会社の売却を検討し始めた経営者様から、最初にいただくご質問のひとつが「仲介会社に支払う手数料は、結局いくらかかるのか」というものです。M&A仲介の手数料体系は会社ごとに異なるうえ、「着手金」「中間金」「レーマン方式」といった耳慣れない用語が並ぶため、比較が難しいと感じられるのも無理はありません。本稿では、手数料の種類と用語をひとつずつ整理し、成功報酬の標準的な計算方法である「レーマン方式」の仕組みと計算例、そして見落とされがちな「算定基準の違い」まで、順を追ってご説明します。
M&A仲介手数料の全体像|5つの報酬用語を整理する
M&A仲介の手数料は、支払うタイミングによっていくつかの名称に分かれています。まずは代表的な5つの用語を整理しましょう。
相談料
正式な契約前の相談に対する費用です。現在は無料としている仲介会社が多数派です。
着手金
アドバイザリー契約(仲介契約)の締結時に支払う費用です。企業概要書の作成や相手先探索の初期活動に充てられるとされ、一般に、成約に至らなかった場合でも返金されません。金額は仲介会社により異なりますが、数十万円から数百万円程度の設定が見られます。
中間金
買い手候補との基本合意書の締結時など、プロセスの中間段階で支払う費用です。成功報酬の一部前払い(たとえば成功報酬の10〜20%程度)として設定される例が多く、基本合意後に破談となった場合でも返金されない契約も見られます。
月額報酬(リテイナーフィー)
契約期間中、毎月定額で支払う顧問料型の報酬です。検討期間が長引くほど負担が積み上がる性質があります。
成功報酬
M&Aが成約(クロージング)した時点で初めて発生する報酬です。多くの仲介会社が、取引金額に段階的な料率を適用する「レーマン方式」で算定しています。着手金や中間金を設けず、この成功報酬のみを受け取る体系を「成功報酬型」と呼びます。
つまり手数料の総額は、「成約前に支払う費用(着手金・中間金・月額報酬)」と「成約時に支払う成功報酬」の合計で決まります。比較の際は、成功報酬の料率だけでなく、成約前の費用の有無まで含めて見ることが大切です。
レーマン方式とは|段階的に料率が下がる計算方法
レーマン方式とは、取引金額を金額帯ごとに区切り、金額帯が大きくなるほど低い料率を適用して成功報酬を計算する方法です。所得税の累進課税と同じように、「基準額のうち5億円以下の部分には5%、5億円を超え10億円以下の部分には4%」という形で、部分ごとに料率を掛けて合算します。
M&A仲介業界で広く用いられている一般的な料率表は、次のとおりです。
| 基準額の金額帯 | 料率 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超〜100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
注意したいのは、「基準額全体に一律の料率を掛けるのではない」という点です。たとえば基準額が7億円の場合、「7億円×4%」ではなく、「5億円までの部分に5%、残りの2億円の部分に4%」を適用します。また、多くの仲介会社は、この計算結果にかかわらず一定額を下回らない「最低報酬額」を設定しています。小規模な案件では、レーマン方式の計算額よりも最低報酬額のほうが大きくなることがあるため、必ず確認しておきたいポイントです。
レーマン方式の計算例|一般的な料率表で試算する
上の料率表を使って、実際に計算してみましょう。
例1:基準額3億円の場合
- 3億円 × 5% = 1,500万円
- 成功報酬:1,500万円(税別)
この例のように算出額が小さくなる場合、多くの仲介会社では最低報酬額のほうが適用されます。当社の最低報酬額は2,000万円(税別)ですので、この計算例に当社の基準を当てはめると成功報酬は2,000万円となります。
例2:基準額7億円の場合
- 5億円以下の部分:5億円 × 5% = 2,500万円
- 5億円超〜7億円の部分:2億円 × 4% = 800万円
- 成功報酬:2,500万円+800万円 = 3,300万円(税別)
例3:基準額15億円の場合
- 5億円以下の部分:5億円 × 5% = 2,500万円
- 5億円超〜10億円の部分:5億円 × 4% = 2,000万円
- 10億円超〜15億円の部分:5億円 × 3% = 1,500万円
- 成功報酬:合計 6,000万円(税別)
このように、取引金額が大きくなるほど全体に対する実効料率は下がっていきます。規模の大きな取引ほど1件あたりの手数料額は増える一方、料率としては合理的に逓減する仕組みです。
「株価ベース」と「移動総資産ベース」の違いに注意
レーマン方式で最も見落とされやすいのが、「料率を何に掛けるのか」という基準額の問題です。同じ料率表でも、基準額の取り方によって手数料の総額は大きく変わります。代表的な基準は次の二つです。
株価(譲渡価格)ベース
株式の譲渡対価、すなわちオーナー様が実際に受け取る金額を基準とする方式です。負債は基準額に含まれません。
移動総資産ベース
株式の譲渡対価に、譲渡企業の負債(借入金等)を加えた金額を基準とする方式です。負債を含む分だけ基準額が大きくなり、同じ料率でも手数料は高くなります。
