データセンターは、この数年で「電力を大量に使う産業」として国のエネルギー政策の議論に登場するようになりました。それだけ需要が増えているということです。本稿では、電力広域的運営推進機関の公表資料をもとにデータセンターが電力需要にどう現れているかを確認し、この産業の裾野にある事業の承継について、論点を整理します。

電力需要の想定に現れたデータセンター

電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2026年1月21日に公表した「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」によると、2035年度における全国の需要電力量(使用端合計)は846,129百万kWhと想定され、2025〜2035年度の平均増減率はプラス0.5%です。最大需要電力は2035年度に164,601千kWで、同期間の平均増減率はプラス0.4%となっています。

注目すべきは、その理由の説明です。同資料は、2027年度以降について「人口減少や節電・省エネなどの減少影響よりも経済成長やデータセンター・半導体工場の新増設が続くため、2035年度にかけて増加するものと想定した」と述べています。

人口が減り、省エネが進んでもなお電力需要が増える。その押し上げ要因として、データセンターと半導体工場が名指しで挙げられているということです。これは、この産業が国のインフラ計画に織り込まれる規模に達していることを意味します。

同資料はまた、一般送配電事業者の需要想定に反映されている主な事項として「データセンター・半導体工場の新増設(北海道、東北、東京、中部、関西、中国、九州)」を挙げています。全国10の供給区域のうち7区域で、個別に計上されるほどの規模の計画が動いているということです。

立地はどこに向かうのか

OCCTOの同資料には、供給区域ごとの需要電力量の想定も掲載されています。東京エリアは2026年度の257,786百万kWhから2035年度には287,103百万kWhへと想定され、2025〜2035年度の平均増減率はプラス1.1%。北海道エリアは同期間でプラス1.2%と、全国平均(プラス0.5%)を大きく上回ります。

四国エリアがマイナス1.0%、北陸エリアがマイナス0.1%、東北エリアがほぼ横ばいであることと比べると、地域差の大きさがわかります。同資料は、産業用その他の区分について、北海道・東北・東京・中部・関西・中国・九州でデータセンター・半導体工場の新増設に伴う需要増を個別計上していると説明しています。また業務用の区分では、関西において既設データセンターの増設に伴う需要増を個別計上しているとしています。

従来、データセンターは通信の遅延を抑えるために大都市圏に集中して立地してきました。しかし、電力の確保が制約になるにつれて、電力供給に余裕のある地域や、再生可能エネルギーが豊富な地域への分散が進みつつあります。北海道エリアの伸び率が全国平均を上回っていることは、その動きの一端を示していると読めます。

この立地の分散は、地方の建設会社、電気工事会社、空調設備会社、警備会社にとって、新しい需要が生まれることを意味します。データセンターという産業の恩恵は、運営事業者だけにとどまりません。

需要側の変化|クラウドとAIが押し上げる

データセンターの需要を押し上げているのは、企業の情報システムがクラウドへ移っていることと、AIの計算需要の拡大です。

前者については、総務省「令和7年通信利用動向調査」(令和8年5月29日公表、常用雇用者100人以上の企業が対象)が、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合が8割を上回り、全社的に利用している企業の割合も60.0%となったことを示しています。企業が自社でサーバーを持たなくなれば、その分の計算資源はデータセンターに集約されます。

後者については、AIの学習と推論に用いられる計算機が、従来のサーバーと比べて格段に多くの電力を消費するという性質があります。同じ床面積あたりの電力密度が上がるため、電源設備と冷却設備の設計が根本から見直されることになります。

この結果、データセンターの新設・増設には、これまで以上に大きな投資と、電力会社との長期にわたる協議が必要になっています。事業として参入するハードルは、上がる方向にあります。

設備投資という参入障壁

データセンターの運営事業そのものは、極めて資本集約的です。建物、受変電設備、無停電電源装置、非常用発電機、冷却設備、消火設備、入退室管理設備——いずれも大規模な投資を要し、かつ長期にわたって維持し続けなければなりません。

この構造のため、データセンターの運営主体は資本力のある事業者に限られます。中小企業がこの領域で事業を営むとすれば、運営そのものではなく、その周辺——電気設備工事、空調設備の保守、通信配線、施設警備、清掃、そしてサーバーの運用・監視といった領域になります。

そして、これらの周辺事業こそが、データセンターの拡大による恩恵を直接に受ける領域です。設備が増えれば、それを施工し、保守し、守る事業者の仕事も増えます。しかも、データセンターの設備は止められないため、保守は継続的な契約になりやすいという性質があります。

この意味で、データセンター業界の動向は、施設管理・設備工事・情報システム運用といった幅広い中小企業にとって、自社の事業環境を考える材料になります。

関連事業の承継で何が論点になるか

帝国データバンクの2025年の調査では、国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。データセンターの周辺で事業を営む中小企業——電気工事、空調設備、通信工事、施設管理、サーバー運用——にも、当然この課題は及びます。

こうした事業の承継を検討される際に整理しておきたいのは、次のような点です。

  • 受注の構成(新設工事・改修工事・保守契約)と、それぞれの推移
  • 保守契約の件数、契約期間、自動更新の有無、月額の水準
  • 取引先の構成と、上位数社への売上依存度、取引年数
  • 技術者・作業員の人数、年齢構成、保有資格
  • 必要な建設業許可・電気工事業の登録等の種類と有効期間
  • 入館・入室に関する資格や身元確認の要件を満たせているか
  • 夜間・休日の対応体制と、その労務管理の状況
  • 過去の事故・トラブルの履歴と、その対応

承継先を親族・従業員・第三者のいずれに求めるかという選択肢の比較は後継者不在の解決策としてのM&Aの記事で整理しています。とりわけ、データセンターに関わる事業では、セキュリティ要件が厳しいという特徴があります。入館者の身元確認、作業記録の保存、機密保持の体制。これらを満たせる管理水準があること自体が、引き継ぐ側から見た価値になります。

また、許認可の取り扱いはスキームによって変わります。一般に、株式譲渡では法人が受けている許可がそのまま維持され、事業譲渡では譲受側が自ら許可を有していることが前提になります。詳しくは許認可事業のM&Aの記事をご覧ください。

まとめ|裾野の広い産業として捉える

データセンター業界の現在地を公表資料で確認すると、電力広域的運営推進機関の需要想定において、人口減少や省エネによる減少影響を上回る押し上げ要因としてデータセンター・半導体工場の新増設が挙げられ、7つの供給区域で個別に計上されています。東京エリアは2025〜2035年度の平均増減率がプラス1.1%、北海道エリアはプラス1.2%と、全国平均のプラス0.5%を上回ります。

データセンターの運営そのものは資本集約的で、中小企業が直接参入する領域ではありません。しかし、その建設と維持を支える設備工事、保守、施設管理、運用監視といった領域には、確かな需要が生まれています。

技術者が在籍し、契約が続いているうちであれば、事業の価値は明確に伝わります。当社プラチナパートナーズは、成功報酬型のもと、設備工事・施設管理・情報システム運用といった事業を含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。

本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。

よくあるご質問

A.関係します。データセンターの運営そのものは、建物・受変電設備・無停電電源装置・非常用発電機・冷却設備・入退室管理設備などに大規模な投資を要する資本集約的な事業で、中小企業が直接参入する領域ではありません。しかし、その建設と維持を支える電気設備工事、空調設備の保守、通信配線、施設警備、清掃、サーバーの運用・監視といった周辺の領域には、確かな需要が生まれています。しかもデータセンターの設備は止められないため、保守は継続的な契約になりやすいという性質があります。
A.電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2026年1月21日に公表した「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」では、データセンター・半導体工場の新増設が北海道、東北、東京、中部、関西、中国、九州の7区域で個別に計上されています。2025〜2035年度の需要電力量の平均増減率は、東京エリアがプラス1.1%、北海道エリアがプラス1.2%で、全国平均のプラス0.5%を上回ります(四国エリアはマイナス1.0%)。どの地域で需要が生まれるかを読む材料になります。
A.むしろ価値として説明できる要素です。データセンターに関わる事業では、入館者の身元確認、作業記録の保存、機密保持の体制といった要件が厳しく、それを満たせる管理水準があること自体が、引き継ぐ側から見た価値になります。入館・入室に関する資格や身元確認の要件を満たせているか、夜間・休日の対応体制とその労務管理はどうなっているか、過去の事故・トラブルの履歴と対応はどうかを整理しておくと、要件の厳しさがそのまま参入障壁として伝わります。
A.違います。設備を止められないため保守は継続的な契約になりやすく、引き継いだ翌月も同じ売上が見込める点が評価されやすい領域です。新設・改修工事は案件ごとの受注ですので、営業力と技術者を引き継げるかが問われます。まずは受注の構成(新設工事・改修工事・保守契約)とそれぞれの推移、保守契約の件数・契約期間・自動更新の有無・月額の水準を分けて示せるようにしてください。取引先の構成と上位数社への売上依存度、取引年数も同時に確認されます。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら