ペットに関わる事業は、動物愛護管理法に基づく第一種動物取扱業の登録が必要です。登録は業種別に区分されているため、環境省の統計を開くとどの業種が伸びているかが分かります。
そこに、はっきりした差が出ています。販売(ペットショップ)の伸びは鈍く、保管(トリミング・ペットホテル等)が伸びている。本稿ではこの入れ替わりを確認し、承継の観点で何が焦点になるかを整理します。
本稿の数値は環境省「動物愛護管理行政事務提要(令和6年度版)」(令和6年4月1日現在)によります。構成比・増減率のうち出典に記載のないものは本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
第一種動物取扱業は50,335事業所
環境省「動物愛護管理行政事務提要(令和6年度版)」(令和6年4月1日現在)によれば、令和6年4月1日現在の第一種動物取扱業の総事業所数は50,335で、前年の48,914から1,421事業所(2.9%)増加しています。
この登録は制度が始まってから一貫して増えています。
| 時点 | 第一種動物取扱業 総事業所数 |
|---|---|
| 平成19年9月1日 | 31,292 |
| 平成26年4月1日 | 39,874 |
| 平成31年4月1日 | 44,828 |
| 令和3年4月1日 | 48,395 |
| 令和5年4月1日 | 48,914 |
| 令和6年4月1日 | 50,335 |
出典:環境省「動物愛護管理行政事務提要(令和6年度版)」(令和6年4月1日現在)より作成
平成19年から令和6年までの17年間で1.6倍になりました(本稿で算出)。ただし直近の伸び方は一定ではなく、令和3年から令和5年までは2年で519事業所の増加にとどまり、令和6年に1,421事業所と再び伸びています。
業種別で見ると、方向が分かれている
ここがこの統計の要点です。第一種動物取扱業は業種別に登録されます(1事業所が複数を兼ねる場合は重複して計上)。
| 業種 | 令和5年4月 | 令和6年4月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 保管(トリミング・ペットホテル・ペットシッター等) | 30,496 | 31,629 | +1,133 |
| 販売(ペットショップ等) | 22,057 | 22,334 | +277 |
| うち犬猫等販売業 | 16,812 | 16,886 | +74 |
| うち繁殖を行う者 | 13,267 | 13,362 | +95 |
| 訓練 | 5,072 | 5,197 | +125 |
| 展示 | 4,121 | 4,352 | +231 |
| 貸出し | 1,545 | 1,601 | +56 |
| 譲受飼養業 | 241 | 268 | +27 |
| 競りあっせん業 | 29 | 27 | △2 |
出典:環境省「動物愛護管理行政事務提要(令和6年度版)」(令和6年4月1日現在)より作成
保管の増加1,133に対し、販売は277。4倍の差があります。とくに犬猫等販売業は74事業所の増加にとどまり、ほぼ横ばいです。
業種別の登録数を合計すると65,408になります(のべ数)。総事業所数50,335に対して1.3倍ですから、多くの事業者が複数の業種を登録していることが分かります。販売と保管を併せて持つ店舗が典型です。
「保管」が伸びる意味
公表統計は理由までは示しません。ただ、業種の中身から言えることがあります。
販売は、動物を仕入れて売る事業です。在庫としての生体を抱え、売れ残りのリスクを負います。令和3年6月に施行された数値規制(飼養施設の基準、従業員1人あたりの飼養頭数上限など)により、設備と人員の要件も厳しくなりました。
保管は、預かる事業です。トリミング、ペットホテル、ペットシッター、デイケアなどが含まれます。生体の在庫を持たず、来店または訪問のたびに収入が立ちます。
この違いは、事業としての性質を分けます。保管は繰り返し利用されるため、顧客が定着すれば収入が読めます。販売は一度きりの取引が中心で、そのあとの用品やフードの購入につなげられるかが収益を左右します。
なお、非営利で動物を扱う第二種動物取扱業(譲渡し・保管等)も2,053事業所で、前年の1,801から252事業所増えています。保護活動の広がりが数字に表れています。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- どの業種を登録しているか。販売のみか、保管を併せ持つか。保管があれば繰り返し利用の収入が見込めます
- 動物取扱責任者の在籍。事業所ごとに配置が必要で、所定の資格・経験の要件があります。経営者ご本人が兼ねている場合、退任の設計が要ります
- 登録の有効期間。第一種動物取扱業の登録は5年ごとの更新です
- 飼養施設の基準適合。令和3年施行の数値規制に適合しているか。設備投資が済んでいるかどうかで引き継ぐ側の負担が変わります
- 顧客の継続率。トリミングであれば来店サイクル、ペットホテルであればリピート率
- 物件の権利と用途。賃借が多い分野です。譲渡に賃貸人の承諾が要るか
- 生体の在庫。販売業では棚卸資産の評価が論点になります
登録が業種別に分かれている分、何を持っている会社なのかが公的に明確です。譲り受ける側も登録内容を確認できるため、話が具体的に進みやすい分野といえます。
動物病院の動きは「動物病院業界の動向」に、店舗の実務は「ペットショップ・トリミングサロンのM&A」に整理しています。