就労継続支援には、雇用契約を結ぶA型と、結ばないB型があります。同じ制度の中の2つの類型ですが、数の動きは正反対です。

厚生労働省の公表統計によれば、令和6年10月1日現在でA型は4,634事業所(前年比0.9%減)、B型は17,973事業所(同7.5%増)。本稿ではこの差を確認し、承継の観点で何が焦点になるかを整理します。

本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

A型とB型で、方向が分かれている

厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)によれば、就労系サービスの事業所数は次のとおりです。

事業の種類令和5年令和6年増減数増減率
就労継続支援(A型)4,6764,634△42△0.9%
就労継続支援(B型)16,71317,973+1,260+7.5%
就労移行支援3,3013,240△61△1.8%
就労定着支援1,8091,885+76+4.2%
自立訓練(生活訓練)1,6301,681+51+3.1%

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)より作成

B型が1,260事業所増える一方、A型は42事業所減りました。就労移行支援も61事業所の減少です。

この差は利用者の側にも表れています。同資料によれば、令和6年9月中の利用実人員はB型が502,992人(前年461,003人)と増える一方、A型は103,278人(前年108,488人)と減っています。事業所も利用者も、A型だけが減っているということです。

A型とB型は、事業の性質が違う

この差は、制度の作りから説明できます。

A型は利用者と雇用契約を結びます。したがって最低賃金が適用され、労働保険・社会保険の対象にもなります。事業所は、給付費に加えて生産活動による収入から賃金を支払える構造を作らなければなりません。

B型は雇用契約を結びません。利用者に支払われるのは工賃で、最低賃金の適用はありません。その分、生産活動の収益性に対する要求は緩やかになります。

この違いは、譲り受ける側の見方を大きく変えます。A型は「福祉事業と雇用事業の両方」を見る必要があり、生産活動の中身——何を作り、誰に売っているか——が評価の対象に入ります。B型ではそこまでの比重にはなりません。

利用者1人当たり利用日数にも差があります。同資料によれば、A型が9.8日(前年11.3日)、B型が8.9日(前年9.8日)。いずれも前年より減っています。

従事者数から見た規模

同資料によれば、常勤換算の従事者数はA型27,357人、B型101,309人です。

A型B型
事業所数4,63417,973
利用実人員(令和6年9月)103,278人502,992人
常勤換算従事者数27,357人101,309人
 うちサービス管理責任者4,099人15,970人
 うち生活支援員7,646人33,791人
 うち職業指導員11,770人36,680人

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況」(令和6年10月1日現在)より作成

1事業所あたりで見ると、A型は従事者5.9人・利用者22.3人、B型は従事者5.6人・利用者28.0人という計算になります(いずれも本稿で単純に割ったもので、公表値ではありません)。

特徴的なのは職種の構成です。A型は職業指導員が11,770人で従事者の43.0%を占めるのに対し、B型は36,680人で36.2%です。A型のほうが生産活動に人を割いていることが、数字にも表れています。

承継のときに見られる点

評価の目は次のようなところに向きます。

  • A型か、B型か。最低賃金の負担があるかどうかで、収益構造がまったく違います
  • 生産活動の中身と取引先。とくにA型では、賃金を支払う原資がどこから来ているかが問われます
  • サービス管理責任者の在籍。指定の要件に関わります。経営者ご本人が兼ねている場合、退任の設計が必要になります
  • 定員と充足率。定員に対して何割埋まっているか
  • 報酬改定への対応。加算の取得状況と、直近の改定で収入がどう動いたか
  • 相談支援事業所や特別支援学校との関係。利用者の紹介経路が特定の1か所に偏っていないか

B型が伸びている分野であることは、参入が続いているということでもあります。同じ地域に事業所が積み上がるほど、利用者の確保と職員の定着が評価の焦点になります。

分野全体の動きは「障害福祉サービス業界の動向」に、実務は「障害福祉サービス事業のM&A」に整理しています。

この数字の読み方。厚生労働省の社会福祉施設等調査は施設・事業所を単位に集計したものです。1つの法人が複数を運営していることがあるため、法人の数はこれより少なくなります。また調査日時点の値で、その後の開設・廃止は含みません。承継の検討では、事業所の数ではなく、1つの法人がどの指定をいくつ持っているかをご確認ください。

よくあるご質問

A.統計は数を示すだけで理由は示しません。事実として、厚生労働省の統計では事業所数が4,676から4,634へ、利用実人員も108,488人から103,278人へ、いずれも減少しています。A型は雇用契約を伴い最低賃金が適用される点で、B型と収益構造が異なります。
A.一概には言えません。B型は事業所数・利用者数とも増えていますが、その分だけ同じ地域の競合も増えています。A型は生産活動の中身が評価の対象になる分、事業としての説明が要ります。
A.株式譲渡では法人が存続するため指定は原則そのまま残ります。事業譲渡では指定を受け直すことになります。サービス管理責任者などの人員要件を満たし続けられるかも併せて確認が必要です。顧問の専門家にもご確認ください。
A.同統計ではA型が11.3日から9.8日、B型が9.8日から8.9日へ、いずれも前年より減っています。利用日数は報酬に直結するため、事業所ごとの状況を確認する必要があります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら