出光興産は2024年11月12日、東京証券取引所スタンダード市場に上場するアグロ カネショウを完全子会社化することを目的として、公開買付けを実施することを決議したと公表しました。公表時点で買い手は対象会社株式を所有していません。
開示された事実
| 譲受(買い手) | 出光興産株式会社(5019・東証プライム) |
|---|---|
| 譲渡対象 | アグロ カネショウ株式会社(東証スタンダード)(農薬の製造・販売) |
| 所在地 | 東京都千代田区 |
| 手法 | 公開買付け(TOB)。成立後に株式併合を行い完全子会社化する二段階買収 |
| 対価 | 1株1,900円。買付代金23,020,348,700円(買付予定数12,115,973株×1,900円)。買付予定数の下限8,077,300株(所有割合66.67%)、上限なし |
| 日程 | 取締役会決議 2024年11月12日/公開買付開始公告・届出書提出 2024年11月13日/買付け等の期間 2024年11月13日〜12月24日(30営業日)/決済の開始日 2024年12月30日 |
買付価格は1株1,900円です。開示資料には、2024年10月21日の終値1,359円に対して17.73%、過去1ヶ月間の終値単純平均1,339円に対して19.49%、過去3ヶ月間の1,281円に対して24.90%、過去6ヶ月間の1,231円に対して29.98%のプレミアムが付与されているとの記載があります(出典:出光興産株式会社 2024年11月12日公表資料)。買い手は当初1,600円を提案し、その後1,900円となった経緯が記載されています。
買付代金は23,020,348,700円で、買付予定数12,115,973株に買付価格1,900円を乗じた金額です。買付予定数の下限は8,077,300株(所有割合66.67%)で、上限は設けられていません(出典:出光興産株式会社 2024年11月12日公表資料)。開示資料は、完全子会社化のために必要な株式併合の手続には会社法第309条第2項に規定する株主総会の特別決議が要件とされるため、買い手単独でその要件を満たせるように下限を設定したと説明しています。
買付け等の期間は2024年11月13日から12月24日までの30営業日です。開示資料は、法令に定められた最短期間が20営業日であるところ30営業日とすることで、株主に応募の判断機会を確保するとともに、対抗的買収提案者による買収提案の機会を確保し、いわゆる間接的なマーケット・チェックを実施していると記載しています(出典:出光興産株式会社 2024年11月12日公表資料)。対象会社と買い手の間で、対抗的買収提案者との接触を過度に制限する合意は行われないとしています。
対象会社の従業員について、開示資料は、本取引後も各種制度・処遇等は基本的に現状維持を前提としており、雇用を維持する方針であると記載しています。また、中間持株会社を設立し両社より役員を派遣してシナジーの最大化を目指すことも検討しているとしています。決済の開始日は2024年12月30日です(出典:出光興産株式会社 2024年11月12日公表資料)。
中小企業の経営者は、どう読むか
応募の下限が三分の二に置かれています。理由も書かれています。残った少数株主の株式をまとめて買い取る手続には、株主総会の特別決議が必要だからです。特別決議は三分の二以上の賛成で通ります。会社を完全に自分のものにしたい買い手が、まず三分の二を目標にするのはこのためです。
この考え方は上場企業に限りません。中小企業でも、株式が親族や元役員に分散していると、後から一つにまとめる場面で同じ数字が出てきます。何割を集めれば何ができるのかは、譲渡の前に一度整理しておく価値があります。
買付けの期間が、法令の最短より長く設定されています。他に買いたい人が名乗り出る余地を残すためだと明記されています。売り手側の株主にとっては、比べる機会が増えるということです。中小企業の譲渡でも、一社だけと話すのか、複数に当たるのかで結果は変わります。
価格は初回の提案から上がっています。交渉の経緯が日付入りで開示資料に残っています。最初に出てきた金額が結論ではありません。根拠を示して返すという作業があって、この差が生まれています。
従業員の処遇について「基本的に現状維持を前提とし、雇用を維持する方針」と明記されています。売り手が最後まで気にするのはここです。相手がこれを文書で言えるかどうかは、譲渡先を選ぶときの判断材料になります。口頭の約束は残りません。