林業の2024年は、めずらしい形になりました。金額は増えたのに、量は減ったのです。
林野庁の白書によれば、林業産出額は5,713億円で前年比2.9%増。一方、国産材の素材生産量は1,976万㎥で前年比4.3%減。本稿ではこの逆転の中身を確認し、承継の観点で何が焦点になるかを整理します。
本稿の数値は林野庁「令和7年度 森林・林業白書」(令和8年6月2日公表)によります(同白書が引用する農林水産省「林業産出額」「木材需給報告書」、林野庁「木材需給表」等を含みます)。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
産出額5,713億円、素材生産量1,976万㎥
林野庁「令和7年度 森林・林業白書」(令和8年6月2日公表)によれば、2024年の主な数値は次のとおりです。
| 項目 | 2024年 | 前年比 |
|---|---|---|
| 林業産出額 | 5,713億円 | +2.9% |
| うち木材生産(約6割) | 3,276億円 | +0.8% |
| 国産材の素材生産量 | 1,976万㎥ | △4.3% |
| 木材需要量 | 8,187万㎥ | +2.5% |
| 国産材供給量 | 3,481万㎥ | +1.4% |
| 木材輸入量 | 4,707万㎥ | +3.2% |
| 木材自給率 | 42.5% | △0.4ポイント |
| 建築用材等の自給率 | 52.9% | △2.4ポイント |
出典:林野庁「令和7年度 森林・林業白書」(令和8年6月2日公表)より作成
同白書によれば、産出額が増えた理由は栽培きのこ類の価格上昇と、燃料用チップ素材の生産量の増加です。つまり、産出額の伸びは木材そのものによるものではありません。木材生産に限れば0.8%増にとどまっています。
なお、特用林産物は林業産出額の約4割を占め、そのうち9割以上がきのこ類です。「林業」と聞いて思い浮かべる木材以外の部分が、この産業の4割を支えていることになります。
自給率が下がったのは、国産材が減ったからではない
木材自給率は42.5%で、前年より0.4ポイント下がりました。ただし、その読み方には注意が要ります。
同白書によれば、国産材供給量は3,481万㎥で1.4%増えています。減ってはいません。自給率が下がったのは、木材需要量の増加割合(2.5%)に比べて、国産材供給量の増加割合(1.4%)が小さかったためです。
つまり国産材は増えたが、需要の伸びに追いつかなかったということです。その差は輸入材が埋めました(輸入量3.2%増)。
建築用材等の自給率は52.9%で、前年より2.4ポイントの低下。こちらは下げ幅が大きくなっています。一方で同白書は、非住宅・中高層建築物における構造用製材の国産材使用割合が20%まで上昇したことにも触れています。用途によって国産材の入り方が違う、という段階にあります。
規模拡大が進んでいる
承継の観点で最も重要なのは、この項目です。
同白書によれば、1林業経営体当たりの平均素材生産量は増加しており、年間素材生産量が1万㎥以上の林業経営体による生産量が、全体の約7割を占めるまで伸展しています。白書はこれを「規模拡大が進行」と表現しています。
担い手の構成も明確です。
- 民間事業体や森林組合が、素材生産全体の約8割を担っている
- 林業経営体による素材生産量の約8割は、森林所有者からの受託や立木買い
- 森林組合数は602(2023年度)。白書は「規模の小さい組合も存在し経営基盤の強化が必要」と指摘
一方、山林を持つ側は零細です。同白書によれば、林家69万戸のうち、保有山林面積が1ha以上10ha未満の林家が88%を占めます。
山を持つ人は細かく分かれ、伐り出す事業者は大きくなっている。この非対称が、いまの林業の構造です。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 山林の所有か、受託か。素材生産の8割は受託や立木買いです。自社で山を持っているのか、他者の山から伐り出しているのかで、資産の中身も収益の性質も変わります
- 年間素材生産量。1万㎥以上の経営体が全体の7割を生産する構造なので、規模が譲り受ける側の関心に直結します
- 施業の受託先と継続年数。森林所有者・森林組合・自治体との関係
- 高性能林業機械の保有と更新時期。簿価と実勢、次の更新にかかる負担
- 作業員の年齢構成と資格。伐木等の業務に係る特別教育・技能講習の修了状況
- 森林経営計画の認定。補助事業の要件に関わります
- 山林の評価。立木は一般の不動産とは評価の考え方が異なり、樹種・林齢・搬出条件によって大きく変わります
規模拡大が進む分野では、規模の小さい事業者が単独で続けることが難しくなります。白書が森林組合について「経営基盤の強化が必要」と書いているのは、その裏返しです。
山林の権利の引き継ぎは「林業・素材生産業のM&A」に、環境分野の他業種は「産業廃棄物処理業界の動向」に整理しています。
この数字の読み方。白書の値は全国の合計で、年ごとに公表される集計です。地域差も、事業体ごとの差も表れません。素材生産量が伸びていることと、個々の事業体の採算が良いことは別の話です。承継の検討では、全国の傾向ではなく、その事業体が持つ森林の所在と樹齢、機械の保有状況、雇用している技能者の年齢構成をご確認ください。