M&Aの仲介手数料は、決して小さな金額ではありません。「少しでも安くならないか」「値引き交渉はできるのか」と考えるのは、経営者様として自然なことです。本稿では、仲介会社である当社の立場から、この問いに正直にお答えします。結論を先に言えば、交渉や質問は大いにすべきです。ただし、値引きの成否よりも、契約条件の中身を確認することのほうが、はるかにご自身の利益に効きます。その理由と、具体的な確認ポイントをご説明します。

結論|交渉は自由。ただし「値引き」より効く確認がある

まず前提として、手数料について仲介会社に質問し、説明を求め、交渉を持ちかけること自体は、依頼者の当然の権利です。遠慮する必要はまったくありませんし、料金の質問を嫌がるような会社であれば、その対応自体が依頼先としての適格性を疑う材料になります。

一方で、現実もお伝えしなければなりません。手数料は、各社がサービスの内容と体制に応じて設計しているものであり、大幅な値引きに応じる会社は多くないのが実情です。そして仮に値引きを引き出せたとしても、後述するとおり、その効果は契約条件の違いによる差額に比べれば小さいことがほとんどです。

つまり、依頼者として本当に注力すべきは「いくら引いてもらえるか」ではなく、「この契約で、いつ・何に・いくら支払うことになるのか」を完全に理解することです。ここが曖昧なまま値引きの多寡で選んでしまうことこそ、最も避けたい事態です。

なぜ値引き交渉の効果は限定的なのか

値引き交渉より条件確認が大事だと言える理由は、3つあります。

  • 手取りを決める最大の要因は成約条件だから——売り手の手取りは「譲渡対価-手数料-税金」で決まります。どのような買い手候補と出会い、どのような価格・条件で成約するかによる差は、手数料の値引き額よりはるかに大きくなり得ます。仮に手数料を数百万円下げても、マッチングの質が落ちて譲渡対価が下がれば、手取りは逆に減ります
  • 「安く見える料金」と「安い総額」は別物だから——料率や最低報酬が低く見えても、報酬基準の取り方や中間金・月額報酬の有無によって、総支払額は逆転します。表面の数字の交渉より、総額の構造を確認するほうが効果的です
  • 過度な値引きはサービスの質と両立しにくいから——M&Aの支援は、専任の人員が長期間伴走する労働集約的な仕事です。採算を度外視した値引きは、担当者の稼働の質や案件への優先度に影響し得ます。依頼者にとっても健全な取引とはいえません

では、何を確認すべきか。次の3つの章で、重要度の高い順にご説明します。

値引きより大事な確認1|報酬基準と最低報酬

成功報酬の多くは、譲渡金額に段階的な料率を掛けるレーマン方式で計算されます。ここで料率表以上に効いてくるのが、料率を「何に」掛けるのかという報酬基準です。

  • 株式価値ベース(株価レーマン)——株式の譲渡対価に料率を掛ける
  • 移動総資産ベース——株式価値に借入金などの負債を加えた金額に料率を掛ける
  • オーナー受取額ベース——株式対価に役員借入金の返済額などを加えた金額に料率を掛ける

借入金のある会社では、同じ料率表でも基準の違いだけで報酬額が大きく変わります。料率の1%を交渉するより、基準がどれかを確認するほうが、金額への影響は大きいのです。詳しくは「レーマン方式の3つの基準」で試算例つきで解説しています。

あわせて確認すべきが最低報酬額です。譲渡規模が小さい場合、実際の支払額は料率計算ではなく最低報酬で決まることが多いため、「自社の規模なら結局いくらか」を具体的に試算してもらうことが欠かせません。なお当社の場合、成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)で、最低報酬は2,000万円(税別)です。基準額の考え方と手数料総額の目安は、ご契約前に書面でご提示します。

値引きより大事な確認2|中間金・着手金の扱い

次に確認したいのが、成約前に発生する支払いです。同じ「成功報酬型」を名乗る会社でも、その中身は様々です。

  • 着手金・月額報酬の有無——契約時や毎月の支払いがあるか。成約に至らなくても発生するお金かどうか
  • 中間金の有無と金額——基本合意時などに支払う中間金があるか。いくらか。成功報酬に充当されるのか
  • 不成立時の扱い——基本合意後に破談となった場合、支払済みの中間金は返金されるのか

特に中間金は、「成約しなかったのに支払いだけが残った」という後悔につながりやすい論点です。金額そのものより、「どの時点で確定するお金なのか」「返金の有無」が契約書にどう書かれているかを必ず確認してください。仕組みの詳細は「M&Aの中間金とは」で解説しています。

当社の場合を明記しておくと、相談料・着手金・月額報酬は0円、基本合意時に成功報酬額の10%を中間金としてお申し受け、成約時の成功報酬から全額差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。そして基本合意後に不成立となった場合、中間金は返金いたしません。この返金しないという条件も含めて、契約前に書面でご説明するのが当社の方針です。都合の良い部分だけを大きく書く会社ではなく、こうした条件まで先に明示する会社をお選びください。

値引きより大事な確認3|テール条項と契約期間

金額の話に隠れて見落とされやすいのが、契約の「期間」に関する条項です。

テール条項

仲介契約の終了後であっても、一定期間内に、その仲介会社が紹介した相手と成約した場合には手数料を支払う——という条項です。仲介会社の紹介成果へのただ乗りを防ぐための合理性のある条項ですが、対象期間の長さや、対象となる相手の範囲(紹介先に限るのか)によって、依頼者の拘束の度合いが大きく変わります。中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)でも取り上げられている論点であり、内容を理解せずに署名すべきではありません。詳しくは「テール条項とは」をご覧ください。

専任条項と契約期間・解約条件

他の支援機関への並行依頼を制限する専任条項がある場合は、契約期間がどれだけか、中途解約ができるか、解約時に費用が発生するかを確認します。長期の拘束と高額な違約金の組み合わせは、依頼者にとって大きなリスクになり得ます。

これらの条項は「値引き」の対象として意識されにくい一方、いざ事情が変わったときの選択の自由を左右します。手数料の額と同じ重みで確認することをおすすめします。

「安さで選ぶ」ことのリスクと、健全な比較の仕方

最後に、手数料の安さを最優先で仲介会社を選ぶことのリスクを整理します。

  • マッチングの質が手取りを左右する——手数料で数百万円得をしても、買い手候補の広がりや交渉支援の質が劣れば、譲渡対価でそれ以上の差がつき得ます
  • 安さの理由を確認できないまま契約しがち——支援範囲が狭い、担当者の経験が浅い、契約条件で回収する設計になっている等、安さには理由があるはずです。理由の説明を求め、納得できるかを確かめてください
  • 比較の土俵が揃っていない——A社は着手金あり・B社は中間金あり・C社は基準が違う、という状態で料率だけを見比べても、正しい比較にはなりません

健全な比較の仕方はシンプルです。候補となる各社に、自社の想定譲渡規模を前提として、「相談から成約までに、いつ・いくら支払うのか」「不成立の場合はどうなるのか」の時系列シミュレーションを書面で依頼すること。そのうえで、支援内容・担当者との相性・説明の誠実さを含めて総合的に判断することです。仲介会社選び全体の視点は「M&A仲介会社の選び方」にまとめています。

当社は、値引きの駆け引きではなく、条件を最初からすべて開示することで、料金への納得をつくりたいと考えています。料金体系はWebで全て公開しており、ご相談いただければ貴社の場合の試算を書面でお示しします。他社との比較検討の材料としてお使いいただくことも歓迎です。

よくあるご質問

A.交渉すること自体は自由ですし、質問や確認を遠慮する必要はまったくありません。ただし、手数料は仲介会社がサービスの対価として設計しているものであり、大幅な値引きに応じる会社は多くありません。それよりも、報酬基準の定義・最低報酬額・中間金の扱い・テール条項といった契約条件を確認し、総支払額で比較するほうが、結果としてご自身の利益につながります。
A.そうとは限りません。売り手の手取りは「譲渡対価から手数料と税金を引いた金額」で決まります。手数料の差よりも、どのような買い手候補と出会えるか、どのような条件で成約できるかのほうが、手取りへの影響ははるかに大きいのが実際です。また、料率が安く見えても、報酬基準の取り方(株式価値ベースか移動総資産ベースか)や最低報酬額しだいで総額はむしろ高くなることもあり、表面の数字だけで選ぶのは危険です。
A.自社の想定譲渡規模を前提に、「相談から成約までに、いつ・いくら支払うのか」の時系列シミュレーションを書面で依頼してください。あわせて、報酬基準の定義、最低報酬額、中間金の金額と不成立時の扱い、契約期間とテール条項の内容を確認すれば、各社を同じ土俵で比較できます。誠実な会社であれば、これらの依頼を嫌がることはありません。

Free Consultation

駆け引きではなく、全条件の開示から。

相談料・着手金・月額報酬0円。移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)・最低報酬2,000万円(税別)。中間金の扱いまで含めて、契約前に書面でご説明します。他社比較の材料としてもどうぞ。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら