仲介会社を比較するとき、多くの方が料率表と最低手数料を並べます。しかし実際には、料金表に現れない条件のほうが、総額と結果を大きく左右することがあります。専任の期間、テール条項の範囲、中途解約の可否、報酬がどの時点で発生するか——これらは契約書を読まないと分かりません。本稿では、金額以外に確認すべき項目をチェックリストの形で整理します。

なぜ金額だけでは比べられないのか

料率と最低手数料は、比較しやすい数字です。しかしこの二つだけで判断すると、重要な差を見落とします。

第一に、料率を掛ける基準額の定義が会社によって違います。株式価値のみを基準とする方式と、負債を加える移動総資産方式では、同じ会社でも基準額が倍以上変わることがあります。当社は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)を採用しています。

第二に、成約しなかった場合の負担が体系によって違います。着手金や月額報酬がある体系では、成約に至らなくても支払った分は戻りません。当社は相談料・着手金・月額報酬を0円としています。

第三に、契約の制約が結果を左右します。専任期間が長く中途解約ができない契約であれば、進め方に納得できなくても変えられません。金額が同じでも、選択の自由度が違えば、結果は変わります

チェックリスト①|報酬に関する条項

まず、報酬そのものに関わる項目です。契約書の報酬条項を読みながら確認してください。

確認項目見るべきところ
基準額の定義株式価値のみか、負債を加えるか、オーナー受取額か
料率金額帯ごとの率。全体に一律ではなく段階適用か
最低手数料金額。税別か税込か。適用される条件
着手金・月額報酬金額。成功報酬から控除されるか。返金の可否
中間金金額の決め方、支払時期、控除、返金の可否
報酬の発生条件何をもって成約とするか。クロージングか、最終契約締結か
価格変動時の再計算最終価格で算定するか、基本合意の金額か
実費別途請求されるか。上限の定めはあるか

とくに報酬の発生条件は見落とされがちです。「最終契約の締結をもって報酬が発生する」と定められていると、クロージングに至らなかった場合でも報酬が請求される余地があります。クロージング(決済完了)を条件とするのが売り手にとっては素直です。

当社の場合、成功報酬はクロージング時にお支払いいただきます。中間金は基本合意時で成功報酬額の10%、成約時の成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。ただし、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。

チェックリスト②|契約の期間と解約

次に、契約そのものの枠組みです。ここが結果を左右します。

  • 契約形態——専任(独占)か非専任か
  • 契約期間——何か月か。6か月か、1年か
  • 自動更新——更新の定めがあるか。更新を止める手続と期限は
  • 中途解約——できるか。予告期間は。違約金の定めはあるか
  • テール条項——契約終了後の期間、対象範囲、紹介先リストの明示
  • 資料の返還・廃棄——終了時に提供した資料はどうなるか

自動更新の条項には注意してください。更新を止める意思表示の期限が定められている場合、それを過ぎると自動的に契約が続きます。専任契約が続けば、他社に相談することもできません。

また、テール条項の対象範囲は重要です。紹介先のリストが明示されていない契約では、終了後に「あの会社も当社が紹介した」と主張される余地が残ります。終了時に紹介先を書面で確定させられるかを確認してください。詳しくは「専任契約とテール条項」で整理しています。

チェックリスト③|体制と関与の実態

契約書には書かれていないが、結果に直結する項目です。面談の場で率直に質問してください。

  • 担当者は誰か——初回面談に来た人が、最後まで担当するのか
  • 経験——その担当者が関与した案件の性質。自社に近い業種・規模の経験はあるか
  • 体制——担当者は一人か、チームか。不在時の対応は
  • 同時に担当する案件数——どれくらいの密度で関与できるのか
  • 買い手候補の見立て——どういう先を想定しているか。具体的に説明できるか
  • 不利益な情報の説明——うまくいかない可能性について、率直に話してくれるか

最後の項目は、判断材料として有効です。良いことしか言わない相手は、信頼の対象になりません。M&Aは成約しないこともありますし、想定より価格が下がることもあります。それを事前に伝えてくれるかどうかは、その後の関係を予測させます。

初回面談で確認すべき質問は「仲介会社に必ず聞くべき質問」でリストにしています。あわせてご覧ください。

チェックリスト④|利益相反への向き合い方

仲介という形態には、構造的な論点があります。売り手と買い手の双方から手数料を受け取る形(いわゆる両手)では、双方の利益が対立する場面で、どちらの立場に立つのかが問われます。

これは仲介という形態そのものに内在する性質であり、直ちに不当というものではありません。中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)でも、仲介者が双方から手数料を受領する場合に、その旨を明示することなどが求められています。

確認すべきは次の点です。①買い手側からも手数料を受け取るのか ②その金額の水準 ③利益が対立する場面でどう対応するのか ④その説明を契約前に書面で受けられるか

買い手側の手数料負担は、譲渡価格の交渉にも影響し得ます。買い手にとっては、手数料も含めた総支出が投資判断の基準になるためです。この論点は「M&A仲介の両手取引とは」「買い手が払う手数料」で整理しています。

比較表を自分で作る

複数社を比べるなら、自分で表を作るのが確実です。各社の説明を聞きながら、同じ項目を埋めていきます。

比較項目確認方法
自社の場合の手数料見込み決算書を渡して試算してもらう
成約しなかった場合の負担額段階ごとに、いくら出ていくかを聞く
専任期間と解約の可否契約書の該当条項を示してもらう
テール条項期間と対象範囲。リストの明示があるか
担当者と体制面談で直接確認する
買い手側からの手数料受け取るか、水準はどの程度か

この表を埋める過程そのものが、判断材料になります。質問に対して明快に答えられるか、書面で示せるか、急かさずに時間をくれるか——応対の仕方から分かることは少なくありません。

当社では、ご契約の前に総額の目安を書面でご提示し、契約書の条項についてもご質問にお答えします。ご相談の段階で費用が発生することはありません。他社と比較検討されている場合も、遠慮なくお伝えください。ご契約やご決断を急がせることはいたしません。

よくあるご質問

A.いいえ。料率を掛ける基準額の定義が会社によって異なります。株式価値のみを基準とする方式と、負債を加える移動総資産方式では、同じ会社でも基準額が倍以上変わることがあります。また最低手数料の水準や、着手金・月額報酬の有無によっても総額は変わります。自社の数字で試算してもらってください。
A.報酬の発生条件、専任期間と中途解約の可否、テール条項の三つです。とくに報酬の発生条件が「最終契約の締結」となっていると、クロージングに至らなくても報酬が請求される余地があります。またテール条項は紹介先リストが明示されているかを確認し、契約終了時に書面で確定できるようにしておいてください。
A.仲介という形態に内在する論点で、直ちに不当というものではありません。中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)でも、双方から手数料を受領する場合にその旨を明示することなどが求められています。買い手側の負担は譲渡価格の交渉にも影響し得ますので、受領の有無と水準、利益が対立する場面での対応を契約前にご確認ください。

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契約書の条項から、ご説明します。

料金だけでなく、専任期間・テール条項・解約の条件まで、ご契約の前に明示します。急がせることはいたしません。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら