中小M&A資格試験(仮称)について、ネット上には多くの解説記事があります。しかし公式テキストも過去問も、まだ公表されていません。いま確かめられるのは、公表されている一次資料だけです。

資料は5つあり、それぞれ役割が違います。どこに何が書いてあるかを知っていれば、二次情報に振り回されずに済みます。この記事は資料の地図で、中身の要約ではありません。

5つの資料と、それぞれの役割

資料発行ここにしかないもの
企画競争募集要領「中小M&A資格試験実施事業」中小企業庁
2026年3月27日
実施時期・開催方式・試験時間・設問数・合格基準・科目別最低基準・禁忌肢の運用・受験料の扱い・受験者数の見積り
検討会 資料2「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」中小企業庁
2026年3月17日
配点と、その配分の理由・合格者登録制度・科目免除の扱い・独占業務との関係・サンプル問題
検討会 資料3「試験科目詳細」中小企業庁
2026年3月17日
試験範囲251項目(うち優先54項目)と、「あくまで現状案」という注記
知識スキルマップ(中小M&A専門人材(個人)向け 使命・倫理行動規範・知識スキルマップ)2025年4月個人に求められる使命と倫理行動規範の体系
中小M&Aガイドライン第3版+Q&A中小企業庁
2024年8月
倫理・行動規範の科目が土台にしている条文そのもの

出典:各資料の記載より当社が作成。資料3は中小企業庁の公表ページで確認できます。

読む順番|募集要領から入ると早い

検討会の資料から入る人が多いのですが、いちばん具体的なのは募集要領です。事業を委託するための文書なので、実施の条件が数字で書かれています。

  1. 募集要領 — 試験がどう実施されるかが分かる。合格基準・科目別最低基準・禁忌肢の運用は、ここが出典
  2. 資料2 — 配点と、なぜその配分なのかが分かる。合格者登録制度もここ
  3. 資料3 — 範囲の広さを体で知るための資料。251項目を眺める
  4. ガイドライン第3版 — 倫理・行動規範(配点25%)の実体。条文を読む
  5. スキルマップ — 個人に何が求められているかの体系。全体像の確認に使う

当社では、試験範囲の251項目にコラムを紐づけた試験範囲マップを公開しています。資料3を読んだあとの索引として使えます。

二次情報に頼ると、「あるもの」を「無い」と書いてしまう

一次資料を読む価値は、間違いを避けることだけではありません。二次情報だけを見ていると、書かれていることを「書かれていない」と判断してしまうことがあります。

実施時期がその例です。「2027年1〜2月」という記述は複数のブログにありますが、検討会の資料2・資料3だけを読むと、この記述は見つかりません。ここで「ブログの憶測だ」と結論すると、誤ります。募集要領(4)には、こう書かれています。

仮に上記の一斉開催とした場合、試験実施時期については、1月~2月の、可能な限り連続した平日2日間及び休日1日間の3日間を設定することを想定するが、詳細は中小企業庁と協議する。

つまり時期は書いてあり、試験日は書いていない。この線引きは、資料を1つ落とすと引けません。

逆の誤りもあります。「1〜2月に実施される」と断定する記事です。資料にあるのは「想定する」であり、「詳細は中小企業庁と協議する」と続きます。想定を予定に読み替えない。

資料が「決めていない」ことを、一覧にしておく

一次資料を読むときにいちばん役に立つのは、何が決まっていないかを正確に持っておくことです。決まっていない事項は、解説記事のあいだで書き方が割れます。そこで迷わなくなります。

事項資料に書かれていること
試験日未公表。実施時期として1月〜2月に3日程を設定することが「想定」され、「詳細は中小企業庁と協議する」
受験料有償であることのみ。金額は未公表で、事業期間中に中小企業庁と協議のうえ決定
申込期間記載なし
禁忌肢設定を「検討」。作問技術やCBTの技術的問題で難しい場合は、倫理科目の最低基準の引上げや配点の加重で代替するとされている
合格基準総得点の70〜80%程度が「目安」。初回は一律の合格点ではなく相対評価を踏まえて判定
科目免除立ち上げ期は設けない。その後どうするかは記載なし
重要事項説明の要件化資格保持者が行うことを求める「方向」を検討。確定していない
試験範囲251項目が公表されているが、「あくまで現状案であり、今後変更が生じうる」

出典:企画競争募集要領(中小企業庁、2026年3月27日)・検討会 資料2/資料3(同、2026年3月17日)を加工して作成。

この表のどれかを断定している記事に出会ったら、出典を確かめてください。試験名そのものが、資料の上ではまだ「仮称」です。

出典の書き方|経産省のコンテンツには利用ルールがある

これらの資料を引用して記事や資料を作るときは、利用条件に注意が必要です。経済産業省のコンテンツは政府標準利用規約(PDL1.0)に基づいており、出典の明示が求められます。

そして、編集・加工した情報を、あたかも国が作成したかのような態様で公表・利用してはいけないとされています。数字を表に組み直したり、割合から設問数を計算したりするのは加工にあたるので、出典に加えて加工した旨も書きます。

社内資料であっても、外に出る可能性があるものは同じ扱いにしておくほうが安全です。

この記事について(出典と免責)

本記事は、本試験の実施主体・運営事業者が作成・監修したものではありません。制度の内容は2026年9月時点の公表資料に基づく「想定」「現状案」です。試験名は資料上「中小M&A資格試験(仮称)」と表記されています。受験にあたっては、必ず中小企業庁および試験運営事業者の公式の試験案内をご確認ください。

試験日・受験料はいずれも未公表です。試験範囲は資料3の冒頭に「あくまで現状案であり、今後変更が生じうる」と明記されています。合格しても、弁護士・税理士・公認会計士等の独占業務が行えるようになるわけではありません。

出典:「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小企業庁・第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2、2026年3月17日) / 同 資料3「試験科目詳細」 / 「令和7年度補正中小企業活性化・事業承継総合緊急支援事業(中小M&A資格試験実施事業)に係る企画競争募集要領」(中小企業庁、2026年3月27日) / 「中小M&A専門人材(個人)向け 使命・倫理行動規範・知識スキルマップ」(中小企業庁、2025年4月) / 中小M&Aガイドライン第3版(中小企業庁、2024年8月。当社の遵守宣言に全文を掲載) をもとに当社が作成。

よくあるご質問

A.2026年9月時点で、公式テキストも過去問も公表されていません。確かめられるのは公表されている一次資料だけです。
A.試験日そのものは未公表です。募集要領には実施時期として「1月〜2月」に3日程を設定することが想定されていると書かれていますが、「詳細は中小企業庁と協議する」と続いています。
A.募集要領が最も具体的です。実施方式・試験時間・設問数・合格基準・科目別最低基準・禁忌肢の運用が、ここに書かれています。
A.経済産業省のコンテンツは政府標準利用規約(PDL1.0)に基づいており、出典の明示が求められます。加工した場合は加工した旨も書き、国が作成したかのような態様で公表しないよう注意してください。
A.有償であることは示されていますが、金額は未公表です。事業期間中に中小企業庁と協議のうえ決定するとされています。

Book

この試験の勉強に使えるもの:試験範囲マップ|251項目と当社コラムの対応表で、どの項目にどの記事が対応しているか(と、当社が書けていない項目)を一覧できます。

中小M&A資格試験 合格問題集|一次資料で解く、全300問

当社取締役副社長 神垣宏康が執筆した問題集です。中小M&Aガイドライン第3版・知識スキルマップ・検討会資料「試験科目詳細」といった公表資料だけから全300問を作成し、全問に出典を明記しています。

本編180問(M&A実務55/市場動向・政策17/財務・税務37/法務32/倫理・行動規範39)+本試験と同じ60問・科目配分の模擬試験2回120問。各問に解説と出典。禁忌肢が想定される問題の明示と、付録に禁忌肢チェックリスト。付録の出題範囲対応表は、資料3の小項目から問番号を引ける形にしてあります。

中小M&A資格試験 合格テキスト|一次資料で体系的に学ぶ、4科目の要点

同じシリーズの基本書です(2026年10月3日刊行)。序章で制度創設の経緯・4科目と配点・合格基準・禁忌肢・CBTでの実施形式・学習プランを示し、第1章 M&A実務/第2章 中小M&A市場動向・中小企業政策/第3章 財務・税務/第4章 法務/第5章 倫理・行動規範の順に解説しています。付録は用語集・重要数値一覧・スキーム比較表・出題範囲対応表・学習記録シート。数値・期間・条文には出典を併記し、制度の数値は2026年10月1日時点です。

問題集で問われ方を確かめ、間違えた問から本書の該当節に戻る形を想定しています。付録の出題範囲対応表が、2冊の往復の索引になります。

本書は試験の実施主体・運営事業者が作成・監修したものではありません。制度の内容は2026年9月時点の公表資料に基づく「想定」「現状案」です。受験にあたっては公式の試験案内をご確認ください。

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一次資料に当たる仕事は、そのまま実務の作法になります。当社は中小M&Aガイドラインの遵守宣言を全文公開し、手数料の算定基準も公開しています。実務者としてご一緒いただける方は採用情報を、譲渡をご検討の経営者様は無料相談を、それぞれご覧ください。
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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら