一般廃棄物の処理は、統計が毎年きちんと公表されている分野です。環境省が排出量・リサイクル率・最終処分量・事業経費までまとめて公表しています。
本稿ではこの公表資料をもとに現在地を確認します。注目すべきは、ごみの量と、処理にかかる費用が逆方向に動いていることです。この一点が、この分野の事業環境を説明します。
本稿の数値は環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和6年度)について」(令和8年3月27日公表)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
量は減り、費用は増えている
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和6年度)について」(令和8年3月27日公表)によれば、令和6年度の主な数値は次のとおりです。
| 項目 | 令和5年度 | 令和6年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ごみ総排出量 | 3,897万トン | 3,811万トン | 2.2%減 |
| 1人1日当たりごみ排出量 | 851グラム | 839グラム | 1.5%減 |
| リサイクル率 | 19.5% | 19.3% | △0.2ポイント |
| 最終処分量 | 316万トン | 306万トン | 3.2%減 |
| 最終処分場の残余年数 | 24.8年 | 24.9年 | +0.1年 |
| ごみ処理事業経費 | 22,912億円 | 24,489億円 | 6.9%増 |
出典:環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和6年度)について」(令和8年3月27日公表)より作成
ごみは減り、最終処分量も減っています。それでも事業経費は1年で1,577億円、6.9%増えました。
統計は理由までは示しませんが、量が減っても費用が増えるという形は、単価の側が上がっていることを意味します。人件費、燃料費、車両費、施設の更新費——いずれも量に比例しない部分です。
この分野の事業者にとって、これは悪い話ばかりではありません。市場の大きさを決めるのはごみの量ではなく、自治体が支払う委託費の総額だからです。
最終処分場の残余年数24.9年が意味すること
同資料によれば、最終処分場の残余年数は24.9年で、前年度の24.8年から横ばいです。
残余年数が横ばいというのは、埋立が進んだ分だけ、新たな容量が確保されているということです。最終処分量が3.2%減ったことも、残余年数を保つ方向に働いています。
ただしこれは全国の平均です。最終処分場は地域ごとに事情が大きく異なり、全国平均が24.9年であることは、どの地域も24.9年あることを意味しません。ご検討の地域については、個別に確認する必要があります。
リサイクル率は19.3%で、前年度の19.5%からわずかに下がりました。ここ数年は20%前後で推移しており、大きく伸びる局面ではありません。
この分野の収益の性質
一般廃棄物の収集運搬・処分は、市町村の責任で行われる事業です。民間事業者は、市町村の許可を受けるか、市町村から委託を受けて関わります。
ここがこの分野の構造を決めています。
- 許可は市町村単位。隣の市で営業するには、その市の許可が要ります
- 許可の数が絞られている。市町村は処理計画に照らして必要な範囲でしか許可を出しません。新規の参入が制度上むずかしい分野です
- 収入の相手が自治体。委託契約であれば、支払は安定します
参入が制度で絞られているということは、既存の許可を持つ会社を引き継ぐことが、その区域に入るほぼ唯一の手段になる、ということでもあります。だからこそ、この分野では区域そのものを目的とした承継が起こります。
もっとも、安定は 競争 の無さと同義ではありません。委託は入札で決まることが多く、更新のたびに価格が問われます。許可があっても、区域内に複数の事業者がいれば配分は動きます。「参入されにくいが、既に入っている者どうしでは競う」というのが、この分野の実際の姿です。
ごみ処理事業経費が6.9%増えているという事実は、その区域の価値が縮んでいないことを裏づける材料になります。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 許可と委託の区域。どの市町村で、何の許可を持っているか。収集運搬だけか、処分業も持っているか
- 委託契約の期間と更新の実績。単年度か複数年度か、何年続いているか
- 自治体依存度。売上に占める公共の割合。高ければ安定しますが、入札の結果に左右される面もあります
- 収集車両の保有台数と更新時期。簿価と実勢、次の更新にかかる負担
- ドライバーと作業員の確保。早朝勤務が基本の業種で、人の定着が続くか
- 産業廃棄物の許可を併せ持つか。持っていれば民間からの受注も取れます
この分野は、許可という参入障壁が価値の中心にあります。その一方で、許可は市町村の裁量に関わるため、株式譲渡で法人を残す形が取られることが多いのが実情です。事業譲渡にすると許可を取り直すことになり、そもそも取れる保証がありません。
産業廃棄物側の動きは「産業廃棄物処理業界の動向」に、許認可の引き継ぎ全般は「M&Aと許認可」に整理しています。
この数字の読み方。環境省の集計は市町村を単位にしたもので、収集や処理を担う事業者を単位にしたものではありません。また年度の値です。ごみの量が減っていることと、個々の事業者の受託状況が悪いことは別の話です。承継の検討では、全国の傾向ではなく、どの市町村と、どの区分の委託契約を、いつまで結んでいるかをご確認ください。