M&A仲介の料金表は、ほとんどが税別表示です。「最低報酬2,000万円」と書かれていれば、実際にお支払いいただくのは消費税を加えた2,200万円になります。数百万円の差ですから、資金計画の段階で見落とすと影響は小さくありません。本稿では、手数料にかかる消費税の扱いと、比較のときに見誤らないための確認方法を整理します。手数料の全体像は「M&A仲介手数料の相場とレーマン方式の計算方法」をご覧ください。

仲介手数料は消費税の課税対象

M&A仲介会社が提供するのは役務(サービス)ですので、その対価である手数料は消費税の課税対象です。標準税率10%が適用されます。着手金・中間金・成功報酬のいずれも同様です。

一方で、取引そのものの課税関係は別です。株式譲渡は有価証券の譲渡にあたり、消費税は非課税です。事業譲渡の場合は、譲渡する資産の内訳によって課税・非課税が分かれます。ここは混同されやすいところで、「株式譲渡なら消費税はかからない」という理解のまま、手数料にも消費税がかからないと思ってしまう例があります。取引の課税関係と、仲介手数料の課税関係は別々に考えてください。詳しくは「M&Aと消費税」で解説しています。

金額でどう変わるか

当社の基準で具体的に見てみます。成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)で算定し、最低報酬額は2,000万円(税別)です。

基準額成功報酬(税別)消費税総額(税込)
2.5億円(株式1.5億+負債1億)2,000万円200万円2,200万円
5億円(株式3億+負債2億)2,500万円250万円2,750万円
10億円(株式7億+負債3億)4,500万円450万円4,950万円

中間金は成功報酬額の10%を基本合意時にお預かりし、成約時に成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、中間金の返金はいたしません)。中間金にも同様に消費税がかかります。

手取り額を試算するときの位置づけ

会社を譲渡した際の手取り額は、おおまかに「譲渡価格 − 仲介手数料 − 税金」です。この仲介手数料は税込の金額で差し引いて考えてください。

なお、譲渡所得の計算上、仲介手数料は譲渡費用として控除できる場合があります。個人株主が株式を譲渡した場合の譲渡所得は「譲渡価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算し、これに20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)が課されます。控除できる範囲や消費税相当額の扱いは個別の事情によりますので、税理士にご確認ください。手取りの考え方は「会社売却にかかる税金」で詳しく扱っています。

法人が支払う場合|仕入税額控除とインボイス

買い手が法人の場合や、譲渡側が法人であった場合、支払った手数料に含まれる消費税は、原則として仕入税額控除の対象になります。ただし控除を受けるには、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。

したがって、仲介会社が適格請求書発行事業者として登録されているかは、実質的な負担額に影響します。契約前に確認しておくとよい項目のひとつです。あわせて、請求書の宛名(誰宛に発行されるか)も確認してください。個人株主宛か法人宛かで、経理上の扱いが変わります。

関連する論点は「M&A関連費用の税務上の扱い」で整理しています。

軽減税率・非課税との混同を避ける

実務の場面で混乱が起きやすいのが、次の3つの区別です。

対象消費税の扱い備考
仲介手数料課税(標準税率10%)役務の提供の対価
株式の譲渡代金非課税有価証券の譲渡
事業譲渡の対価資産の内訳による棚卸資産・機械等は課税、土地・債権等は非課税
役員退職金不課税雇用関係に基づく給与等

事業譲渡を選ぶ場合、譲渡対価のうち課税資産に対応する部分に消費税がかかり、売り手側で預かった消費税を申告・納付する必要が生じます。譲渡価格の交渉を税抜で行っていたのか税込で行っていたのかによって、手取りが変わります。契約書の記載も含めて、早い段階で税理士を交えて確認してください。

また、譲渡の年は課税売上の構成が通常と大きく異なることがあり、翌期の納税義務の判定や簡易課税の選択に影響することがあります。単年度だけでなく、翌期以降の影響まで見ておくのが安全です。

比較の実務としては、各社に同じ前提(想定譲渡価格・負債総額)を伝えたうえで、税込の総額を1枚の紙に書いてもらうのが確実です。口頭の説明だけでは、どの前提で計算された数字かが後から分からなくなります。書面であれば、条件の違いも並べて確認できます。

なお消費税率は将来的に変わり得ます。契約から成約まで半年から1年かかることを考えると、税率変更をまたぐ可能性もゼロではありません。契約書に「消費税は成約日時点の税率による」といった定めがあるかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。

比較のときに見落とさないために

複数の仲介会社を比較する際、次を揃えて並べてください。

  • 税別表示か税込表示か(揃えないと比較になりません)
  • 最低報酬額の有無と金額
  • 着手金・中間金・月額報酬の有無と、成功報酬から差し引かれるか
  • レーマン方式の基準額の取り方(株式価値ベースか移動総資産ベースか)
  • 適格請求書発行事業者かどうか

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)」も、支援機関に対して手数料の算定基準と支払時期を契約前に明確に説明することを求めています。「自社の場合、成約までに総額いくら支払うのか」を、税込の金額で書面にしてもらうのが確実です。

よくあるご質問

A.業界慣行として税別表示が一般的です。当社の最低報酬額2,000万円も税別ですので、消費税10%を加えた2,200万円が実際のお支払額になります。表示がどちらかは必ずご確認ください。
A.個人株主が譲渡所得を計算する際、仲介手数料は譲渡費用として控除できる場合があります。消費税相当額を含めた金額で扱えるかは、支払の形態や事情によりますので、確定申告の前に税理士にご確認ください。
A.仲介契約の当事者宛に発行するのが原則です。株式譲渡では株主個人が契約当事者になることが多く、その場合は個人宛となります。法人が支払う設計にする場合は、契約段階で当事者と請求先を整理しておく必要があります。

Free Consultation

総額でいくらか、書面でお示しします。

ご相談の初期段階で、税込の金額を含めた手数料の見込みをお伝えします。相談料・着手金・月額報酬は0円です。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら