障害福祉サービスのなかで、事業所数が最も多いのは居宅介護事業です。厚生労働省の公表統計によれば、令和6年10月1日現在で26,485事業所。次いで重度訪問介護事業の22,849事業所が続きます。

ただし訪問系の4つのサービスは、同じ方向に動いていません。増えているものと減っているものが分かれています。本稿ではその差を確認します。

本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

訪問系4サービスの明暗

厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)によれば、訪問系サービスの事業所数は次のとおりです。

事業の種類令和5年令和6年増減数増減率
居宅介護25,96726,485+518+2.0%
重度訪問介護22,91022,849△61△0.3%
同行援護8,3618,187△174△2.1%
行動援護2,9773,117+140+4.7%
(参考)短期入所8,1068,592+486+6.0%

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)より作成

居宅介護と行動援護が増え、重度訪問介護と同行援護が減っています。同じ「訪問して支援する」サービスでありながら、方向が分かれているということです。

4つの違いは支援の対象と内容にあります。居宅介護は入浴・排せつ・食事などの介護と家事援助、重度訪問介護は重度の肢体不自由等のある方への長時間の支援、同行援護は視覚障害のある方の外出支援、行動援護は知的障害・精神障害により行動が困難な方への支援です。

利用日数に表れる性質の違い

同資料によれば、令和6年9月中の利用状況は次のとおりです。

利用実人員利用者1人当たり利用日数(回数)
重度訪問介護26,979人26.2日(前年27.3日)
同行援護(障害者)31,866人6.0回(前年6.1回)
行動援護(障害者)17,752人5.8回(前年5.6回)
居宅介護 身体介護が中心(障害者)129,014人19.3回(前年19.8回)
居宅介護 家事援助が中心(障害者)129,854人8.8回(前年8.9回)

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)より作成

重度訪問介護は月26.2日——ほぼ毎日です。長時間の支援を継続的に提供するサービスであることが、この数字に表れています。一方、同行援護と行動援護は月6回前後で、外出の機会に応じた利用です。

この差は、事業としての性質を分けます。重度訪問介護は1人の利用者から安定した収入が立つ代わりに、人員を長時間拘束します。同行援護や行動援護は、1人当たりの収入は小さいものの、多くの利用者を抱えられます。

担い手15.5万人の資格構成

同資料によれば、常勤換算の従事者数は居宅介護事業で155,444人と、障害福祉の全事業のなかで最も多くなっています。

資格・区分居宅介護事業
総数155,444人
 介護福祉士86,869人
 実務者研修修了者14,342人
 初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級含む)42,081人
 旧介護職員基礎研修課程修了者1,964人
 旧ホームヘルパー1級研修課程修了者2,960人
 サービス提供責任者471人

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)より作成

介護福祉士が86,869人で、従事者の過半を占めます。

他の訪問系では、重度訪問介護事業が56,869人、同行援護事業が31,802人、行動援護事業が13,213人です。同行援護には同行援護従業者養成研修修了者が5,914人、行動援護には行動援護従業者養成研修修了者が2,716人在籍しています。サービスごとに必要な研修修了者が決まっていることが、この分野の参入と承継を規定します。

承継のときに見られる点

評価の目は次のようなところに向きます。

  • どのサービスの指定を持っているか。居宅介護だけか、重度訪問・同行援護・行動援護も併せ持つか。複数持っていれば、1人の利用者に複数のサービスを提供できます
  • 有資格者・研修修了者の在籍。同行援護と行動援護は専用の研修修了者が必要です
  • サービス提供責任者の確保。指定の要件に関わります
  • 利用者の構成。重度訪問介護の利用者が多い場合、1人の離脱が収入に大きく響きます
  • 介護保険の指定を併せ持つか。65歳を境に介護保険へ移る利用者を継続して支援できます
  • 相談支援事業所との関係。利用者の紹介経路

この分野は設備をほとんど持たない事業です。貸借対照表に表れる資産は限られる一方、事業の価値は人と利用者に乗っています。数字に表れない体制が、そのまま評価の対象になります。

分野全体の動きは「障害福祉サービス業界の動向」に、介護保険側の訪問介護は「訪問介護業界の動向」に整理しています。

この数字の読み方。厚生労働省の社会福祉施設等調査は施設・事業所を単位に集計したものです。1つの法人が複数を運営していることがあるため、法人の数はこれより少なくなります。また調査日時点の値で、その後の開設・廃止は含みません。承継の検討では、事業所の数ではなく、1つの法人がどの指定をいくつ持っているかをご確認ください。

よくあるご質問

A.別の制度です。障害者総合支援法に基づく居宅介護と、介護保険法に基づく訪問介護は、指定も報酬体系も異なります。両方の指定を持つ事業者もあります。
A.統計は数を示すだけで理由は示しません。事実として、令和6年は同行援護が174事業所(2.1%)、重度訪問介護が61事業所(0.3%)減少しています。
A.1人の利用者に複数のサービスを提供でき、利用者の状態が変わっても支援を継続できます。譲り受ける側にとっては、指定を個別に取り直す手間が省ける点も含めて検討材料になります。
A.資産の多寡と事業の価値は別のものです。人員体制・利用者・紹介元との関係といった、決算書に直接表れない部分が評価の対象になります。ご状況によりますので、個別にご相談ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら