の会社だけ」で始めた交渉が、買い手の希望で不動産保有会社も含む形に変わることは実際にあります。そのときに基準額をどう数え直すかが決まっていないと、請求の段階で認識が食い違います。
当社は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額・最低2,000万円/税別)を採用しており、相談料・着手金・月額報酬はいただきません。複数の法人が対象となる場合は、ご契約前に、どの法人を対象とし、内部の貸し借りをどう扱い、基準額がいくらになるかを書面でお示しします。中間金は成功報酬額の10%で、成功報酬から全額を差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。
よくあるご質問
Free Consultation
どの会社を譲り、どの会社を残すか。試算しながら決められます。
対象法人の組み合わせごとに、基準額と手数料の見込みを試算してお伝えします。ご相談の段階で費用は発生しません。
フォームは24時間受け付けており、2営業日以内にご返信します。メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。