成功報酬の金額そのものは料金表を見れば分かります。しかし「請求書は誰宛に届くのか」「どの口座から払うのか」「譲渡代金と相殺されるのか」といった実務は、契約書を読んでも判然としないことが多い部分です。決済日は買い手・売り手・司法書士・金融機関が同時に動く日で、当日になって振込の限度額に引っかかる、といったことも起こり得ます。本稿では、手数料の請求から入金までの段取りを実務に即して整理します。支払時期そのものについては「手数料はいつ払うのか」もあわせてご覧ください。

請求書は誰宛に発行されるのか

まず押さえておきたいのは、請求書の宛先は「仲介契約の当事者」であるという点です。譲渡代金を受け取る人と、手数料を払う人が必ずしも一致しない場面があります。

株式譲渡の場合、株式を売るのは株主個人です。一方で、仲介契約は対象会社(法人)と締結することも、オーナー個人と締結することもあります。どちらを当事者にするかによって、請求書の宛先が変わり、支払う主体が変わり、その支出の税務上の扱いも変わります。

会社が契約当事者であれば、手数料は会社の費用として支払われます。オーナー個人が契約当事者であれば、譲渡代金を受け取った個人が支払うことになります。個人が支払った仲介手数料は、株式の譲渡所得を計算する際の譲渡費用として扱われるのが一般的ですが、具体的な取扱いは契約の内容や実態によって判断が分かれることがありますので、顧問税理士に必ずご確認ください

当社では、ご契約の前に「どなたと契約を結ぶか」「請求書はどなた宛になるか」を明示し、想定される税務上の扱いについても、税理士にご確認いただくようお伝えしています。後から宛先を変えることは原則としてできませんので、契約時点で決めておくべき事項です。

請求書に並ぶ項目の読み方

請求書に載る項目は、報酬体系によって変わります。成功報酬型の場合、実際に届く請求書は次のようなものです。

項目内容確認するところ
中間金基本合意の締結時に請求される金額算定の根拠。成功報酬から差し引かれるか
成功報酬クロージング時に請求される金額基準額はいくらか。中間金が控除されているか
消費税手数料に対する消費税税別表示の金額に10%が加算されているか
立替実費登記事項証明書の取得費など、仲介会社が立て替えた費用そもそも請求されるのか。上限の定めはあるか

当社の場合、相談料・着手金・月額報酬は0円です。請求が発生するのは基本合意時の中間金クロージング時の成功報酬の二回のみで、成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)により算定し、最低額を2,000万円(税別)としています。中間金は成功報酬額の10%で、成約時の成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。ただし、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。

請求書を受け取ったら、金額そのものより先に基準額の内訳を確認してください。移動総資産方式であれば「株式価値いくら+負債総額いくら=基準額いくら」という計算過程が示されているはずです。負債総額をどの時点の数字で見ているかによって金額は動きますので、ここが曖昧な請求書であれば、根拠の提示を求めるべきです。

支払方法|振込が原則で、譲渡代金との相殺は通常行わない

手数料の支払いは、銀行振込が原則です。現金の授受や手形での支払いが行われることは、実務上ほとんどありません。振込手数料の負担者は契約書に定めがあることが多いので、確認しておいてください。

よくいただくご質問が「譲渡代金から差し引いてもらえないのか」というものです。つまり、買い手からの入金を仲介会社が受け取り、手数料を引いた残りを売り手に渡す形にできないか、というご質問です。

結論から申し上げると、通常このような相殺は行いません。譲渡代金は買い手から売り手(株主)へ直接支払われるのが原則で、仲介会社が代金を預かる立場に立つと、資金の管理責任や万一の際のリスクが生じるためです。売り手は自分の口座で代金の着金を確認したうえで、そこから手数料を振り込む、という流れになります。

したがって決済日は、着金の確認 → 手数料の振込という順番で動きます。着金が午後になった場合、その日のうちに振込を完了できないことがありますので、支払期限が「決済日当日」なのか「決済日から数営業日以内」なのかは、事前に確かめておく必要があります。

決済日に資金が動かせなくなる典型的な原因

実務でつまずきやすいのは、金額の大きさではなく銀行側の制約です。数千万円単位の振込は、日常的な取引の枠を超えることがあります。

  • インターネットバンキングの1日あたり振込限度額——初期設定のままだと数百万円ということもあります。引き上げには申請と日数が必要です
  • 窓口の受付時間——大口の振込は当日扱いの締切が早い場合があります
  • 定期預金や有価証券の解約——中間金の支払いを手元資金で賄う場合、解約の手続きに日数がかかることがあります
  • 法人口座の権限設定——承認者が複数必要な設定になっていると、その日に承認者が不在だと実行できません
  • 本人確認や取引目的の確認——高額送金では金融機関から資金の出所や目的を確認されることがあります

とくに中間金は基本合意の時点で発生するため、譲渡代金がまだ入っていない段階での支払いになります。手元資金から支出する必要がありますので、基本合意の日程が見えてきた時点で、資金の準備を始めてください。

また、M&Aを進めていることを取引金融機関に伝えていない場合、突然の大口出金が話題になることがあります。金融機関への伝え方については「M&Aを銀行に伝えるタイミング」で整理しています。

消費税と適格請求書(インボイス)の扱い

仲介手数料は消費税の課税取引です。株式の譲渡そのものは消費税が非課税ですが、それとは別に、仲介というサービスの対価には消費税が課されます。標準税率は10%です。

したがって、最低手数料2,000万円(税別)であれば、消費税を含めた支払額は2,200万円になります。料金表の金額が税別なのか税込なのかを取り違えると、200万円の見込み違いが生じます。詳しくは「M&A手数料の税込・税別」をご覧ください。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)との関係では、誰が支払うかで意味合いが変わります。契約当事者が会社(課税事業者)であれば、適格請求書の保存が仕入税額控除の要件になりますので、請求書に登録番号が記載されているかを確認してください。一方、オーナー個人が支払う場合、その個人が事業者でなければ仕入税額控除の対象にはなりません。

この点は会社の税務処理に直結しますので、具体的な取扱いは顧問税理士にご確認ください

支払いで慌てないための段取り

最後に、実務としてお勧めしている進め方を挙げます。特別なことはなく、時期を前倒しにするだけです。

  • 基本合意の1か月前——中間金の見込み額を確認し、手元資金で払えるかを点検する
  • 基本合意の2週間前——振込限度額の設定を確認し、必要なら引き上げを申請する
  • クロージングの3週間前——成功報酬の金額を確定させる。基準額の内訳の提示を受ける
  • クロージングの1週間前——決済当日のタイムテーブルを、買い手・司法書士・金融機関と共有する
  • 決済日——着金を確認してから振込を実行する。領収書の受領方法も決めておく

もうひとつ、忘れられがちなのが翌年の納税資金です。譲渡代金を受け取った翌年には、株式譲渡益に対する所得税・住民税の納付があります。株式譲渡益への課税は20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)です。手数料を払った直後の口座残高を見て「これだけ残った」と考えると、翌年に足りなくなります。

手数料と税金を差し引いた手取りの見込みは、契約前の段階で試算しておくべきものです。当社では、ご相談の初期段階で手数料の水準をお伝えし、ご契約の前に総額の目安を書面でご提示しています。税額の試算については、顧問税理士とご一緒に確認いただくことをお勧めしています。

よくあるご質問

A.通常は行いません。譲渡代金は買い手から株主へ直接支払われ、売り手がご自身の口座で着金を確認したうえで手数料をお振り込みいただく流れになります。仲介会社が代金を預かる形にすると資金の管理責任が生じるためです。着金と振込の順序があるため、支払期限が決済日当日なのか数営業日以内なのかは、契約時にご確認ください。
A.仲介契約を締結した当事者宛になります。株式譲渡では株式を売るのは株主個人ですが、仲介契約を対象会社と結ぶ場合もあり、どちらを当事者とするかで請求先と税務上の扱いが変わります。当社ではご契約前に契約当事者と請求書の宛先を明示しています。税務上の取扱いは事情により判断が分かれますので、顧問税理士にご確認ください。
A.はい。中間金は基本合意の締結時に発生しますので、譲渡代金の受領前にお手元の資金からお支払いいただくことになります。当社の中間金は成功報酬額の10%で、成約時の成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。ただし、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。基本合意の日程が見えた段階で資金のご準備を始めてください。

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金額も、支払いの段取りも、先にお伝えします。

手数料の見込み額と、いつ・どこから支払うことになるのかを、ご契約の前にご説明します。ご相談は無料です。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら