建設業の許可は29の業種に分かれています。そのなかで最も多くの業者が持っているのが、とび・土工工事業です。国土交通省の公表統計によれば、許可業者全体の38.2%にあたる184,825業者が取得しています。

本稿では公表資料をもとに現在地を確認し、この裾野の広さが承継の場面で何を意味するのかを整理します。

本稿の数値は国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年5月15日公表・令和8年3月末現在)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

許可業者は3年連続で増えている

国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年5月15日公表・令和8年3月末現在)によれば、令和8年3月末現在の建設業許可業者数は483,823業者で、前年度から123業者(0.03%)の増加です。平成30年度末以降は増加傾向にあり、令和4年度に一度減ったあと、令和5年度末から3年連続で増加しています。内訳は一般建設業が457,617業者(前年同月比△438業者・△0.1%)、特定建設業が50,511業者(同772業者・1.6%増)でした。

都道府県別に見ると、ピーク時(平成12年3月末)と比べて全都道府県で減少しています。同資料によれば、減少率が高いのは秋田県(△37.7%)、宮崎県(△33.9%)、和歌山県(△33.0%)です。

全国の総数は3年連続で増えている一方、長い目で見ればどの地域も大きく減っている。この二つは矛盾しません。直近の増加は、26年かけて起きた減少を埋め戻すほどの規模ではないということです。

29業種のなかでの位置

同資料によれば、許可を取得している業者が多い業種と少ない業種は次のとおりです。

業種許可業者数取得率
多い①とび・土工工事業184,825業者38.2%
多い②建築工事業140,967業者29.1%
多い③土木工事業130,833業者27.0%
少ない①清掃施設工事業372業者0.1%
少ない②さく井工事業2,216業者0.5%
少ない③消防施設工事業16,075業者3.3%

出典:国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年5月15日公表・令和8年3月末現在)より作成

とび・土工工事業は、足場の組立て、くい工事、土工事、コンクリート工事などを含む幅の広い業種です。建築でも土木でも必要になる工程を抱えているため、他の業種と併せて取得されることが多い、というのが取得率の高さの背景にあります。

一方で清掃施設工事業は372業者しかありません。同じ「建設業の許可」でも、母数が500倍近く違うということです。業種によって、譲渡の相手方候補の数そのものが変わります。

1社あたり3.7業種という重複

もうひとつ、統計から読める構造があります。同資料によれば、業種別許可の総数は1,787,977業者分で、前年同月比1.3%の増加です。許可業者の実数が483,823ですから、1社あたり平均で3.7業種の許可を持っている計算になります。

この重複は年々厚くなっています。1業種のみの許可を受けている業者は221,833業者(全体の45.9%)、複数業種は261,990業者(54.1%)。許可業者数が最も多かった平成12年3月末時点では、1業種のみが56.5%、複数が43.5%でしたから、26年間で10.6ポイント入れ替わったことになります。業種別許可の総数も、平成12年の1,392,339業者分から28.4%増えています。

1社が抱える許可の幅が広がっている、ということです。譲り受ける側から見れば、会社を1社取得すると複数の許可がまとめて手に入る形になります。許可の取り直しは、経営業務の管理責任者と専任技術者の要件を満たし直すところからになるため、既にある許可をまとめて引き継げることには実務上の意味があります。

承継のときに見られる点

とび・土工工事業は、人と重機で成り立つ事業です。評価の目は次のようなところに向きます。

  • 専任技術者を誰が担っているか。経営者ご本人が兼ねている場合、退任と同時に許可の要件が欠けます。譲渡の前に、後任を配置できるかを確認しておく必要があります
  • 経営業務の管理責任者の要件。ここも経営者ご本人であることが多く、同じ論点が生じます
  • 元請との関係。特定の元請に売上が偏っていないか。偏っている場合、その関係が譲渡後も続くかが焦点になります
  • 重機と足場材の保有状況。簿価と実勢、リースか自社保有か
  • 職人の年齢構成と定着。建設業では、ここが最も引き継ぎにくい部分です

いずれも決算書だけでは分かりません。許可は書類上引き継げても、許可を支えている人が残らなければ意味がない、というのがこの分野の実情です。

建設業全体の動きは「建設業界の動向」に、足場工事の実務は「足場工事業のM&A」に整理しています。

よくあるご質問

A.国土交通省の統計では取得率が38.2%で29業種中最多ですが、統計は理由までは示しません。足場・くい・土工・コンクリートなど建築でも土木でも必要になる工程を含む幅の広い業種であることが、併せて取得されやすい背景にあると考えられます。
A.株式譲渡では法人が存続するため、許可は原則としてそのまま残ります。ただし経営業務の管理責任者や専任技術者が退任すると要件を欠くことになります。事業譲渡や会社分割の場合は手続が異なります。ご状況により変わりますので、顧問の専門家にもご確認ください。
A.許可業者の総数と、個々の会社の事情は別です。統計が示すのは全国の数であって、特定の会社の後継者の有無を示すものではありません。なおピーク時と比べれば全都道府県で減少しています。
A.一概には言えません。許可の幅は譲り受ける側にとって取得の手間を省く要素になりますが、価格は収益力と事業の中身で決まります。具体的な見られ方はご状況によりますので、個別にご相談ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら