化粧品や健康食品の製造・OEMを手がける会社には、外からは見えにくい資産が積み上がっています。許可と、それを維持してきた品質管理の体制、そして処方と製造のノウハウです。同じ設備を買っても、同じものはすぐにはつくれません。

一方で、この業種は法令上の要件が細かく、譲渡の設計を誤ると許可の扱いが問題になります。本稿では、化粧品・健康食品の製造業のM&Aで何が見られ、どう準備すればよいのかを整理します。

この業種に買い手が向く理由

帝国データバンクの2025年調査では後継者不在率は50.1%です。レコフデータの集計によれば2025年のM&A件数は5,000件を超え、2年連続で過去最多を更新しました。化粧品・健康食品の製造分野に買い手が向く理由は三つあります。

許可と製造の実績は時間で買えない

製造の許可を取得し、体制を整え、顧客の監査に応えてきた実績は、資本を投じてもすぐには再現できません。すでに動いている工場であること自体が価値です。

ブランド側が製造を取り込みたい

自社ブランドを持つ会社が、供給の安定と原価のコントロールのために製造機能を内製化する。この動きは継続的に見られます。

製造側が販路を得たい

逆に、OEM中心の会社がブランドや販路を取り込み、収益性を高めるという方向もあります。食品製造に共通する論点は「食品製造業のM&A|営業許可・衛生管理・ブランドの承継」もご参照ください。

許可|まず何を持っているかを整理する

化粧品の場合、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、製造販売を行うには製造販売業の許可、製造を行うには製造業の許可が必要とされ、製造業の許可には区分があります。健康食品の場合は、製造する食品の種類に応じて食品衛生法に基づく営業許可または届出の対象となります。

必要な許可の種類・区分、責任者(総括製造販売責任者、責任技術者など)の要件、譲渡に伴う手続きの要否は、取り扱う製品と事業の実態によって異なります。必ず所管の都道府県等の窓口および弁護士・行政書士等の専門家にご確認ください。

株式譲渡と事業譲渡で扱いが変わる

株式譲渡では法人格が変わらないため、許可は原則としてそのまま維持されます。一方、事業譲渡や会社分割で事業だけを移す場合、許可を新たに取得し直す必要が生じることがあり、その期間中に製造が止まるリスクも検討しなければなりません。スキームの選択は、許可の扱いを最初に確認したうえで決めるのが実務です。

責任者の要件

許可の維持には、要件を満たす責任者の設置が求められます。社長本人や特定の社員がその役割を担っている場合、譲渡後に誰が要件を満たすのかを早い段階で確認しておく必要があります。許可が評価にどう反映されるかは「許認可の価値|参入障壁がどう評価されるか」をご覧ください。

品質管理と設備|監査に耐えてきた実績を示す

OEMを受託している会社では、顧客による工場監査を受けることが日常的です。監査に耐えてきた記録は、そのまま品質体制の証明になります。

整理する項目記載しておきたい内容
製造設備充填・混合・打錠・造粒・包装などの設備の種類、能力、導入年、稼働状況
製造環境清浄度の管理方法、区画・動線、空調・用水の管理
品質管理試験検査の設備と項目、外部委託の範囲、記録の保存状況
手順書製造・衛生・逸脱・回収に関する手順の整備状況と、教育記録
監査対応顧客監査の実績、指摘事項と是正の履歴、取得している認証があればその範囲
トレーサビリティ原料ロットから製品ロットまで追跡できる仕組みの有無

健康食品の製造では、HACCPに沿った衛生管理の運用状況も確認されます。あわせて、原料の調達先、アレルゲンや異物の管理、賞味期限の設定根拠なども整理しておくと、調査がスムーズに進みます。

OEM取引と処方|集中度と権利の整理

この業種のM&Aで特徴的なのが、処方の権利取引の集中度という二つの論点です。

処方は誰のものか

OEMの現場では、顧客から指定された処方、自社が開発した処方、共同で仕上げた処方が混在します。買い手が知りたいのは「引き継いだ後、その処方を使い続けられるのか」です。契約上の帰属と、秘密保持の範囲を整理しておきましょう。自社が保有する処方や製法があれば、それは知的財産として説明できます。考え方は「特許・商標などの知的財産|中小企業での評価のされ方」をご参照ください。

