介護サービスの中で、訪問看護ステーションだけが突出した増え方をしています。厚生労働省の公表統計で確認すると、5年間で1.45倍。同じ期間に減っているサービスがいくつもあるなかで、これは例外的な動きです。

本稿では公表資料をもとに現在地を確認し、この伸びが承継の場面で何を意味するのかを整理します。

本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

5年で12,393から18,042へ

厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によれば、令和6年10月1日現在の訪問看護ステーションは18,042事業所で、前年より1,619事業所(9.9%)増加しています。介護予防訪問看護ステーションも17,487事業所で、前年より1,539事業所(9.7%)の増加でした。

他の主な居宅サービスと並べると、動きの違いがはっきりします。

サービス令和2年令和4年令和6年5年間の増減
訪問看護ステーション12,39314,82918,042+45.6%
訪問介護35,07536,42037,264+6.2%
通所介護24,08724,56924,585+2.1%
通所リハビリテーション8,3498,2348,030△3.8%
地域密着型通所介護19,66719,39418,921△3.8%
居宅介護支援事業所39,28438,53837,258△5.2%

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

訪問看護だけが二桁の伸びを続けています。居宅介護支援事業所(ケアプランを作る事業所)はむしろ減っており、同じ在宅の分野でも方向が分かれていることが分かります。

開設主体の66.8%が営利法人

同資料によれば、訪問看護ステーションの開設(経営)主体は営利法人(会社)が66.8%、医療法人18.2%、社団・財団法人5.3%、社会福祉法人4.5%です。

サービス営利法人(会社)医療法人社会福祉法人
訪問看護ステーション66.8%18.2%4.5%
訪問介護73.2%5.4%14.0%
通所介護55.0%7.2%34.0%
通所リハビリテーション0.0%79.2%8.5%
介護老人福祉施設(特養)――95.7%(社福)

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

営利法人が3分の2を占めるということは、株式会社が運営している事業所が多数派だということです。株式譲渡という一般的な形で経営権を移せるため、承継の選択肢は取りやすいほうに入ります。

同じ介護の枠の中でも、通所リハビリテーションは医療法人が79.2%、特別養護老人ホームは社会福祉法人が95.7%で、いずれも株式がありません。「介護業界のM&A」とひとくくりにすると、この違いが見えなくなります。

増えている理由と、増えたあとに起きること

公表統計は事業所数を示すだけで、増加の理由までは示しません。ここは推測を避けて、統計から言えることだけを書きます。

ひとつは、参入のしやすさです。訪問看護ステーションは建物や大型設備を必要とせず、看護職員の人員基準を満たせば開設できます。特別養護老人ホームのように定員と建物で売上の上限が決まる事業とは、立ち上げの負担がまったく違います。

もうひとつは、その裏返しです。参入が容易な分野は、同じ地域に事業所が積み上がります。同資料の数字は全国の総数なので、地域ごとの密度までは分かりませんが、5年で1.45倍という全体の伸びは、多くの地域で競合が増えたことを意味します。

承継の場面では、この点が評価の分かれ目になります。看護職員を安定して確保できているか、主治医と居宅介護支援事業所との関係が続いているか、24時間対応の体制を回せているか。数が増えた分野ほど、事業所ごとの中身の差が見られます。指定の承継や人員基準の実務は「訪問看護ステーションのM&A」に整理しています。

あわせて見ておきたい周辺の動き

同資料によれば、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は1,441事業所(前年比84事業所・6.2%増)、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)は1,074事業所で、令和2年の711事業所から5年間で1.5倍になっています。いずれも看護と介護を組み合わせた在宅のサービスで、訪問看護と同じ方向に伸びています。

一方で夜間対応型訪問介護は226事業所にとどまり、5年間ほぼ横ばいです。名前が似ていても、制度の作りと市場の反応は同じではありません。

在宅分野をまとめて検討される場合は、サービスごとに事業所数の推移と開設主体を確認したうえで比べることをお勧めします。分野全体の報酬改定と人材の論点は「介護業界の動向」をご覧ください。

よくあるご質問

A.厚生労働省の統計が示すのは全国の事業所数で、令和2年の12,393から令和6年の18,042へと増えています。「増えすぎ」かどうかは地域ごとの需要と供給によるため、全国の総数からは判断できません。ご検討の地域については、個別に確認が必要です。
A.同じ調査で、訪問介護は73.2%、通所介護は55.0%、通所リハビリテーションは0.0%、介護老人福祉施設は社会福祉法人が95.7%です。訪問看護は営利法人の比率が高いほうに入りますが、訪問介護ほどではありません。
A.この調査は介護保険の施設・事業所を対象としたものです。医療保険による訪問看護の利用状況は別の統計で公表されており、本稿の数値には含まれません。
A.一概には言えません。数が増えた分野では事業所ごとの中身の差が見られやすくなるため、人員の安定と紹介元との関係が評価の焦点になります。具体的な見られ方はご状況によりますので、個別にご相談ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら