KDDIは2024年11月7日、東京証券取引所スタンダード市場に上場する株式会社ラックを完全子会社化することを目的として、公開買付けを実施することを決定したと公表しました。買い手は公表時点で対象会社株式9,784,000株(所有割合31.59%)を所有する筆頭株主で、対象会社を持分法適用関連会社としています(出典:KDDI株式会社 2024年11月7日公表資料)。
開示された事実
| 譲受(買い手) | KDDI株式会社(9433・東証プライム) |
|---|---|
| 譲渡対象 | 株式会社ラック(東証スタンダード)(情報セキュリティサービス・システム開発) |
| 所在地 | 東京都 |
| 手法 | 公開買付け(TOB)。既に持分法適用関連会社である対象会社を完全子会社化する。成立後に株式等売渡請求または株式併合を実施する二段階買収 |
| 対価 | 1株1,160円。買付代金24,573百万円(買付予定数21,184,250株×1,160円)。買付予定数の下限10,659,600株(所有割合34.42%)、上限なし |
| 日程 | 公表 2024年11月7日/公開買付けの開始は9つの前提条件の充足を条件に2024年11月下旬を目途/買付け等の期間は法令の最短20営業日より長い30営業日を予定 |
買付価格は1株1,160円です。開示資料には、買い手が2024年10月1日に910円を提案したのに対し、対象会社から少数株主の利益に配慮する観点で見直しの要請を受け、10月17日に1,080円、10月26日に1,140円、10月30日に1,160円と提案を重ねた経緯が日付入りで記載されています(出典:KDDI株式会社 2024年11月7日公表資料)。対象会社は繰り返し「企業価値や完全子会社化によるシナジーが適切に反映されたものと評価できない」「賛同・応募推奨の意見を表明することのできる水準ではない」として見直しを求めています。
買付代金は24,573百万円で、買付予定数21,184,250株に買付価格1,160円を乗じた金額です。買付予定数の下限は10,659,600株(所有割合34.42%)で、上限は設定されていません(出典:KDDI株式会社 2024年11月7日公表資料)。
買付け等の期間は、法令に定められた最短期間である20営業日より長い30営業日に設定されており、開示資料は、少数株主の応募についての適切な判断機会と、買い手以外の者による買付け等の機会が確保されているとしています(出典:KDDI株式会社 2024年11月7日公表資料)。
公開買付契約について開示資料は、買い手が対象会社の商号及びブランドの価値を尊重した事業運営を行うことを定めていること、本取引後に対象会社の従業員の解雇や雇用条件等の不利益変更を行う予定はなく、決済の開始日時点における対象会社グループの従業員の雇用を維持することに同意し、その雇用条件(福利厚生を含む)を合理的な理由なく不利益に変更することを要請しないことを定めていると記載しています。公開買付けの開始は9つの前提条件の充足を条件に2024年11月下旬を目途としています。
中小企業の経営者は、どう読むか
この案件でいちばん学べるのは、断り続けた結果です。最初の提示から最後の価格まで、三割近く上がっています。しかも上がった理由は毎回書かれています。対象会社の取締役会が「この水準では賛同できない」と伝えたからです。最初に出てきた金額は、結論ではありません。
断るときに、理由が示されています。企業価値と、一緒になることで生まれる相乗効果が反映されていない、という言い方です。ただ「高くしてほしい」ではなく、何が足りないのかを言っています。中小企業の交渉でも、根拠のある返し方をするかどうかで結果が変わります。
買い手はすでに三割強を持つ筆頭株主でした。それでも残りを買うために、この交渉を重ねています。株主として近い相手だからといって、条件が甘くなるわけではありません。
契約には、商号とブランドを尊重すること、従業員の雇用を維持すること、雇用条件を合理的な理由なく不利益に変更しないことが書き込まれています。売り手が最後まで気にするのはここです。相手がこれを契約に書けるかどうかは、譲渡先を選ぶときの判断材料になります。口頭の約束は残りません。
公開買付けの期間が、法令の最短より長く設定されています。他に買いたい人が名乗り出る余地を残すためだと明記されています。比べる機会を確保するという考え方は、中小企業の譲渡でも同じです。