訪問介護は、介護サービスの中で最も事業所数が多い分野のひとつです。厚生労働省の公表統計によれば、令和6年10月1日現在で37,264事業所、担い手である訪問介護員は520,612人にのぼります。
本稿では公表資料をもとに現在地を確認し、この分野の承継で見られる点を整理します。
本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
事業所数は増えているが、伸びは緩やか
厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によれば、令和6年10月1日現在の訪問介護は37,264事業所で、前年より359事業所(1.0%)増加しています。
| 年(各年10月1日現在) | 訪問介護 | 訪問看護ステーション(参考) | 居宅介護支援事業所(参考) |
|---|---|---|---|
| 令和2年(2020) | 35,075 | 12,393 | 39,284 |
| 令和3年(2021) | 35,612 | 13,554 | 39,047 |
| 令和4年(2022) | 36,420 | 14,829 | 38,538 |
| 令和5年(2023) | 36,905 | 16,423 | 37,784 |
| 令和6年(2024) | 37,264 | 18,042 | 37,258 |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成
5年間で6.2%の増加です。同じ在宅分野でも訪問看護ステーションが45.6%増えているのに対し、訪問介護の伸びは緩やかです。一方、ケアプランを作る居宅介護支援事業所は39,284から37,258へと減少しており、訪問介護に近い水準まで下がっています。
あわせて、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は1,441事業所(前年比6.2%増)、夜間対応型訪問介護は226事業所でほぼ横ばい、訪問入浴介護は1,641事業所で前年より24事業所(1.4%)の減少でした。
担い手52万人の資格構成
同資料によれば、訪問介護の訪問介護員は520,612人です。資格別の内訳(再掲)は次のとおりです。
| 資格 | 人数 |
|---|---|
| 介護福祉士 | 260,274人 |
| 初任者研修修了者 | 195,307人 |
| 実務者研修修了者 | 40,539人 |
| 旧ホームヘルパー1級研修課程修了者 | 9,640人 |
| 旧介護職員基礎研修課程修了者 | 4,890人 |
| 生活援助従事者研修修了者 | 1,573人 |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成
介護福祉士が26万人で、全体のおよそ半分を占めます。次に多いのが初任者研修修了者の19万5千人です。
資格の構成は、そのまま加算の取得可否に効きます。特定事業所加算などは有資格者の比率や体制が要件に含まれるため、人員名簿の中身が収益の構造を決めます。承継を検討される場合、ここを早い段階で整理しておくと相手方の検討が速く進みます。
営利法人が73.2%という構成
同資料によれば、訪問介護の開設(経営)主体は営利法人(会社)が73.2%と最も多く、社会福祉法人14.0%、医療法人5.4%、特定非営利活動法人(NPO)3.8%、協同組合1.5%、社団・財団法人1.5%と続きます。
| サービス | 営利法人(会社) | 社会福祉法人 | NPO |
|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 73.2% | 14.0% | 3.8% |
| 訪問入浴介護 | 77.3% | 20.0% | 0.3% |
| 地域密着型通所介護 | 76.6% | 12.1% | 5.1% |
| 訪問看護ステーション | 66.8% | 4.5% | 1.3% |
| 短期入所生活介護 | 9.2% | 86.2% | 0.4% |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成
介護サービスの中でも営利法人の比率が高いほうに入ります。株式会社が運営している事業所が多数派なので、株式譲渡という一般的な形で経営権を移せます。承継の選択肢という点では、取りやすい分野です。
ただし、指定は事業所ごとに受けるものです。株式譲渡であれば法人が変わらないため指定は原則そのまま残りますが、事業譲渡の形を取ると指定を取り直すことになります。実務の詳細は「訪問介護事業のM&A」をご覧ください。
承継のときに見られる点
訪問介護は建物や大型設備を持たない事業です。貸借対照表に表れる資産が少ない一方で、事業の価値のほとんどが人と利用者に乗っています。
そのため評価の目は、次のようなところに向きます。サービス提供責任者が確保できているか。訪問介護員の年齢構成と定着はどうか。居宅介護支援事業所からの紹介が特定の1か所に偏っていないか。加算をどこまで取れているか。
いずれも決算書だけでは分からない部分です。数字に表れない体制こそが、この分野では評価の対象になります。裏返せば、日々の運営で積み上げてきたものが、そのまま評価につながる分野でもあります。
分野全体の報酬改定と人材の論点は「介護業界の動向」に、24時間対応型の実務は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護のM&A」に整理しています。