手数料の金額と同じくらい大切なのが、いつ払うのかです。譲渡代金が入る前に支払いが発生する項目があるため、順番を知らないまま進むと資金繰りで困ります。時期の設計を整理します。
支払いが発生し得る四つのタイミング
M&A仲介の手数料は、会社によって発生の時期が違います。代表的なものは四つです。
着手金は、仲介契約を結んだ時点。月額報酬(リテイナーフィー)は、契約期間中に毎月。中間金は、基本合意の締結時。成功報酬は、成約(クロージング)時です。
どれを設けるかは会社ごとに異なります。当社は相談料・着手金・月額報酬をいただいておりません。発生するのは中間金と成功報酬の2回です。
譲渡代金より前に払うものがある
ここが実務上もっとも重要な点です。中間金は、譲渡代金が入る前に発生します。
基本合意は、条件の大枠が固まった段階で結ぶもので、その後にデューデリジェンスと最終契約が続きます。クロージングで代金が入るのは、さらに先です。つまり中間金は、手元の資金から支払うことになります。
当社の場合、中間金は成功報酬額の10%です。成功報酬の最低額が2,000万円(税別)ですから、中間金は最低200万円(税別)となります。この資金を用意できるかを、基本合意の前に確認しておいてください。
成功報酬はいつ払うのか
成功報酬は、クロージングの時点で発生します。実務では、譲渡代金の決済と同じ日に精算することが多くあります。
代金が入金され、そこから支払う流れになるため、資金を別に用意する必要は通常ありません。ただし、代金が分割払いになる案件では注意が要ります。手数料は総額に対して計算されるのに、入金は分割ということが起こり得ます。
この場合の支払い方法は、契約前に必ず取り決めてください。「代金の入金に合わせて分割する」のか「クロージング時に一括する」のかで、必要な資金がまったく違います。
不成立になった場合
基本合意まで至らずに終わった場合、当社では費用は発生しません。
一方、基本合意の締結後に不成立となった場合、中間金の返金はいたしません。基本合意までに投じた探索と調整の対価という位置づけだからです。
この扱いは会社によって異なります。「不成立なら全額返金」とする会社もあれば、当社と同じ扱いの会社もあります。返金の有無は、契約前に必ず書面で確認してください。口頭の説明だけで進めるべきではない項目です。
「成約まで費用0円」の会社との違い
着手金も中間金も設けず、成約時の1回だけという体系の会社もあります。支払いのタイミングという観点では、そちらのほうが分かりやすいのは事実です。
当社は中間金を設けています。基本合意までに相手先の探索と条件の調整という実務が発生しており、その対価という位置づけです。この点は当社にとって不利な違いとして、正直にお伝えしています。基本合意後に不成立となった場合、中間金は戻りません。
どちらが良いということではなく、体系が違うということを理解したうえで選んでいただくのが正しい形だと考えています。比較の材料は料金体系のページに、当社が不利な点も含めて並べています。
税金の支払い時期も合わせて考える
見落とされやすいのが、税金の納付時期です。株式の譲渡益に対する所得税・住民税は、譲渡した年の翌年に確定申告と納付を行います。
つまり、代金が入ってから納税までに時間の空きがあります。この間に資金を使ってしまい、納付の段階で足りなくなるという事態が実際に起こります。
手数料の支払い、税金の納付、そしてご自身の資金計画。この三つを一枚の表に並べてから進めることをお勧めしています。詳しくはM&Aにかかる税金をご覧ください。
誰が支払うのか
株式譲渡では、株式を売るのはオーナー個人です。したがって手数料もオーナー個人が支払うのが原則になります。
ただし、会社が支払う形にしている例もあります。この場合、会社にとっての損金性や、オーナーへの経済的利益の供与にあたらないかという税務上の論点が生じます。
「誰が支払うか」は、契約書で明確にしてください。そして税理士に確認してください。曖昧なまま進めると、後から税務上の問題として指摘されます。
契約前に、時系列で確認する
まとめます。契約の前に、次の形で確認してください。
いつ、何が、いくら発生するのか。そしてそれぞれを誰が、どこから支払うのか。さらに不成立になった場合にどうなるのか。
中小M&Aガイドライン(第3版)は、手数料の体系と金額、契約期間、依頼者の義務といった重要事項について、契約締結に先立ち書面を交付して説明することを求めています。説明を渋る相手、口頭でしか答えない相手には注意してください。当社の遵守状況は遵守宣言で公表しています。