建設機械を扱う事業には、新車の販売、中古機の売買、整備・修理、部品の供給、レンタルがあります。1社がこれらを兼ねていることも多く、どの部分が収益の柱かで、評価の見方が変わります。
レンタルを主にしている場合は保有機材の評価と稼働率が中心になりますが、販売と整備を主にしている場合は、メーカーとの関係と整備の体制が中心になります。ここでは後者を扱います。
メーカーの販売網での位置づけ
新車を扱う場合、メーカーまたはその販売会社との契約が前提になります。地域を区切って販売を任される形が多く、その地域での地位そのものが価値になります。新しく同じ地域で契約を得ようとしても、既存の販売店がある限り簡単ではありません。
譲渡の場面では、この契約が引き継げるかが最初の論点です。契約に支配権の異動に関する条項があるかを確認し、メーカー側の承諾が必要な場合は、その見通しを早い段階で確かめる必要があります。メーカーが買い手を選ぶ場面もあり、同業の買い手であれば販売網の重複が問題になることもあります。
加えて、販売の目標や仕入の条件が契約で定められていることがあります。目標を達成できていない状態が続いていると、契約の更新が論点になります。直近の実績と、メーカー側との関係の状態を整理しておく必要があります。
整備士がいるかどうかが、事業の前提
建設機械の整備は、専門の知識と経験が必要で、育成に時間がかかります。油圧、電子制御、エンジン、溶接が絡み、機種ごとの癖もあります。整備ができる人がいなければ、販売も成り立ちません。買った客は、故障したときに直せる相手から買うためです。
引き継ぐ側が見るのは、整備士の人数と年齢構成、資格の保有状況、若手が入っているか、整備の売上が1人に依存していないかです。高齢の整備士に技術が集中している会社では、その人の処遇と引き継ぎの設計が条件になります。
また、特定自主検査を行う事業者としての体制があるか、検査者の資格を持つ人がいるかも確認されます。法令に基づく検査を受託できることは、継続的な収益と顧客との接点になります。
人の問題は、譲渡の前に手を打てる部分です。若手の採用、資格の取得支援、作業手順の記録を進めておくと、評価が変わります。
中古機の在庫と、下取りの運用
中古機を扱う場合、在庫の評価が論点になります。建設機械の中古は海外への輸出を含めた市場があり、機種と年式、稼働時間(アワーメーター)、整備の履歴で価格が決まります。相場の変動が大きく、為替の影響も受けます。
引き継ぐ側が見るのは、在庫の構成(機種・年式・稼働時間)、長く在庫になっている機体がいくらあるか、簿価と今の相場が離れていないか、整備の履歴が記録されているかです。履歴が残っている機体は、売る相手に説明ができます。
下取りの運用も見られます。新車を売るときに下取った機体を、どの経路で売るのか。自社で整備して売るのか、業者間の市場に出すのか。この経路を持っているかどうかで、在庫が滞るかどうかが変わります。
在庫に金融(在庫の仕入資金)が付いている場合、その条件も確認されます。
顧客の構成と、与信
顧客は建設会社、解体業者、産廃処理業者、農業法人、自治体などに分かれます。顧客の業種が偏っていると、その業種の景況がそのまま売上に表れます。公共工事に依存している地域では、予算の動きが影響します。
与信も論点です。建設機械は金額が大きく、割賦やリースを使う取引が多くなります。自社でファイナンスを付けている場合、その債権の状況が見られます。回収が滞っている先がないか、担保の設定がどうなっているかです。
加えて、修理の売掛金が溜まっていないかも見られます。小口で多数の取引が続く部分なので、管理の仕組みが無いと滞留しやすい箇所です。
資料としては、顧客の一覧に取引額、支払条件、直近の支払い状況を付けておくと説明が要りません。
引き継ぐ側の動機と、組み合わせ方
買う側の動機は、次のように分かれます。
- 同業が地域を広げる。同じメーカーを扱う販売店が、隣接する地域を加える形。ただしメーカー側の販売網の設計と調整が必要になります。
- レンタル会社が整備と販売を取り込む。保有機材の整備を自社で行い、中古の出口も持つ形。
- 建設会社が整備機能を持つ。自社の機材を自分で整備する体制を得る形。
- 別の商材を扱う機械商社が品目を増やす。
どの動機でも、整備ができる人が残るかが共通の論点です。設備や在庫は金額で評価できますが、整備の技術は人に付いています。
不動産を保有している場合は、その扱いも論点になります。整備工場と資材置き場に広い土地が必要なため、不動産の価値が会社の評価の大きな部分を占めることがあります。会社名義か個人名義かで、進め方が変わります。
契約の承継、許認可、税務の扱いは個別の事情で変わります。実際に進める際は、弁護士・税理士に確認してください。
最後に、レンタルを併営している場合の論点を書いておきます。販売・整備とレンタルでは、必要な資金の形が違います。レンタルは機材を自社で保有するため、投資が先に出て、回収が後になります。したがって、同じ会社の中に両方があると、資金の回り方が複雑になります。引き継ぐ側は、レンタルの保有機材と稼働率、販売の在庫と回転を分けて見ます。部門ごとの採算が出せる状態になっているかが、ここでの分かれ目です。