取引先の集中

OEMは、少数の顧客に売上が集中しやすい構造です。集中度は必ず確認されますが、取引年数、製品ごとの継続状況、価格改定の履歴を示せれば、関係の質を説明できます。「特定取引先への依存|評価が下がる理由と対策」もご覧ください。

表示と広告の管理

製品の表示や、顧客が行う広告表現については、薬機法・食品表示法・景品表示法・健康増進法などの規制が関係します。自社が表示のどこまでに関与しているか、過去に指摘を受けた経緯がないかは、買い手の調査で確認される可能性があります。

表示・広告に関する規制の適用関係は、製品の区分と表現の内容によって判断が分かれます。個別の判断は所管官庁および弁護士など専門家に必ずご確認ください。

譲渡前に整えたいこと

  • 保有する許可・届出の一覧と、有効期限・変更履歴の確認
  • 責任者の要件と、譲渡後の体制の見通しの整理
  • 顧客別・製品別の売上と採算の見える化
  • 処方の帰属と秘密保持契約の内容の確認
  • 製造・品質の手順書と記録の整備状況の点検
  • 原料の調達先と在庫の状況(滞留・期限切れの整理)
  • 役員報酬や社長個人に紐づく費用の把握(実質利益の整理)
  • 借入・個人保証・リース契約の一覧化

買い手の調査で何が見られるかは「デューデリジェンス(DD)とは|調査項目と売り手の準備」で整理しています。

株式譲渡による売却益への課税(株式譲渡益課税は20.315%)や、事業譲渡を選んだ場合の税務上の取扱いは、個々の状況によって結論が変わります。具体的な税務判断は必ず顧問税理士など専門家にご確認ください。

まとめ|許可とスキームは、最初に確認する

化粧品・健康食品の製造業のM&Aでは、許可の扱いがスキームの選択を左右します。これを後回しにすると、進んでから設計をやり直すことになりかねません。許可の整理、品質体制の記録、処方と取引の権利関係——この三つを最初に確認することが、円滑な譲渡の前提です。

そのうえで、監査に耐えてきた記録と、蓄積された処方は、この業種ならではの強みです。決めていない段階でも、整理しておく価値があります。

当社は、相談料・着手金・月額報酬をいただかない成功報酬型で、初回のご相談から成約まで一貫して伴走します。成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)により算定し、最低金額は2,000万円(税別)です。基本合意時に成功報酬額の10%を中間金としてお預かりし、成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に成立に至らなかった場合も中間金の返金は行いません)。詳細は「料金体系」をご覧ください。

秘密保持を徹底したうえで、御社の体制が外からどう見えるのかを、まずはお伝えします。

よくあるご質問

A.事業譲渡では、譲受側が新たに許可を取得し直す必要が生じることがあります。その場合、手続きの期間中に製造を継続できるかが実務上の焦点となり、スケジュールの設計が重要になります。株式譲渡であれば法人格が変わらないため許可は原則として維持されますが、どちらが適切かは税務や債務の引き継ぎも含めた総合判断です。具体的な手続きの要否は所管の窓口および専門家に必ずご確認ください。
A.処方が顧客帰属であっても、価値がないわけではありません。指定された処方を安定して量産できること、顧客の監査に応えてきた実績、充填や包装の対応力、小ロットや短納期への柔軟性は、いずれも代替の難しい能力です。あわせて、自社で開発した処方や、共同開発で蓄積した知見があれば、その範囲を整理して示してください。契約上の帰属の確認は弁護士など専門家にご相談ください。
A.開示することをおすすめします。買い手の調査では法令遵守の状況が確認されるのが通例で、後から判明すると条件の見直しにつながりやすくなります。重要なのは、指摘を受けた後にどのような是正を行い、その後の運用をどう変えたかを説明できることです。是正の記録が残っていれば、管理体制の改善を示す材料にもなります。個別の判断は専門家にご確認ください。

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相談料・着手金は0円です。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。売却を決めていない段階のご相談も歓迎します。
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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら