自動車教習所は、統計が毎年きちんと公表されている業種のひとつです。警察庁が「運転免許統計」として、指定教習所数・卒業者数・教習指導員数までまとめて公表しています。
本稿ではこの公表資料をもとに現在地を確認します。そのうえで、校数の減少より速く進んでいるもうひとつの減少が、承継の場面で何を意味するのかを整理します。
本稿の数値は警察庁交通局運転免許課「運転免許統計(令和7年版)」によります。指定教習所数は各年の年末現在数です。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
10年で1,332校から1,277校へ
警察庁交通局運転免許課「運転免許統計(令和7年版)」によれば、令和7年末現在の指定自動車教習所は1,277校、令和7年中の卒業者数は1,505,044人です。
| 年 | 指定教習所数 | 卒業者数 |
|---|---|---|
| 平成28年 | 1,332 | 1,561,361人 |
| 平成30年 | 1,321 | 1,529,334人 |
| 令和2年 | 1,306 | 1,602,206人 |
| 令和4年 | 1,295 | 1,634,633人 |
| 令和6年 | 1,288 | 1,508,109人 |
| 令和7年 | 1,277 | 1,505,044人 |
出典:警察庁交通局運転免許課「運転免許統計(令和7年版)」より作成
10年間で55校の減少です。1年あたり5〜6校のペースで、急激ではありませんが、増えた年はありません。
卒業者数のほうは一本調子ではありません。同資料によれば令和3年の1,723,923人が10年間で最も多く、そこから令和7年の1,505,044人まで減っています。校数がほぼ横ばいのなかで卒業者が2割近く減った期間がある、ということは、1校あたりの取扱数が縮んだ時期があったことを意味します。
校数より速く減っているもの
この業種の構造が表れるのは、教習所の数ではなく教習指導員の数です。
| 年 | 技能検定員 | 教習指導員 | 副管理者 | 総数 |
|---|---|---|---|---|
| 平成28年 | 18,686人 | 32,167人 | 4,391人 | 32,245人 |
| 平成30年 | 18,689人 | 31,494人 | 4,497人 | 31,609人 |
| 令和2年 | 18,385人 | 31,086人 | 4,581人 | 31,325人 |
| 令和4年 | 18,237人 | 31,207人 | 4,647人 | 31,327人 |
| 令和6年 | 18,065人 | 29,473人 | 4,695人 | 29,613人 |
| 令和7年 | 17,796人 | 28,715人 | 4,629人 | 28,962人 |
出典:警察庁交通局運転免許課「運転免許統計(令和7年版)」より作成
教習指導員は平成28年の32,167人から令和7年の28,715人へ、10年間で3,452人(10.7%)の減少です。同じ期間の教習所数の減少は4.1%ですから、人の減り方が校数の2.6倍のペースで進んでいます。
技能検定員も18,686人から17,796人へと890人減りました。一方で副管理者は4,391人から4,629人へと微増しています。
教習指導員と技能検定員は、いずれも公安委員会の審査を経た資格者です。採用してすぐ教壇に立てる職種ではありません。校を維持できるかどうかが、建物や車両ではなく人の確保で決まる、というのがこの業種の実情です。
繁忙期に売上が集中する構造
教習所の収入は年間で平らではありません。高校卒業前後と大学の長期休暇に申込が集中するため、限られた期間にどれだけ捌けるかで年間の売上が決まります。
この構造は、指導員数の減少と正面からぶつかります。繁忙期に配車できる指導員の数が、そのまま受け入れられる教習生の上限になるためです。校舎とコースに余裕があっても、指導員がいなければ枠は増えません。
逆に言えば、閑散期の固定費は指導員の人件費とコースの維持費として重くのしかかります。合宿免許の受け入れや、高齢者講習・更新時講習といった公安委員会関連の受託で、年間の平準化を図っている教習所もあります。同資料によれば、更新時講習や認知機能検査・高齢者講習の実施状況も都道府県別に公表されており、これらが収入の一部を占める教習所は少なくありません。
承継のときに見られる点
指定自動車教習所は、公安委員会の指定を受けた事業です。評価の目は次のようなところに向きます。
- 指定の維持要件。管理者・副管理者・技能検定員・教習指導員の配置が要件を満たし続けられるか。経営者ご本人が管理者を兼ねている場合、退任の設計が必要になります
- 指導員の年齢構成。10年で1割減っている職種なので、退職が重なったときに補充できる見通しがあるかが見られます
- コースと土地の権利。自社所有か借地か。教習コースは転用が難しく、土地の評価がそのまま事業の評価にならない点に注意が要ります
- 車両の保有と更新時期。教習車の残存年数と、次の更新にかかる負担
- 公安委員会関連の受託。講習等の受託があるか。年間の収入を平準化する要素になります
- 地域の18歳人口。商圏の若年人口が、今後の卒業者数の見通しを左右します
教習所は装置産業でありながら、実質は人で回る事業です。建物と車両は引き継げても、指導員が残らなければ指定を維持できません。譲渡をお考えの場合、指導員の在籍年数と資格の内訳を早い段階で整理しておくと、相手方の検討が速く進みます。
教育分野の他業種の動きは「学習塾業界の動向」に、許認可の引き継ぎ全般は「M&Aと許認可」に整理しています。