M&A仲介会社との初回面談は、通常1〜2時間です。その限られた時間で、経営者様は自社の話をし、相手の説明を聞き、そしてこの会社に会社の将来を託せるかを判断する材料を集めなければなりません。
選び方の一般的な観点は「M&A仲介会社の選び方|失敗しない7つのチェックポイント」で整理しています。本稿はそれを面談の場で使える形に落とし込み、実際に口に出す質問の文言としてまとめました。印刷して持参していただいても構いません。
質問の中身より、答え方に相手が表れる
最初に、質問リストの使い方についてお伝えします。
これから挙げる質問には、それぞれ「望ましい答え」があります。しかし実際に見ていただきたいのは、答えの内容そのものより答え方です。
- 即答できるか:自社の体系や運用を把握していれば、迷わず答えられます
- 具体的か:「ケースバイケースです」で終わるか、条件を挙げて説明するか
- 不利なことも言うか:自社にとって都合の悪い点を、聞かれれば正直に答えるか
- 幅を持たせるか:断定できないことを断定しないか。特に価格の見立てで顕著に表れます
- 書面で確認できるか:口頭の説明を、契約書や資料で裏づけられるか
質問への反応そのものが、その後の数か月から1年を一緒に過ごす相手として適切かどうかの判断材料になります。
① 費用について聞くこと
最も明確に答えられるべき分野です。ここで曖昧さが残る相手は避けたほうがよいでしょう。
聞くこと
- 相談料、着手金、月額報酬はありますか。あるとすれば、いくらですか
- 中間金はありますか。いつ、いくら支払うのですか
- 中間金は、成功報酬から差し引かれますか
- 基本合意の後に不成立となった場合、中間金は返金されますか
- 成功報酬は、何を基準額として計算しますか
- 成功報酬に最低金額はありますか。いくらですか
- これら以外に発生する実費はありますか(交通費、資料作成費など)
- 弁護士・税理士など外部の専門家の費用は、別途必要ですか
見方
特に重要なのが、成功報酬の基準額です。基準額の取り方には複数の方式があり、どれを採用するかで金額が変わります。譲渡対価だけを基準とする方式、譲渡対価に負債を加えた移動総資産を基準とする方式などがあり、どの方式かを明示できることが最低条件です。
また、最低金額の有無は必ず確認してください。小規模な案件では、料率計算の結果より最低金額のほうが上回ることがあり、実質的な負担はそこで決まります。
参考までに、当社プラチナパートナーズの体系をご説明します。相談料・着手金・月額報酬は0円です。成功報酬は移動総資産レーマン方式で、基準額=株式価値(譲渡対価)+負債総額とし、最低金額は2,000万円(税別)です。中間金は基本合意時に成功報酬額の10%をお預かりし、成約時の成功報酬から全額差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合も返金いたしません。詳細は料金体系のページで公開しています。
なお、「完全に成功報酬だけ」という説明を受けた場合は、中間金の有無を必ず確認してください。中間金がある体系であれば、それは純粋な成功報酬のみの体系ではありません。
② 契約条件について聞くこと
仲介契約(アドバイザリー契約)は、数か月から1年以上にわたって効力を持ちます。
聞くこと
- 専任契約ですか、非専任ですか
- 契約期間は何か月ですか。自動更新の定めはありますか
- 途中で解約できますか。どのような手続きが必要ですか
- テール条項はありますか。期間と対象範囲を教えてください
- 契約書の雛形を、今日いただけますか。持ち帰って検討できますか
- 顧問弁護士に契約書を見せても差し支えありませんか
- 御社は仲介ですか、それともFA(片側のみの助言)ですか
- 仲介の場合、利益相反にどう対応していますか
- 中小M&Aガイドラインの遵守を宣言していますか
見方
テール条項は、契約終了後の一定期間内に、その支援機関が紹介した相手と成約した場合に報酬が発生する定めです。期間と対象範囲(紹介した先に限るのか、それ以外も含むのか)を必ず確認してください。詳しくは「専任契約とテール条項|M&A仲介契約を結ぶ前に確認すべきこと」で解説しています。
契約書を持ち帰れるかは、それ自体が試金石です。その場での押印を求める、持ち帰りを渋る、弁護士への相談を嫌がる——こうした反応があれば、そこで判断がつきます。
仲介とFAの違い、そして仲介形態における利益相反への対応も重要です。仲介は売り手・買い手の双方から手数料を受け取る形態であり、その構造をどう説明するかに姿勢が表れます(「M&A仲介の両手取引とは|利益相反と指摘される仕組みとの付き合い方」)。
中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)の遵守宣言をしているかどうかも、確認しておきたい点です。当社の宣言内容は中小M&Aガイドライン遵守宣言のページで全文を公開しています。
③ 買い手の探し方について聞くこと
成約するかどうかを実質的に左右する部分ですが、意外に質問されないところです。
聞くこと
- 買い手候補は、どうやって探すのですか
- 自社で保有する買い手のネットワークはありますか。どのような業種・規模ですか
- マッチングサイトや他社との提携も使いますか
- 打診先のリストを、事前に見せていただけますか
- 打診しないでほしい先を、指定できますか
- ノンネームシートの文面を、事前に確認させていただけますか
- 当社のような業種・規模で、これまでどのような進め方をされましたか
- 買い手の資金の裏付けは、どの段階でどう確認しますか
- 成約に至らなかった場合、どういう理由が多いですか
見方
太字にした2つの質問が特に重要です。打診先を事前に見せ、除外先を指定できる運用になっているか。ここが担保されていないと、思わぬ相手——競合、取引先、地域の同業——に情報が渡る可能性があります。
最後の質問も有効です。成約しなかった理由を率直に語れる相手は、実務の場数を踏んでいます。逆に「ほとんど成約します」という趣旨の回答は、実態と離れている可能性があります。
なお、この場で価格の見立てを聞くこともあるでしょう。その際は、金額そのものより、根拠と幅の説明を求めてください。受託を目的として高めの数字を示し、後から下方修正されるという展開は実際に起こり得ます。
④ 担当体制・情報管理・撤退時について聞くこと
担当体制について
- 本日ご説明いただいている方が、そのまま担当されますか
- 担当は何名体制ですか。役割分担はどうなっていますか
- おひとりで、現在何件を担当されていますか
- 担当が変わる可能性はありますか。その場合の引き継ぎは
- 連絡はどの頻度で、どの方法でいただけますか
面談に来る人と実際の担当者が違う、という体制の会社もあります。長い期間を共にする相手ですから、誰が担当するかは費用と同じくらい重要です。
情報管理について
- 資料をお渡しする前に、秘密保持を書面で結べますか
- 検討している事実そのものも、秘密情報に含まれますか
- いただいた資料は、社内のどの範囲まで共有されますか
- 連絡は、携帯電話と個人メールに限定していただけますか
- 打診して見送られた候補先の資料は、どう処理されますか
撤退時について
- 途中で検討をやめたくなった場合、どうすればよいですか
- その時点で、費用は発生しますか
- 基本合意の前と後で、扱いはどう変わりますか
- 買い手候補に渡した資料は、どのように回収されますか
撤退時の質問を嫌がる相手は、避けたほうがよいでしょう。やめる可能性を前提に話せる相手こそ、進めるときにも信頼できます。
まとめ|印刷して持っていける質問リスト
最後に、面談の場でそのまま使える形に凝縮します。時間が限られている場合は、この10問だけでも確認してください。
- 1. 相談料・着手金・月額報酬はありますか
- 2. 中間金はいつ、いくらで、不成立の場合は返金されますか
- 3. 成功報酬の基準額は何ですか。最低金額はいくらですか
- 4. 専任ですか。契約期間と、テール条項の期間・範囲を教えてください
- 5. 契約書を持ち帰って、弁護士に見せてもよいですか
- 6. 打診先のリストを事前に見せ、除外先を指定させてもらえますか
- 7. 本日の方が、そのまま担当されますか。何件を担当されていますか
- 8. 資料を渡す前に、秘密保持を書面で結べますか
- 9. 途中でやめる場合、費用と手続きはどうなりますか
- 10. 御社は仲介ですか、FAですか。利益相反にどう対応していますか
そして、これらを複数社に同じように尋ねてみてください。同じ質問への答えを並べれば、違いははっきりします。複数社への相談は、まったく問題のない進め方です(「複数の仲介会社に相談してよいか|専任契約との関係」)。
当社プラチナパートナーズは、これらの質問すべてに、その場でお答えできるよう準備しています。相談料・着手金・月額報酬はいただいておりません。比較検討の一社として、ぜひ厳しくご質問ください。