訪問入浴介護は、介護サービスのなかで最も事業所数の少ない分野のひとつです。厚生労働省の公表統計によれば、令和6年10月1日現在で1,641事業所。訪問介護37,264、訪問看護18,042と比べると、桁が違います。

それでも全国の在宅で必要とされ続けているサービスです。本稿ではこの分野の構造を確認します。

本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によります。出典に記載のない比率は本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

5年連続で減っている

厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によれば、訪問系サービスの推移は次のとおりです。

年(各年10月1日現在)訪問入浴介護介護予防訪問入浴介護(参考)訪問介護
令和2年(2020)1,7081,56135,075
令和3年(2021)1,7051,48335,612
令和4年(2022)1,7091,54736,420
令和5年(2023)1,6651,51236,905
令和6年(2024)1,6411,48137,264
5年間の増減△67(△3.9%)△80(△5.1%)+2,189(+6.2%)

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

訪問介護が6.2%増えるなかで、訪問入浴介護は3.9%減りました。令和6年は24事業所(1.4%)の減少です。

介護サービス全体のなかでの位置を見ると、この分野の小ささが分かります。

サービス事業所数
訪問介護37,264
通所介護24,585
訪問看護ステーション18,042
通所リハビリテーション8,030
訪問入浴介護1,641
定期巡回・随時対応型訪問介護看護1,441
夜間対応型訪問介護226

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

営利法人77.3%という構成

同資料によれば、訪問入浴介護の開設(経営)主体は営利法人(会社)が77.3%、社会福祉法人20.0%、医療法人1.4%、協同組合0.3%、NPO0.3%です。

サービス営利法人(会社)社会福祉法人
特定福祉用具販売95.5%1.5%
福祉用具貸与94.9%1.7%
訪問入浴介護77.3%20.0%
地域密着型通所介護76.6%12.1%
訪問介護73.2%14.0%
訪問看護ステーション66.8%4.5%
通所介護55.0%34.0%

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

介護サービスのなかで営利法人の比率が3番目に高い分野です。株式譲渡という一般的な形で経営権を移せる事業所が大半を占めます。

車両と3人体制という制約

この分野が小さいのには、構造上の理由があります。

  • 専用車両が要る。浴槽とボイラーを積んだ入浴車を用意しなければ始められません。訪問介護のように人だけでは成立しません
  • 原則3人で訪問する。看護職員1名と介護職員2名が基本です。1回の訪問に3人が拘束されるため、人件費の負担が重くなります
  • 1日に回れる件数に上限がある。設営と片付け、移動を含めると1チームが1日に回れる件数は限られます。売上の天井が見えやすい事業です
  • 看護職員の確保。入浴の可否を判断する役割があり、看護職員がいなければチームを組めません

つまり参入に設備投資が要り、稼働の上限が構造的に決まっている。これが事業所数が1,641にとどまり、しかも減り続けている背景にあります。

他方、これは参入障壁でもあります。新しく始めるには車両と人を同時にそろえる必要があるため、既存の事業を引き継ぐほうが速い、という判断が働きます。

承継のときに見られる点

評価の目は次のようなところに向きます。

  • 入浴車の保有台数と車齢。この事業の中核設備です。簿価と実勢、次の更新にかかる負担
  • 稼働チーム数と1日あたりの訪問件数。売上はほぼここで決まります
  • 看護職員の確保。チームを組めるかどうかの前提です
  • 居宅介護支援事業所との関係。利用者はケアプランを通じて来ます
  • 商圏の広さ。移動時間が稼働を左右するため、拠点からどの範囲までカバーしているか
  • 併営サービス。訪問介護や訪問看護を併営していれば、人員の融通と利用者の紹介が内部で回ります

市場は小さく、減っています。ただし必要とされなくなったわけではありません。重度で自宅に住み続ける方がいる限り需要は残り、事業者が減れば残った事業者の商圏は広がります。

分野全体は「介護業界の動向」、訪問介護は「訪問介護業界の動向」に整理しています。

この数字の読み方。厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査は事業所・施設を単位に集計したものです。1つの法人が複数の事業所を運営していることがあるため、法人の数はこれより少なくなります。また調査日時点の値で、その後の開設・廃止は含みません。承継の検討で規模を見るときは、事業所の数ではなく、1つの法人がどの指定をいくつ持っているかをご確認ください。

よくあるご質問

A.厚生労働省の統計では、令和2年の1,708事業所から令和6年の1,641事業所へ、5年間で67事業所(3.9%)減っています。同じ期間に訪問介護は6.2%増えており、方向が分かれています。
A.統計は理由を示しません。ただし専用の入浴車が必要で、原則3人での訪問が基本となるため、参入に設備と人員の両方を要する構造が背景にあると考えられます。
A.ご相談は承ります。参入に設備投資が必要な分野では、新規に始めるより既存の事業を引き継ぐほうが速いという判断が働くため、引き受け手が見つかる場面があります。
A.この事業の中核設備であり、台数と車齢が事業の能力を示します。簿価だけでなく、次の更新時期と費用を合わせて確認されます。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら