中古品を扱う商売は、許可の種類によってまったく違う動きをしています。
警察庁の公表統計によれば、古物商等の許可は令和7年末で61万5,194件、制度改正後の5年で55.2%増えました。一方、質屋営業は2,387件で10年連続の減少。本稿ではこの明暗を確認します。
本稿の数値は警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」によります。増減率は本稿で算出しました。⚠️ 古物商等の許可件数は、令和2年4月1日施行の古物営業法改正により「営業所等の所在する都道府県ごとの許可」から「主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の許可」に改められたため、令和元年以前と令和2年以降の数値は連続しません。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
古物商は5年で21万9千件増えた
警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」によれば、古物商等(古物商・古物市場主)の許可件数の推移は次のとおりです。
| 年末 | 古物商 | 古物市場主 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 平成30年 | 787,779 | 1,566 | 789,345 |
| 令和元年 | 778,332 | 1,504 | 779,836 |
| 令和2年 | 395,526 | 852 | 396,378 |
| 令和3年 | 440,874 | 871 | 441,745 |
| 令和4年 | 483,276 | 902 | 484,178 |
| 令和5年 | 529,024 | 967 | 529,991 |
| 令和6年 | 571,946 | 1,078 | 573,024 |
| 令和7年 | 614,118 | 1,076 | 615,194 |
| 令和2年からの増減 | +218,592 | +224 | +218,816(+55.2%) |
出典:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」より作成
⚠️ 令和元年から令和2年にかけて半減しているのは、制度改正によるものです。令和2年4月1日施行の古物営業法改正で、都道府県ごとに取っていた許可が主たる営業所の1か所にまとめられました。事業者が半減したのではなく、重複していた許可が整理されたということです。したがって、比較できるのは令和2年以降です。
その令和2年以降で見ると、5年で21万8,816件(55.2%)増。令和7年だけでも4万2,170件増えており、毎年4万件前後のペースで増え続けています。
古物競りあっせん業(中古品のオークションを仲介する事業)の届出も、平成28年の72件から令和7年の170件へ2.4倍になりました。
質屋は10年連続で減っている
同じ中古品を扱いながら、質屋は正反対です。
| 年末 | 質屋営業 許可件数 | 増減 | 新規許可 | 廃業・取消 |
|---|---|---|---|---|
| 平成28年 | 2,951 | △83 | 56 | 139 |
| 平成30年 | 2,793 | △72 | 60 | 132 |
| 令和2年 | 2,660 | △51 | 75 | 126 |
| 令和4年 | 2,537 | △57 | 49 | 106 |
| 令和6年 | 2,428 | △42 | 53 | 95 |
| 令和7年 | 2,387 | △41 | 39 | 80 |
| 10年間の増減 | △564(△19.1%) | ― | ― | ― |
出典:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」より作成
10年とも減り続けています。令和7年は新規許可39件に対し廃業・取消80件。1件開業するあいだに2件が閉じている計算です。
質屋は、品物を預かって金銭を貸し、期限までに返済されなければ品物を処分する商売です。古物商が「買い取って売る」のに対し、質屋は「預かって貸す」。貸金の性格を持つ点が決定的に違います。
なお、質屋の不正品申告47件のうち40件(85.1%)が時計・宝飾品類です。扱う品目が絞られていることがうかがえます。
許可の性質が事業を決める
この2つの制度の違いは、承継の手順にも直結します。
- 古物商の許可は公安委員会が出します。令和2年の改正で、複数の都道府県に営業所があっても主たる営業所の1か所で足りるようになりました。多店舗展開の手続が大幅に軽くなったことが、許可件数の増加の一因と考えられます(ただし統計は理由を示しません)
- 株式譲渡では許可は原則そのまま残ります。法人が存続するためです。ただし役員の変更等は届出の対象になります
- 事業譲渡では許可を取り直すことになります。古物商の許可は比較的取りやすい部類ですが、時間はかかります
古物商の許可件数61万件という数は、参入障壁が低いことを示しています。個人がネットで中古品を売る場合も、反復継続すれば許可が要ります。この数字には、店舗を構えない小規模な事業者が多数含まれます。
つまり「古物商が増えている」ことは「リユース市場が成長している」ことと同義ではありません。許可を取る人が増えている、というところまでが統計から言えることです。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 取扱品目。古物営業法では14区分に分かれます。時計・宝飾品、自動車、機械工具、道具類など、何を扱うかで事業の性質がまったく違います
- 仕入れの経路。店頭買取か、出張買取か、業者間市場か、ネットか。この商売は仕入れが利益を決めます
- 販売の経路。店頭、ネット、業者間市場、海外。経路が分散しているほど相場変動に強くなります
- 在庫の評価。簿価と実勢、滞留在庫の有無。中古品は相場が動くため、評価が論点になりやすい部分です
- 鑑定・査定の技術。属人的になりやすく、引き継ぎが難しい部分です
- 古物台帳と本人確認の運用。令和7年の行政処分874件のうち855件は指示処分で、帳簿や本人確認に関わるものが含まれます。運用が整っているかは、譲り受ける側が必ず見ます
許可が取りやすく事業者が増え続けている市場では、差がつくのは許可ではなく、仕入れと査定の力です。だからこそ、その力を持つ事業者を引き継ぐ形の承継が起きます。
金属スクラップは「金属スクラップ・リサイクル業のM&A」、時計・宝飾は「時計・宝飾店のM&A・事業承継」に整理しています。