複数のM&A仲介会社から資料を取り寄せると、どこも似たような料率表が載っています。しかし実際に試算してもらうと、金額に大きな開きが出ることがあります。なぜそうなるのか——それは、手数料の総額を決める変数が、料率以外に四つあるからです。本稿では、その五つの変数を整理し、同じ土俵で比べるための確認方法をご説明します。手数料の基本的な用語とレーマン方式の計算方法は「M&A仲介手数料の相場とレーマン方式の計算方法」をご覧ください。
料率表を見比べても、比較にはならない
M&A仲介の成功報酬は、多くの会社が「レーマン方式」で算定しています。段階的に料率が下がる計算方法で、料率表そのものは各社で似通っていることが少なくありません。
それでも総額に差が出るのは、次の五つの変数が会社ごとに異なるためです。
- 報酬の種類——着手金・月額報酬・中間金があるか、成約時だけか
- レーマン方式の基準額——料率を「何に」掛けるのか
- 料率表——各金額帯に適用する率
- 最低手数料——計算額がこれを下回る場合に適用される金額
- 契約条項——契約期間、専任の有無、テール条項、中途解約時の扱い
このうち、金額への影響が最も大きいのは基準額と最低手数料です。料率が同じでも、この二つが違えば結果はまったく変わります。以下、順に見ていきます。
変数1|報酬の種類——いつ、いくら払うのか
M&A仲介の報酬は、支払うタイミングによって名称が分かれます。
| 名称 | 支払う時期 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 相談料 | 正式契約の前 | 無料か有料か |
| 着手金 | アドバイザリー契約の締結時 | 金額。不成立でも返金されないのが一般的 |
| 月額報酬 | 契約期間中、毎月 | 金額と、期間が延びた場合の総額 |
| 中間金 | 基本合意の締結時など | 金額の決め方、成功報酬から差し引かれるか、不成立時に返金されるか |
| 成功報酬 | クロージング時 | 算定方法(基準額・料率・最低額) |
これらの有無と金額は会社によって異なります。比較の際に気をつけたいのは、成約前に支払う費用は、成約しなくても戻らないことが多いという点です。成功報酬の料率がわずかに低くても、着手金や月額報酬が積み上がれば、総額は逆転し得ます。とくに検討が長引いた場合、月額報酬の負担は無視できません。
また、中間金については「成功報酬から差し引かれるか」を必ず確認してください。差し引かれるのであれば前払いの性質ですが、そうでなければ純粋な追加負担になります。中間金の位置づけについては「M&Aの中間金とは」で詳しく扱っています。
当社の場合は、相談料・着手金・月額報酬を0円とする成功報酬型です。中間金は基本合意の締結時に成功報酬額の10%を頂戴し、成約時の成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。ただし、基本合意の後に不成立となった場合でも中間金は返金されません。この点は契約前に必ずご説明しています。
変数2|レーマン方式の基準額——料率を何に掛けるのか
比較で最も見落とされやすいのが、この基準額です。同じ料率表でも、何に掛けるかで金額は大きく変わります。代表的な基準は次の三つです。
- 株式価値(譲渡対価)ベース——オーナーが受け取る株式の対価だけを基準とする
- 移動総資産ベース——株式の譲渡対価に、譲渡企業の負債総額を加えた金額を基準とする
- オーナー受取額ベース——役員退職慰労金なども含めた、オーナーが受け取る総額を基準とする
負債の大きい会社ほど、移動総資産ベースの基準額は大きくなります。したがって、料率表だけを見比べて「同じ」と判断するのは誤りです。三つの基準の違いと試算例は「レーマン方式の3つの基準」で解説しています。
比較の際には、次の点を各社に確認してください。
- 基準額はどの方式か
- 移動総資産ベースの場合、「負債」に何が含まれるのか(借入金だけか、買掛金・未払金を含む負債総額か)
- 役員退職慰労金や、退職金として受け取る部分は基準額に含まれるのか
- 自社の直近の決算に当てはめると、基準額はいくらになるのか
当社の成功報酬は、移動総資産レーマン方式で算定しています。基準額は株式価値(譲渡対価)+負債総額です。この考え方は、ご契約の前に必ず書面でご説明しています。
変数3・4|料率表と最低手数料
料率表は、基準額を金額帯に区切り、帯ごとに異なる率を掛けて合算する形が一般的です。当社の料率は次のとおりです。
| 基準額の金額帯 | 料率 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超〜100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
注意したいのは、基準額全体に一律の率を掛けるのではないという点です。基準額が7億円なら「7億円×4%」ではなく、「5億円までに5%、残る2億円に4%」を適用して合算します。
そしてもうひとつ、最低手数料の確認が欠かせません。多くの仲介会社は、レーマン方式による計算額がいくらであっても、これを下回らない金額を定めています。金額の水準は会社によって異なります。当社の最低手数料は2,000万円(税別)です。
中小企業のM&Aでは、レーマン方式の計算額より最低手数料のほうが大きくなることが少なくありません。その場合、実際に支払う金額を決めているのは料率ではなく最低手数料ということになります。料率表の比較に時間をかけるより、まず最低手数料を確認するほうが実務的です。最低手数料が設けられる理由は「最低手数料はなぜあるのか|小規模案件のコスト構造」で解説しています。
変数5|契約条項——期間・専任・テール
金額そのものではありませんが、支払額に影響し得る契約条項があります。
- 契約期間——期間はどれくらいか。自動更新の定めがあるか
- 専任条項——他社との併行依頼が禁止されているか。禁止の範囲はどこまでか
- 中途解約——解約できるか。できる場合、違約金や既払金の扱いはどうなるか
- テール条項——契約終了後の一定期間内に、その仲介会社が紹介した相手と成約した場合、報酬が発生する定め。期間と対象範囲を確認する
- 直接交渉の禁止——仲介会社を通さない交渉が禁じられている範囲
- 費用の実費——出張費、資料作成費、外部専門家への報酬が別途請求されるか
とくにテール条項は、契約が終わっても影響が残る条項です。期間が長すぎないか、対象となる相手先が特定されているか(紹介したすべての先ではなく、実際に接触した先に限られているか)を確認してください。
中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)でも、契約内容の明確な説明が求められています。説明を曖昧にしたまま契約を急がせる相手には、慎重になったほうがよいでしょう。
比較の手順|同じ前提で総額を出してもらう
ここまでの内容を、実際の比較手順として整理します。
- 手順1|前提を揃える——想定する譲渡価格の水準、直近決算の負債総額、スキーム(株式譲渡か事業譲渡か)を、各社に同じ内容で伝える
- 手順2|総額の試算を求める——成約までに支払う金額の合計(着手金+月額報酬×想定月数+中間金+成功報酬)を、書面で出してもらう
- 手順3|税の扱いを揃える——税別か税込かを確認する。消費税は標準税率10%です
- 手順4|不成立の場合を確認する——成約に至らなかった場合、支払済みの費用がいくら残るのかを確認する
- 手順5|契約書の条項を確認する——期間、専任、テール、解約の各条項を、契約前に読む
手順4は、とくに重要です。M&Aは必ず成約するとは限りません。不成立に終わった場合に手元からいくら出ていくのか——これは、成約時の総額と同じくらい確認しておく価値のある数字です。
そして最後に、金額だけで決めないことをお勧めします。譲渡価格や成約条件の差は、手数料の差より大きくなることがあります。担当者が不利益な情報も伝えてくれるか、質問に具体的に答えるか、決断を急がせないか——こうした点も、あわせてご覧になってください。
当社は、ご契約の前に手数料総額の目安を必ず書面でご提示しています。他社との比較検討の材料としてもご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。詳細は料金体系のページにも掲載しています。
よくあるご質問
Free Consultation
手数料の総額を、書面でご提示します。
ご契約の前に、手数料総額の目安を必ず書面でお示しします。他社との比較検討の材料としても、お気軽にご相談ください。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。