ガソリン、灯油、重油、有機溶剤。これらを一定量以上扱う施設は、消防法上の危険物施設として許可を受けています。
この施設が減り続けています。消防庁の公表資料によれば、昭和59年の607,040施設をピークに、令和7年3月末で377,977施設。37.7%の減少です。本稿ではこの減少が何を意味するのかを整理します。
本稿の数値は総務省消防庁「令和7年版消防白書」資料編(資料1-2-10 危険物施設数の推移/各年3月31日現在)によります。増減率は本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
ピークから23万施設減った
総務省消防庁「令和7年版消防白書」資料編(資料1-2-10 危険物施設数の推移/各年3月31日現在)によれば、危険物施設数の推移は次のとおりです。
| 各年3月31日現在 | 総計 | 製造所 | 貯蔵所 小計 | 取扱所 小計 |
|---|---|---|---|---|
| 昭和34年(1959) | 95,207 | 2,523 | 63,303 | 29,381 |
| 昭和59年(1984) | 607,040 | 4,477 | 386,406 | 216,157 |
| 平成30年(2018) | 405,238 | 5,093 | 276,879 | 123,266 |
| 令和2年(2020) | 396,457 | 5,077 | 270,722 | 120,658 |
| 令和4年(2022) | 388,576 | 5,051 | 265,333 | 118,192 |
| 令和6年(2024) | 381,569 | 5,047 | 260,438 | 116,084 |
| 令和7年(2025) | 377,977 | 5,010 | 257,944 | 115,023 |
| ピークからの増減率 | △37.7% | +11.9% | △33.2% | △46.8% |
出典:総務省消防庁「令和7年版消防白書」資料編(資料1-2-10 危険物施設数の推移/各年3月31日現在)より作成
昭和34年の95,207から昭和59年の607,040まで、25年で6.4倍に増えました。高度経済成長とモータリゼーションの時期です。そこから41年かけて、37.7%減りました。
ただし製造所だけは増えています(4,477→5,010)。減っているのは貯蔵所(33.2%減)と取扱所(46.8%減)です。
直近7年だけでも、405,238から377,977へ27,261施設(6.7%)減っています。減少は今も続いています。
内訳を見ると、どの事業が減っているか分かる
令和7年3月31日現在の内訳は次のとおりです。
| 施設の種別 | 施設数 | 昭和59年 | ピークからの増減率 |
|---|---|---|---|
| 地下タンク貯蔵所 | 70,109 | 117,715 | △40.4% |
| 移動タンク貯蔵所(タンクローリー) | 63,471 | 61,019 | +4.0% |
| 一般取扱所 | 57,817 | 122,673 | △52.9% |
| 屋外タンク貯蔵所 | 55,606 | 96,057 | △42.1% |
| 給油取扱所(ガソリンスタンド) | 54,843 | 88,143 | △37.8% |
| 屋内貯蔵所 | 49,444 | 63,598 | △22.3% |
| 屋内タンク貯蔵所 | 9,224 | 19,878 | △53.6% |
| 屋外貯蔵所 | 9,212 | 24,397 | △62.2% |
| 製造所 | 5,010 | 4,477 | +11.9% |
| 移送取扱所 | 1,006 | 1,391 | △27.7% |
| 第一種販売取扱所 | 910 | 3,221 | △71.7% |
出典:総務省消防庁「令和7年版消防白書」資料編(資料1-2-10 危険物施設数の推移/各年3月31日現在)より作成
最も減ったのは一般取扱所(52.9%減)です。工場やボイラー室で危険物を使う施設で、製造業の事業所そのものの減少と重なります。
給油取扱所は88,143から54,843へ37.8%減。ガソリンスタンドの減少としてよく語られる数字です。
一方、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)だけは4.0%増えています。貯蔵する場所が減り、運ぶ手段は減っていない。「持たずに運ぶ」方向へ動いていることが読み取れます。
設備の更新時期が判断の時期になる
危険物施設には、設備そのものに寿命があるという特徴があります。
地下タンクは腐食します。屋外タンクは定期的な開放点検が要ります。配管も防油堤も、経年で更新が必要になります。これらは数百万円から数千万円の支出になることがあります。
この構造が、承継の相談が起きる時期を決めます。
- 更新の時期と、経営者の引退の時期が重なる。「今から投資して続けるか、譲るか」という判断が同時に来ます
- 規制の強化が引き金になる。地下タンクについては平成23年の消防法施行規則改正で流出防止対策が義務づけられ、期限までの対応が求められました
- 施設が減れば、残った施設の役割は重くなる。給油取扱所が37.8%減った地域では、残った1か所が広い範囲を担います
つまり設備投資の判断と事業承継の判断が、同じタイミングで来やすい分野です。これは製造業でも、運送業でも、燃料販売でも同じ構造をしています。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 許可を受けている施設の種別と数。製造所・貯蔵所・取扱所のどれを、いくつ持つか
- 設備の設置年と更新履歴。とくに地下タンク・屋外タンク・配管。更新直後か直前かで、引き継ぐ側の負担がまったく変わります
- 定期点検の記録。法令で定められた点検を実施し、記録を保存しているか
- 危険物取扱者の在籍。甲種・乙種・丙種の別と人数。施設によっては危険物保安監督者の選任が必要です
- 土壌汚染のリスク。地下タンクを長年使用してきた土地では、調査が求められる場面があります。これは価格に直結します
- 過去の事故・違反の有無。行政指導を受けた履歴
危険物施設を持つ事業の承継では、決算書より先に設備の台帳が見られます。許可の内容と設備の状態が、そのまま将来の支出を決めるためです。譲渡をお考えであれば、許可証と点検記録、更新履歴を早い段階で整理しておくことをお勧めします。
ガソリンスタンドは「ガソリンスタンド業界の動向」、産業廃棄物は「産業廃棄物処理業界の動向」に整理しています。