歯科医院を支える歯科技工所が、静かに減っています。厚生労働省の公表統計によれば、令和6年末現在で20,278か所、前回(令和4年)から563か所(2.7%)の減少。
ただし、より深刻なのは人のほうです。歯科技工士は31,733人で3.7%減。その19.3%が65歳以上で、25歳未満は4.7%しかいません。本稿ではこの構造を確認します。
本稿の数値は厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)によります。この調査は隔年で行われ、前回は令和4年です。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
施設も人も減っている
厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)によれば、10年間の推移は次のとおりです。
| 年末 | 歯科技工所 | 歯科技工士 | 歯科衛生士 |
|---|---|---|---|
| 平成26年(2014) | 20,166 | 34,495 | 116,299 |
| 平成30年(2018) | 21,004 | 34,468 | 132,629 |
| 令和2年(2020) | 20,879 | 34,826 | 142,760 |
| 令和4年(2022) | 20,841 | 32,942 | 145,183 |
| 令和6年(2024) | 20,278 | 31,733 | 149,579 |
| 前回(令和4年)比 | △563(△2.7%) | △1,209(△3.7%) | +4,396(+3.0%) |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)より作成
歯科技工所は平成30年の21,004をピークに減少に転じ、歯科技工士は令和2年の34,826をピークに減り続けています。
対照的に、歯科衛生士は10年間で116,299人から149,579人へ28.6%増えました(本稿で算出)。同じ歯科の分野で、片方は増え、片方は減っています。
なお歯科診療所は66,378施設(別調査・令和6年10月1日現在)で、前年より440施設減っています。歯科技工所20,278に対し歯科診療所66,378。技工所1か所が3軒以上の歯科医院を支えている計算になります(本稿で算出)。
年齢構成が示すもの
同資料によれば、年齢階級別の構成割合は次のとおりです。
| 年齢階級 | 歯科技工士 | 歯科衛生士 |
|---|---|---|
| 25歳未満 | 4.7%(1,498人) | 11.6%(17,320人) |
| 25〜29歳 | 5.7%(1,799人) | 13.4%(20,043人) |
| 30〜34歳 | 5.7%(1,800人) | 11.2%(16,805人) |
| 35〜39歳 | 7.8%(2,477人) | 12.1%(18,130人) |
| 40〜44歳 | 8.9%(2,810人) | 12.7%(18,938人) |
| 45〜49歳 | 11.3%(3,590人) | 12.5%(18,738人) |
| 50〜54歳 | 12.3%(3,896人) | 9.6%(14,417人) |
| 55〜59歳 | 11.4%(3,603人) | 8.4%(12,621人) |
| 60〜64歳 | 13.0%(4,133人) | 5.2%(7,850人) |
| 65歳以上 | 19.3%(6,127人) | 3.2%(4,717人) |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)より作成
歯科技工士は65歳以上が19.3%で最も多い階級です。60歳以上を合わせると32.3%、3人に1人が60歳を超えています(本稿で算出)。
一方、25歳未満は4.7%(1,498人)。65歳以上6,127人の4分の1にも届きません。
歯科衛生士は25〜29歳が最多で、65歳以上は3.2%。年齢構成がまったく逆です。
この差は、10年後の姿を示しています。歯科技工士が今のペースで引退していけば、入ってくる人数では到底埋まりません。
就業場所から見る事業の形
同資料によれば、歯科技工士の就業場所は次のとおりです。
| 就業場所 | 歯科技工士 | 歯科衛生士 |
|---|---|---|
| 歯科技工所 | 74.1%(23,521人) | ― |
| 病院・診療所 | 24.3%(7,723人) | ― |
| 診療所 | ― | 90.6%(135,499人) |
| 病院 | ― | 5.1%(7,675人) |
| 介護保険施設等 | ― | 1.0%(1,533人) |
| その他 | 1.5%(489人) | ― |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)より作成
歯科技工士の4分の3は歯科技工所に勤務しています。技工所20,278か所に技工士23,521人ですから、1か所あたり1.2人という計算になります(本稿で算出)。
つまり大半が一人親方か、それに近い規模だということです。これがこの業界の承継を難しくしています。従業員がいなければ、後を継ぐ人もいません。
承継のときに見られる点
この分野の承継は、他業種とは事情が違います。
- 技工士本人が事業そのもの。1か所あたり1.2人という規模では、経営者が抜ければ生産が止まります。引き継ぐ技工士がいるかが最初の条件です
- 取引先の歯科医院。この事業の収入は歯科医院からの受注です。何軒と取引があり、何年続いているか。特定の1軒に偏っていないか
- 設備とデジタル化。CAD/CAM装置や3Dプリンターを導入しているか。手作業中心の技工所と設備投資を済ませた技工所では、引き継ぐ側の見方が変わります
- 技術の種類。義歯、クラウン・ブリッジ、矯正装置など、何を得意とするか
- 海外委託との競合。価格競争の圧力がどこから来ているか
施設が減り、担い手が高齢化し、新規参入が細っている。この3つが同時に進む分野では、残る技工所に仕事が集まります。
だからこそ、技工士を抱える技工所どうしがまとまる形での承継、あるいは歯科医院グループが技工所を取り込む形が現実的な選択肢になります。
歯科医院は「歯科医院業界の動向」、実務は「歯科技工所のM&A」に整理しています。