医療機関でも介護事業所でも、承継の場面で必ず確認されるのが看護職員を確保できているかです。人員基準を満たせなければ、指定も報酬区分も維持できません。
その担い手の構成が、10年で大きく変わりました。看護師は25.4%増えた一方、准看護師は31.5%減っています。本稿ではこの変化を確認します。
本稿の数値は厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)によります。この調査は隔年で行われ、前回は令和4年です。10年間の増減率は本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
看護師は増え、准看護師は減っている
厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)によれば、就業看護職員の推移は次のとおりです。
| 年末 | 看護師 | 准看護師 | 保健師 | 助産師 |
|---|---|---|---|---|
| 平成26年(2014) | 1,086,779 | 340,153 | 48,452 | 33,956 |
| 平成30年(2018) | 1,218,606 | 304,479 | 52,955 | 36,911 |
| 令和2年(2020) | 1,280,911 | 284,589 | 55,595 | 37,940 |
| 令和4年(2022) | 1,311,687 | 254,329 | 60,299 | 38,063 |
| 令和6年(2024) | 1,363,142 | 233,022 | 63,536 | 38,721 |
| 前回(令和4年)比 | +51,455(+3.9%) | △21,307(△8.4%) | +3,237(+5.4%) | +658(+1.7%) |
| 10年間の増減率 | +25.4% | △31.5% | +31.1% | +14.0% |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)より作成
准看護師は10年で10万7千人減りました。平成26年の340,153人から令和6年の233,022人へ、31.5%の減少です。
看護師と准看護師を合わせた人数は、平成26年の1,426,932人から令和6年の1,596,164人へ増えています(本稿で算出)。総数では11.9%増えていますが、中身が入れ替わっているということです。
保健師は63,536人で10年に31.1%増、助産師は38,721人で14.0%増。減っているのは准看護師だけです。
どこで働いているかが違う
同資料によれば、就業場所の構成は次のとおりです。
| 職種 | 最も多い就業場所 | 人数・構成割合 |
|---|---|---|
| 看護師 | 病院 | 895,944人(65.7%) |
| 准看護師 | 診療所 | 76,541人(32.8%) |
| 助産師 | 病院 | 23,054人(59.5%) |
| 保健師 | 市区町村 | 33,217人(52.3%) |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)より作成
看護師の3分の2は病院にいますが、准看護師で最も多いのは診療所です。
この違いは重要です。准看護師が31.5%減っているということは、診療所や介護事業所で看護職員を確保しにくくなっていることを意味します。病院は看護師を採用できても、小規模な診療所や介護事業所では事情が違います。
介護分野では、訪問看護、通所介護、特定施設、グループホームなど、多くのサービスで看護職員の配置が報酬の区分や加算に関わります。准看護師の減少は、これらの事業の体制維持に直接効いてきます。
なぜ承継の場面で見られるのか
医療機関や介護事業所の承継では、決算書と同じくらい人員名簿が見られます。理由は単純です。
- 人員基準を満たせなければ指定が維持できない。欠員が続けば減算となり、状態によっては指定の効力に関わります
- 報酬の区分が人員配置で決まる。病院の入院基本料も、介護の加算も、配置している職員の数と資格で変わります
- 採用で埋められる保証がない。准看護師が10年で31.5%減っている状況では、「辞めたら採ればよい」という前提が成り立ちません
譲り受ける側から見れば、いま働いている看護職員が譲渡後も残るかどうかが、事業が続くかどうかを決めます。設備や建物より先に、ここが確認されます。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 看護職員の人数と、看護師・准看護師の内訳。報酬の区分によっては資格の別が要件になります
- 年齢構成と在籍年数。近く退職が重なる見込みがないか
- 常勤と非常勤の比率。常勤換算で基準を満たしているか
- 夜勤の体制。入院や入居のある事業では、夜勤を回せる人数が制約になります
- 採用の実績。直近3年で何人採用し、何人辞めたか
- 近隣の医療機関・介護事業所との競合。同じ商圏で看護職員を取り合う状況にあるか
人員名簿は、譲渡をお考えの段階で早めに整理しておくことをお勧めします。資格の内訳と在籍年数が分かる形になっているだけで、相手方の検討が速く進みます。
医療機関は「病院業界の動向」、介護は「介護業界の動向」、訪問看護は「訪問看護ステーション業界の動向」に整理しています。