産業廃棄物処理業は、他の事業活動が続くかぎり需要がなくならない事業です。同時に、許可なく営むことができず、施設の設置にも厳しい手続が求められる、規制の強い分野でもあります。この「需要の安定」と「規制の強さ」の組み合わせが、業界の構造を決めています。本稿では、環境省の公表統計から現在地を整理します。

産業廃棄物の現在地|排出量と処理の内訳

環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度実績)」によれば、令和5年度の産業廃棄物の総排出量は3億6,725万トンでした。前年度の3億7,407万トンから約680万トン(約1.8%)の減少です。

処理の内訳は次のとおりです。

処理区分処理量割合
再生利用量2億79万トン54.7%
減量化量1億5,772万トン42.9%
最終処分量875万トン2.4%

出典:環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度実績)」より作成

最終処分に回るのは全体の2.4%にとどまり、半分以上が再生利用されています。産業廃棄物処理業が「捨てる仕事」ではなく「資源に戻す仕事」へと性格を変えてきたことが、数字にも表れています。中間処理の工程で、選別し、破砕し、脱水し、資源として出荷できる形にする技術が、事業の中核になっているということです。

どこから、何が出ているのか

排出の内訳を見ると、事業の受注構造を考えるうえでの手がかりが得られます。同調査によれば、業種別の排出量の上位は次のとおりです。

業種排出量割合
電気・ガス・熱供給・水道業(下水道業を含む)9,732万トン26.5%
農業・林業8,070万トン22.0%
建設業7,991万トン21.8%
パルプ・紙・紙加工品製造業2,730万トン7.4%
鉄鋼業2,196万トン6.0%

種類別では、汚泥が1億5,854万トン(42.1%)で最も多く、次いで動物のふん尿8,036万トン(21.9%)、がれき類6,068万トン(16.5%)です。上位3種類で全体の8割を占めます。

この構成は、処理業者が何に強みを持つかで事業の性質が変わることを意味します。汚泥の脱水・乾燥に強い会社、がれき類の破砕・再生砕石の製造に強い会社、有機性廃棄物の堆肥化やメタン発酵に取り組む会社では、必要な施設も、取引先も、収益構造も異なります。

とくにがれき類は、建設業の活動量に連動します。国土交通省の推計では分譲マンションのうち築40年以上が2025年末で158.8万戸、10年後には約2.0倍になる見込みとされ、総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)では空き家が900万2千戸で過去最多です。解体に伴う廃棄物の発生は、当面のあいだ続くと見るのが自然です。

処理の受け皿|施設数と最終処分場の残余年数

処理の受け皿については、環境省「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和5年度実績等)」が数字を示しています。

  • 中間処理施設——19,565件(前年比44件減)
  • 最終処分場——1,551件(前年度と同数)
  • 最終処分場の残存容量——1億7,741万立方メートル
  • 最終処分場の残余年数——20.3年

中間処理施設は微減、最終処分場は横ばいです。最終処分場は新設の合意形成が難しく、既存の施設が使われ続けている状況が読み取れます。残余年数20.3年という数字は、いますぐ逼迫するわけではないものの、長期的には確実に制約になることを示しています。

この構造は、最終処分場を保有している事業者の希少性を高めます。同時に、中間処理業者にとっては「どこに出すか」の確保が事業の生命線であることを意味します。

なお、同資料によれば令和5年度の広域認定業者による回収量は736,229トン、再生利用認定業者による再生利用量は44,858トンでした。

許可制度|24万件を超える許可と更新の実務

産業廃棄物処理業は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく許可を受けて営む事業です。環境省の同資料によれば、令和5年度末の産業廃棄物処理業の許可件数は248,458件(前年比6,552件増)、特別管理産業廃棄物処理業の許可件数は23,843件(同505件増)でした。

ここでいう「件数」は事業者数ではありません。許可は、収集運搬業と処分業の別、取り扱う廃棄物の種類、そして許可を出す自治体(都道府県・政令市)ごとに与えられるため、一つの事業者が多数の許可を保有することになります。広域で収集運搬を行う会社であれば、数十件の許可を持つことも珍しくありません。

許可には有効期間があり、5年ごとの更新が必要とされています。優良産廃処理業者認定制度の基準に適合すると認められた事業者については、許可の有効期間が7年に延長される扱いになっています。

監督も行われています。同資料によれば、令和5年度の産業廃棄物処理業に関する許可取消し等は316件(前年比86件増)、特別管理産業廃棄物処理業では15件(同7件増)、施設許可の取消し等は22件(同7件減)でした。

許可の区分・有効期間・更新手続は、廃棄物の種類や自治体の運用によって異なります。個別の判断にあたっては、所管の都道府県・政令市および専門家にご確認ください。

事業承継の観点で何が論点になるか

産業廃棄物処理会社の承継では、許可の扱いが最大の論点になります。

株式譲渡であれば、許可を受けている法人が存続するため、許可は一般に維持されると考えられています。ただし、役員の変更等については所定の届出が必要であり、また廃棄物処理法には欠格要件の定めがあるため、新たに役員に就任する方についても事前の確認が前提になります。

事業譲渡の場合は扱いが異なります。許可は一般に譲渡の対象とならないとされており、譲受側が自ら許可を取得していることが前提になるのが通常です。多数の自治体の許可を保有している会社ほど、事業譲渡による承継は現実的でなくなります。この違いから、産廃業界のM&Aでは株式譲渡が中心になります。

次に施設です。中間処理施設や最終処分場を保有している場合、施設の設置許可の内容、処理能力、稼働状況、周辺住民との協定、生活環境影響調査の履行状況が確認されます。土壌や地下水に関するリスクの確認も欠かせません。この点は「環境デューデリジェンス|土壌汚染と廃棄物のリスク確認」でも整理しています。

そして後継者です。帝国データバンクの2025年調査では国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。許可と施設を持つ会社は、それ自体が参入障壁を備えた事業であるため、引き継ぎ手が見つかりやすい分野でもあります。裏を返せば、廃業してしまえば許可も施設も社会から失われることになります。

M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと

一般に、次のような情報が確認されます。

  • 許可の一覧(自治体、収集運搬/処分の別、取り扱う廃棄物の種類、有効期限、優良認定の有無)
  • 処理施設の設置許可の内容(施設の種類、処理能力、設置年、稼働率)
  • 最終処分場を保有する場合の残存容量、埋立進捗、維持管理積立金の状況
  • 排出事業者ごとの売上構成、契約形態、契約期間、単価改定の履歴
  • マニフェスト(電子/紙)の運用状況と、法定期限内の報告実績
  • 行政指導・行政処分の履歴、周辺住民からの苦情と対応の記録
  • 周辺住民・自治体との協定の内容と、遵守状況
  • 車両・重機・処理設備の一覧と更新予定、有資格者(運搬・処理の技術管理者等)の在籍状況
  • 土壌汚染・地下水に関する調査の実施状況と結果

産廃業は、記録がそのまま信用になる事業です。マニフェストの運用と行政対応の記録が整っている会社は、それだけで評価が変わります。より実務的な論点は「産業廃棄物処理業のM&A|許可の承継と施設の評価」でも整理しています。

当社は成功報酬型のもと、産業廃棄物処理業を含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。守秘義務を徹底のうえ、初期の整理から対応いたします。

排出側の動きは「解体工事業界の動向|建築物の老朽化と分別解体の規制」でも整理しています。費用の考え方は料金体系のページに公開しています。

本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。

よくあるご質問

A.現実的でなくなる場合が多いのが実情です。許可は一般に譲渡の対象とならないとされており、事業譲渡では譲受側が自ら許可を取得していることが前提になるのが通常です。環境省の資料によれば令和5年度末の産業廃棄物処理業の許可件数は248,458件で、許可は収集運搬業と処分業の別、取り扱う廃棄物の種類、そして自治体ごとに与えられるため、広域で収集運搬を行う会社は数十件の許可を持つことも珍しくありません。この構造から、産廃業界のM&Aでは株式譲渡が中心になります。まずは自治体・区分・廃棄物の種類・有効期限・優良認定の有無を一覧にしてください。
A.産廃業は、記録がそのまま信用になる事業だからです。買い手が見るのは、マニフェスト(電子/紙)の運用状況と法定期限内の報告実績、行政指導・行政処分の履歴、周辺住民からの苦情と対応の記録、周辺住民・自治体との協定の内容と遵守状況です。環境省の資料によれば令和5年度の産業廃棄物処理業に関する許可取消し等は316件で、前年比86件増でした。許可が事業の前提である以上、運用の乱れは事業そのものの存続に関わります。記録が整い、指摘があった場合にどう是正したかを説明できる会社は、それだけで評価が変わります。
A.希少性と、それに伴う長期の負担の両方です。環境省の資料によれば、最終処分場は1,551件で前年度と同数、残存容量は1億7,741万立方メートル、残余年数は20.3年とされています。新設の合意形成が難しく既存の施設が使われ続けている状況で、保有していること自体が参入障壁になります。一方で買い手が確認するのは、施設の設置許可の内容、処理能力、設置年、稼働率、残存容量と埋立進捗、維持管理積立金の状況、生活環境影響調査の履行状況、そして土壌・地下水に関する調査の実施状況と結果です。長期の維持責任を伴うため、積立と調査の記録が揃っているかが交渉の速度を決めます。
A.そうではありません。株式譲渡であれば許可を受けている法人が存続するため許可は一般に維持されると考えられていますが、役員の変更等については所定の届出が必要です。また廃棄物処理法には欠格要件の定めがあるため、新たに役員に就任する方についても事前の確認が前提になります。買い手側の役員構成に確認が必要になるということですので、相手が決まった段階で早めに論点として乗せてください。届出の要否と期限は自治体の運用によって異なりますので、所管の都道府県・政令市および専門家にご確認ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら