透析医療は、長く「増え続ける分野」として語られてきました。その前提が変わりつつあります。

日本透析医学会の統計調査によれば、2024年末の透析患者は337,414人で、前年に続き減少。新規に透析を始めた患者も36,404人で、2023年から2,360人減りました。本稿ではこの転換を確認し、承継の観点で何が焦点になるかを整理します。

本稿の数値は日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

患者数も導入も減っている

日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」によれば、2024年末の主な数値は次のとおりです。

項目2024年
透析患者総数337,414人(前年に続き減少)
人口100万人あたり患者数2,725.4人
新規導入患者数36,404人(2023年から2,360人減)
患者の平均年齢70.27歳
調査対象施設4,512施設
回答施設4,447施設(回答率98.6%)

出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」より作成

この分野の統計は、回答率98.6%という非常に高い水準で集められています。ほぼ全数に近い実態と考えてよい数字です。

患者総数が減るのは、長期のトレンドから見れば大きな変化です。透析患者は数十年にわたって増え続けてきました。その増加が止まり、減少に転じた状態が続いているということになります。

さらに重要なのは導入患者数の減少です。新しく透析を始める人が1年で2,360人減ったということは、患者総数の減少が今後も続く方向に働きます。

なお、この統計は施設調査と患者調査の2本立てで行われています。対象4,512施設のうち4,447施設が回答しており、統計としての精度は他の業界統計より高い水準にあります。業界の実態を論じるうえで、これほど網羅性の高い数字が毎年出る分野は多くありません。

平均年齢70.27歳という意味

患者の平均年齢は70.27歳です。同学会の統計によれば、原疾患の内訳は次のとおりです。

原疾患割合
糖尿病性腎症39.2%
慢性糸球体腎炎23.0%
腎硬化症14.5%

出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」より作成

最も多いのは糖尿病性腎症で4割近くを占めます。

平均年齢が70歳を超えているということは、患者の多くが高齢であり、通院や送迎の負担が事業の設計に直結するということです。週3回の通院が基本となる治療であり、施設と自宅の距離が通い続けられるかを左右します。

この点は、承継の場面で商圏の評価に直結します。透析施設は、患者が通える範囲でしか患者を得られません。

治療形態の内訳

同学会の統計によれば、2024年の治療形態は次のとおりです。

治療形態割合
血液透析濾過(HDF)63.3%
血液透析(HD)33.2%
腹膜透析(PD)等3.2%

出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」より作成

血液透析濾過(HDF)が6割を超えています。かつて主流だった血液透析(HD)は33.2%にとどまります。

HDFはより高度な水処理設備と、専用のコンソール(透析装置)を必要とします。つまり設備投資の水準が上がっているということです。

腹膜透析(PD)は3.2%で、在宅で行える治療形態ですが、依然として少数です。

この構成は、施設の設備更新の負担に直結します。患者が減る局面で設備投資の水準は上がる——これがこの分野の経営を難しくしている要素です。

承継のときに見られる点

評価の目は次のようなところに向きます。

  • 患者数と、直近3年の推移。全国では減少局面に入っています。自院がその中でどう動いてきたかが出発点です
  • ベッド数と稼働(クール数)。1日2クールか3クールか。稼働の余地が残っているか
  • 透析装置(コンソール)の台数と更新時期。耐用年数が来れば大きな支出になります。HDF対応かどうかも確認されます
  • 水処理設備の状態。透析用水の水質管理は治療の質に直結し、更新負担も大きい設備です
  • 医師・看護師・臨床工学技士の確保。とくに臨床工学技士は、この分野に固有の職種です
  • 送迎体制。車両と運転者。高齢患者の多い分野で、通院の負担を下げる要素になります
  • 法人格。医療法人であれば持分の有無によって手順が変わります
  • 紹介元の医療機関との関係。新規患者の入り口です

患者数が全国で減り始めた分野では、商圏内の患者をどう維持するかが評価の中心になります。施設数は大きく減っていないため、限られた患者を巡る状況は以前より厳しくなります。だからこそ、近隣の施設どうしがまとまる形での承継が出てきます。

病院全体の動きは「病院業界の動向」に、実務は「透析クリニックの承継・M&A」に整理しています。

よくあるご質問

A.日本透析医学会の統計では、2024年末の透析患者総数は337,414人で、前年に続き減少しています。新規導入患者も36,404人と、2023年から2,360人減りました。
A.全国の総数が減っていることと、個々の施設の患者数は別です。透析は週3回の通院が基本で商圏が限られるため、地域ごとの状況によって大きく異なります。ご検討の地域については個別に確認が必要です。
A.同学会の統計では血液透析濾過(HDF)が63.3%、血液透析(HD)が33.2%です。HDFはより高度な水処理設備と専用のコンソールを要します。設備の更新時期と対応状況は、承継の場面で確認される項目です。
A.個人開設の診療所でも運営はできますが、規模が大きくなると医療法人化されていることが多くあります。法人格によって承継で取り得る手順が変わりますので、顧問の専門家にもご確認ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら