協和キリンは2023年10月5日、英国のバイオ医薬品企業Orchard Therapeutics plc(NASDAQ: ORTX、本社:英国ロンドン)の発行済み株式の100%を取得して子会社化するための手続きを開始することを決定し、同日に取得に関する合意内容を定めるTransaction Agreementを締結したと公表しました。
開示された事実
| 譲受(買い手) | 協和キリン株式会社(4151・東証プライム) |
|---|---|
| 譲渡(売り手) | Orchard Therapeutics plc の全株主(NASDAQ上場会社。開示資料に記載された大株主は投資運用会社3社) |
| 譲渡対象 | Orchard Therapeutics plc(造血幹細胞遺伝子治療(HSC-GT)の開発・商業化) |
| 所在地 | 英国ロンドン |
| 手法 | 英国会社法に基づくScheme of Arrangement(SOA)により、全株主の保有する株式を現金で取得して100%子会社化。NASDAQは上場廃止となる予定 |
| 対価 | 1ADS当たり16.00米ドル、約387.4百万米ドル(約573億円。1米ドル=148円で計算)。FDAによる米国販売承認が得られた場合は追加で1ADS当たり1.00米ドルを支払い、1ADS当たり17.00米ドル、約477.6百万米ドル(約707億円)となる(出典:協和キリン株式会社 2023年10月5日公表資料) |
| 日程 | 2023年10月5日 取締役会決議・Transaction Agreement締結/2024年第1四半期(予定) 対象会社株主総会・英国裁判所審問・SOA効力発生とNASDAQ上場廃止・株式譲渡実行 |
取得は英国会社法に基づくScheme of Arrangement(SOA)の手続きで行われ、全株主の保有する株式を現金で取得する予定です。SOAの実施には、対象会社の株主総会における承認(投票議決権ベースで75%以上かつ出席投票株主の頭数の過半数)と英国裁判所による承認等が必要です(出典:協和キリン株式会社 2023年10月5日公表資料)
取得株式数は22,727,150株(議決権18,156,618個、2023年10月3日現在)で、取得前の議決権所有割合は0%、取得後は100%です(出典:協和キリン株式会社 2023年10月5日公表資料)
取得価額は1ADS当たり16.00米ドル、約387.4百万米ドル(約573億円。1米ドル=148円で計算)です。FDAによるOTL-200の米国販売承認が得られた場合、株主は追加で1ADS当たり1.00米ドルを受領する権利を持ち、条件が達成されると取得価格は1ADS当たり17.00米ドル、約477.6百万米ドル(約707億円)となります(出典:協和キリン株式会社 2023年10月5日公表資料)
対象会社は2015年設立で、造血幹細胞遺伝子治療(HSC-GT)の開発・商業化を行っています。2023年6月30日現在の資本金は29,456千米ドル、大株主はRA Capital Management, LPが25.7%、Deep Track Capital LPが9.0%、Zentree Investment Management Pte Ltdが8.3%です(出典:協和キリン株式会社 2023年10月5日公表資料)
対象会社の2022年12月期は連結売上高22,655千米ドル、連結営業損失127,088千米ドル、親会社株主に帰属する当期純損失150,660千米ドル、連結純資産98,264千米ドルです。開示資料は、対象会社が公表した10-Kに記載の数値に基づくと注記しています(出典:協和キリン株式会社 2023年10月5日公表資料)
開示資料は、対象会社が欧州でライソゾーム病の適応を有する製品を上市し、米国でも承認審査中であることを記載しています。業績・財政状況への影響は、明らかになった時点で速やかに開示するとしています。
出典: 協和キリン株式会社「英国のバイオ医薬品企業Orchard Therapeutics plc社株式取得(子会社化)に向けた契約の締結に関するお知らせ」(2023年10月05日公表)
中小企業の経営者は、どう読むか
上場している会社を丸ごと買うときは、賛成しなかった株主の株まで含めて集める仕組みが要ります。国ごとに決まった手続きがあり、裁判所が関わる国もあります。
株主の数が多い会社では、全株を集めるのに株主総会の決議と承認が必要です。株主が一人か二人の中小企業なら、その人の意思だけで決まります。手続きの重さは、株主の数で変わります。
価格が二段になっています。先に払う分と、ある条件が満たされたときに払う分です。将来の見通しに差があるとき、こうして分けて折り合いをつけます。
中小企業の譲渡でも同じ考え方は使えます。引き渡したあとの成績に応じて追加で払う約束は、条件の書き方しだいで揉めるので、何をもって達成とするかを契約に落とし込みます。
買い手は、自社の強みと相手の技術を掛け合わせると説明しています。買う理由を自分の言葉で言えるかどうかは、売り手が相手を見極める手がかりにもなります。
対象会社は営業損失を続けていました。それでも対価が付くのは、売っている物ではなく、作りかけの技術に値が付いているからです。
完了までに数か月を見ています。公表した日と、実際に株が動く日は別です。