統合は、いつ終わるのか。決めておかないと、いつまでも「統合中」のままになります。終わりの基準と、その後の設計を整理します。
終わりを決めない弊害
先に、決めないとどうなるかを整理します。
担当者が消耗する。いつまで続くのか分からない状態で、現場と本社の板挟みが続きます。
現地が落ち着かない。「まだ何か変わるのか」という状態が続きます。
本社の関心が細る。終わりが見えないと、報告も形骸化します。
通常の子会社管理に移れない。統合の体制が、そのまま常態になります。
終わりを決めることは、区切りをつけるためだけではありません。次の段階に進むために要ります。
判断の材料になる状態
何をもって「終わった」とするか。状態で定義してください。
① 月次の数字が、翌月に出る。これが最も基本的な条件です。
② 計画との差を、現地が説明できる。本社が分析するのではなく、現地が説明する。
③ 現地の責任者が定まっている。誰が経営しているかが明確。
④ 重要な事象が、早く上がってくる。失注、退職、事故、クレーム。
⑤ 法令と統制の最低限が整っている。就業規則、決裁ルール、印章管理。
この5つが揃えば、統合の段階は終えてよいと考えられます。
期間で区切るのではない
注意すべき点です。「1年経ったから終わり」ではありません。
期間で区切ると、状態が整っていないのに終了宣言することになります。
逆に、状態が整っているのに、期間が来ていないから続けるのも無駄です。
実務的には、目安として1〜2年を置きつつ、状態で判断するという設計にしてください。
そして、目安の時期に、状態を点検する場を設ける。「1年後の◯月に、終了の可否を判断する」。
判断の場を先に決めておくと、自然に終われます。
整わない場合の判断
目安の時期が来ても、状態が整っていないことがあります。
このとき、何が整っていないかを特定してください。
月次が出ない。経理の体制か、システムか、人か。
責任者が定まらない。現地に適任がいないのか、本社が決めていないのか。
情報が上がらない。関係の問題か、仕組みの問題か。
そして、それを解消する期限を切って、延長する。「◯月までに月次の体制を作り、その時点で再判断する」。
「まだ整っていないので、もう少し」を繰り返さないでください。何が、いつまでに、を決める。
体制をどう移すか
終了にあたっての実務です。
報告の頻度を落とす。週次→月次、月次→四半期。
報告の様式を、通常の子会社と揃える。統合専用の項目を外す。
会議体を整理する。統合の定例を終え、通常の経営会議に統合する。
権限を確定させる。暫定的に本社が持っていた決裁を、現地に移す。あるいは、正式に本社に残す。
この移行を、日付を決めて行ってください。「◯月から、この形にします」。
曖昧に細らせると、何も決まっていない状態が残ります。
担当者をどうするか
PMIの担当者を置いていた場合の判断です。
本社に戻す。当初の約束どおり。戻る先を用意しておいてください。
現地に残す。役員や責任者として。本人の意思を確認してください。
次の案件へ。経験を次の買収に活かす。
いずれの場合も、評価を行ってください。
評価すべきは、統合の進捗です。管理体制が整ったか、離職を抑えられたか、取引先との関係を維持できたか、想定とのずれを早期に把握できたか。
買収先の業績だけで評価すると、短期の数字合わせに走らせることになります。
終えた後も続けること
統合を終えても、続ける項目があります。
月次の報告。頻度は落としても、止めない。
投資回収の確認。買収時の計画に対して、どこまで来たか。のれんの減損の検討にも関わります。
キーマンの状況。年に一度は確認する。
許認可・契約の期限管理。
法令対応。改正への追随。
これらは「統合」ではなく「通常の子会社管理」です。混同しないでください。
振り返りを行う
終了にあたって、必ず行ってください。何が計画どおりで、何が違ったか。
見るべき項目を挙げます。
業績。買収時の計画との差と、その原因。
人。離職の状況。想定していたか。
取引先。維持できたか、失ったか。
費用。統合にかかった実際の費用。見積もりとの差。
期間。想定より早かったか、遅かったか。
この記録が、次の買収の精度を上げます。
記憶が鮮明なうちに、書面に残してください。
終わりは、関係の終わりではない
最後に、伝え方の話です。
統合の終了を、現地にどう伝えるか。
「統合は完了しました」とだけ言うと、「見放された」と受け取られることがあります。
伝えるべきは、次の形です。「◯月から、報告は月次に変わります。相談の窓口は引き続き◯◯です」。
そして、この1〜2年の労をねぎらってください。統合は、買収された側にとっても大きな負担でした。
終わりを区切ることと、関係を細らせることは別です。
むしろ、ここからが通常の経営です。PMIの振り返りも併せてご覧ください。