卸売市場を通る荷は、大きく減りました。農林水産省の公表データによれば、青果の取扱数量は平成25年度の818万トンから令和5年度の633万トンへ、10年間で22.7%減。
ところが取扱金額は1兆9,178億円から1兆8,968億円へ、1.1%しか減っていません。本稿ではこの差が何を意味するのかを確認します。
本稿の数値は農林水産省「卸売市場データ集 令和6年度」(令和7年9月)によります。市場数・卸売業者数は令和6年度末、仲卸業者数・売買参加者数は令和5年度末、取扱金額は令和5年度の数値です。10年間の増減率は本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
市場の数はピークから3割減った
農林水産省「卸売市場データ集 令和6年度」(令和7年9月)によれば、中央卸売市場の数の推移は次のとおりです。
| 年度末 | 中央卸売市場数 | 開設都市数 |
|---|---|---|
| 昭和60年(1985) | 91 | 56 |
| 平成10年(1998) | 87 | 56 |
| 平成20年(2008) | 79 | 50 |
| 平成25年(2013) | 70 | 43 |
| 平成27年〜令和3年 | 64〜65 | 40 |
| 令和6年(2024) | 64 | 39 |
出典:農林水産省「卸売市場データ集 令和6年度」(令和7年9月)より作成
ピークの昭和60年91市場から、令和6年には64市場。29.7%減りました(本稿で算出)。開設都市も56から39へ減っています。
令和6年度末現在の内訳は次のとおりです。
| 部門 | 市場数 | 取扱金額(令和5年度) | 卸売業者数 | 仲卸業者数 | 売買参加者数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 計 | 64市場(39都市) | 37,436億円 | 153 | 2,685 | 19,845 |
| 青果 | 50市場(38都市) | 18,968億円 | 64 | 1,177 | 9,057 |
| 水産物 | 34市場(29都市) | 14,178億円 | 55 | 1,383 | 3,431 |
| 食肉 | 10市場(10都市) | 2,958億円 | 10 | 50 | 1,428 |
| 花き | 13市場(9都市) | 1,179億円 | 17 | 72 | 5,929 |
| その他 | 5市場(4都市) | 153億円 | 7 | 3 | ― |
出典:農林水産省「卸売市場データ集 令和6年度」(令和7年9月)より作成
卸売業者は全国で153社しかありません。青果64社、水産物55社、花き17社、食肉10社。極めて少数の事業者が担っていることが分かります。
数量は減り、単価は上がっている
取扱実績の10年間の変化は、部門によって大きく違います。
| 部門 | 平成25年度 数量 | 令和5年度 数量 | 10年増減 | 平成25年度 金額 | 令和5年度 金額 | 10年増減 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 青果 計 | 8,188千t | 6,332千t | △22.7% | 19,178億円 | 18,968億円 | △1.1% |
| 野菜 | 6,281千t | 4,989千t | △20.6% | 13,215億円 | 12,425億円 | △6.0% |
| 果実 | 1,907千t | 1,342千t | △29.6% | 5,963億円 | 6,543億円 | +9.7% |
| 水産物 計 | 1,925千t | 1,098千t | △43.0% | 16,014億円 | 14,178億円 | △11.5% |
| 食肉 計 | 224千t | 217千t | △3.1% | 2,475億円 | 2,958億円 | +19.5% |
| 花き | ― | ― | ― | 1,268億円 | 1,179億円 | △7.0% |
出典:農林水産省「卸売市場データ集 令和6年度」(令和7年9月)より作成
果実は数量が29.6%減ったのに金額は9.7%増。食肉は数量ほぼ横ばいで金額19.5%増。いずれも単価が大きく上がっていることを示します。
最も厳しいのは水産物です。数量43.0%減、金額11.5%減。単価は上がっているものの、数量の落ち込みを補いきれていません。
統計は理由までは示しませんが、市場を通さない流通(市場外流通)が増えていること、水産資源そのものが減っていることなどが背景として語られます。いずれもこの統計だけでは確認できません。
担い手が153社という意味
中央卸売市場の卸売業者はわずか153社です。これがこの分野の構造を決めています。
- 参入がほぼない。卸売業者になるには農林水産大臣の許可が必要で、市場ごとに定められた枠のなかで営みます
- 市場の統廃合が事業者の統廃合になる。市場が91から64へ減った過程で、卸売業者も減ってきました
- 仲卸業者は2,685社。卸売業者から買い、小売や飲食店に売る層です。こちらのほうが数が多く、経営規模は小さくなります
承継の実務で多いのは仲卸業者の側です。青果1,177社、水産物1,383社と、市場によっては1市場に数十社が入っています。数量が減るなかで、仲卸どうしが一緒になる動きが続いてきました。
なお、平成30年に改正された卸売市場法により、第三者販売や直荷引きの規制が原則として各市場の判断に委ねられるようになりました。市場の外と取引する自由度が上がったことは、事業の形にも影響します。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 卸売業者か、仲卸業者か、買参人か。市場での立場によって、許可の性質も事業の形もまったく違います
- 買参権・仲卸の許可。市場ごとに定められており、自由に売買できるものではありません。開設者(自治体)の承認が関わります
- 取扱品目と得意先。量販店向けか、飲食店向けか、専門店向けか。得意先の構成が収益の安定度を決めます
- 市場外流通の比率。市場を通さない取引をどれだけ持っているか。法改正で自由度が上がった部分です
- 売掛金の回収と与信。日々大量の荷が動く商売で、与信管理の体制が事業の安全性を左右します
- 目利きと人。仕入れの判断は属人的で、引き継ぎが難しい部分です
数量が減り、単価で支えられている市場です。自社の取扱がその中でどう動いてきたかを、数量と金額の両方で説明できるようにしておくと、話が具体的に進みます。
卸売業全般は「卸売業界の動向」、個別業種は「青果卸のM&A・事業承継」「食肉・鮮魚卸業界の動向」に整理しています。