具体例で比べてみましょう。株式の譲渡価格が3億円、借入金が4億円の会社を想定します。
- 株価ベース:基準額3億円 × 5% = 成功報酬 1,500万円
- 移動総資産ベース:基準額7億円(3億円+4億円)→ 5億円×5%+2億円×4% = 成功報酬 3,300万円
受け取る対価は同じ3億円でも、手数料には2倍以上の差が生じ得るのです。借入れの多い会社ほどこの差は広がります。仲介会社を比較する際は、料率表の数字だけでなく、「基準額は株価か、移動総資産か」を必ず確認してください。なお、当社の成功報酬は移動総資産(株式価値+負債総額)を基準として算定しており、だからこそ、ご契約前に基準額の考え方と手数料総額の目安を書面でご提示しています。詳細は料金体系のページをご覧ください。
報酬基準には、このほかに「オーナー受取額ベース」を採用する会社もあります。3つの基準の違いと試算例は「レーマン方式の3つの基準|株式価値・移動総資産・オーナー受取額の違い」の記事で詳しく解説しています。
手数料を比較するときのチェックポイント
ここまでの内容を踏まえると、仲介会社の手数料を比較する際に確認すべきポイントは、次のように整理できます。
- 着手金・中間金・月額報酬の有無と金額(成約しなかった場合に戻るのか)
- 成功報酬の料率表と、レーマン方式の基準額(株価ベースか移動総資産ベースか)
- 最低報酬額の有無と金額
- 消費税の扱い(税別表示か税込表示か)
- 手数料の総額目安を、契約前に書面で提示してもらえるか
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」でも、仲介者・アドバイザーが手数料の算定基準や支払時期を契約前に明確に説明することが求められています。説明を曖昧にしたまま契約を急ぐような相手には、慎重になったほうがよいでしょう。
なお、提示された手数料に交渉の余地があるのかどうかが気になる方は、「M&A仲介手数料は交渉できるのか」の記事もあわせてご覧ください。
また、手数料はあくまで「支払う側」の話です。最終的にお手元に残る金額は、譲渡価格から手数料と税金を差し引いて考える必要があります。譲渡価格の目安については「企業価値評価(バリュエーション)の3つの方法」を、税金については「会社売却にかかる税金|株式譲渡益課税と手取り額の考え方」を、あわせてご参照ください。
まとめ|「総額でいくらか」を契約前に確かめる
M&A仲介の手数料は、①成約前に支払う費用(着手金・中間金・月額報酬)の有無、②レーマン方式の料率、③基準額の取り方(株価ベースか移動総資産ベースか)、④最低報酬額——この四つの組み合わせで決まります。比較すべきは個々の数字ではなく、「自社の場合、成約までに総額いくら支払うことになるのか」です。
当社プラチナパートナーズは、譲渡企業様の手数料を相談料・着手金・月額報酬0円とし、成功報酬は移動総資産(株式価値+負債総額)を基準とするレーマン方式で算定しています。ご契約の前には、手数料総額の目安を必ず書面でご提示しますので、他社との比較検討の材料としてもお気軽にご相談ください。
この記事を動画で見る(1分11秒)
M&A仲介の成功報酬は「レーマン方式」で計算されますが、料率を何に掛けるか(株価ベースか移動総資産ベースか)で総額が2倍以上変わります。株式会社プラチナパートナーズは移動総資産レーマン方式・最低報酬2,000万円(税別)です。着手金・中間金・月額報酬・最低報酬額を含め「総額でいくらか」を契約前に書面で確かめましょう。詳しくはコラムへ。
動画の書き起こしを読む
仲介手数料は、5%です。そう聞いて安心した方、ちょっと待ってください。同じ5%でも、総額が2倍以上変わることがあります。
成功報酬の多くは、レーマン方式。取引金額を、金額帯ごとに区切って、5億円以下は5%、5億を超える部分は4%、と、段階的に掛けて合算します。
違いは、何に掛けるか。譲渡価格3億円、借入4億円の会社。株価ベースなら、3億に掛けて、1,500万円。移動総資産ベースなら、7億に掛けて、3,300万円。同じ会社でも、基準額の取り方で総額は変わります。
比べるのは、料率の数字ではなく、自社の場合、総額でいくらか。着手金の有無、基準額の取り方、最低報酬額。契約前に、書面で出してもらいましょう。
当社は移動総資産レーマン方式で、最低報酬は2,000万円です。相談料・着手金・月額報酬は0円。総額を、契約前に書面でお出しします。
※ 動画は一般的な例で説明しています。当社の手数料は、相談料・着手金・月額報酬0円、基本合意の締結時に成功報酬額の10%を中間金として申し受け(成約時の成功報酬から全額を差し引いてご請求しますが、基本合意後に不成立となった場合の返金はいたしません)、成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)・最低2,000万円(税別)です。詳しくは料金体系をご覧ください。
この記事の内容について、無料でご相談いただけます。 相談料・着手金・月額報酬は0円。売ると決めていない段階のご相談も承っています。